完全粉ミルク育児のメリット・デメリットを紹介!
目次
完全粉ミルク育児とは?
離乳食が始まるまでの赤ちゃんは、母乳もしくはミルクを飲んで大きくなります。母乳のみで育てる場合は「完全母乳育児(完母)」、ミルクのみで育てる場合は「完全ミルク育児(完ミ)」、母乳とミルクを組み合わせて育てる場合は「混合育児」と呼びます。体質的に母乳の分泌が少ないママや持病があり薬を飲まなければいけないママ、早めに仕事復帰を考えているママなど体質や家庭環境に合わせて完全ミルク育児を選択するママも多くいます。
完全母乳育児、混合育児、完全ミルク育児をしている人はどれくらいいる?
新生児~生後3ヶ月の赤ちゃんがいるママは「完全母乳育児」「完全ミルク育児」「混合育児」のどれを選択しているのでしょうか?授乳・離乳の支援ガイドに1985年、1995年、2005年、2015年の4回に渡って赤ちゃんの栄養方法について調査したデータが掲載されているので、ご紹介します。
生後1ヶ月の赤ちゃんへの栄養方法調査(1985年、1995年、2005年、2015年)
回答項目 | 1985年 | 1995年 | 2005年 | 2015年 |
---|---|---|---|---|
母乳育児 | 49.5% | 46.2% | 42.4% | 51.3% |
混合育児 | 41.4% | 45.9% | 52.5% | 45.2% |
完全ミルク育児 | 9.1% | 7.9% | 5% | 3% |
生後3ヶ月の赤ちゃんへの栄養方法調査(1985年、1995年、2005年、2015年)
回答項目 | 1985年 | 1995年 | 2005年 | 2015年 |
---|---|---|---|---|
母乳育児 | 39.6% | 38.1% | 38% | 54.7% |
混合育児 | 32% | 34.8% | 41% | 35.1% |
完全ミルク育児 | 28.5% | 27.1% | 21% | 10.2% |
4回の調査結果を見ると、2015年が生後1ヶ月、生後3ヶ月ともに母乳育児の割合がもっとも高くなっています。昔は母乳より粉ミルクの方が栄養があると言われていたようですが、現在では考え方も変化し、母乳育児を選択するママが増えているようですね。生後3ヶ月の栄養方法を見てみると、1985年、1995年では約28%前後の赤ちゃんは完全ミルク育児で育てられたという結果になっています。この世代は、現在20代半ば~30代半ばになっていますが、粉ミルクで育ったから健康状態に問題があるとは聞いたことがありません。
完全粉ミルク育児でママが不安に思うことを解説! 母乳神話はウソ? ホント?
これから完全粉ミルク育児や混合育児を選択しようとしているママにとって大きなハードルとなるのが「赤ちゃんにとって、母乳が最善の栄養である」「母乳で育てないと子供に悪影響がある」といった「母乳神話」ではないでしょうか? この母乳神話は本当なのか調べてみました! ぜひ参考にしてみてくださいね。
完全粉ミルク育児は栄養不足、免疫力不足になる?
母乳には赤ちゃんの免疫を高める効果のある「ラクトフェリン」が含まれており、古くから「母乳を飲んでいる赤ちゃんは免疫力が高い」とされてきました。しかし今は研究が進み、粉ミルクには母乳とほとんど変わらない成分が含まれるようになっています。さらに赤ちゃんはママのお腹の中にいるときからもらっている免疫成分もあります。
まれに「生後6ヶ月頃まではママからもらった免疫力があるから安心」ということを「生後6ヶ月まで母乳を飲まないと免疫力が低くなってしまう」と間違って解釈している人もいますが、母乳か粉ミルクかで赤ちゃんの免疫力が大幅に異なることはありません。ただし通常産後3日~5日間分泌される「初乳」はそれ以降に分泌される成乳よりも高い免疫物質が含まれており、赤ちゃんの免疫力を高める効果があります。初乳はたった数滴でも効果があるものなので、「赤ちゃんにあまり初乳を飲ませられなかった」というママも安心してくださいね。
完全粉ミルク育児はアレルギーになりやすい?
過去の「授乳・離乳支援ガイド」では、「母乳は乳幼児期のアレルギー予防に一定の効果がある」という研究結果が紹介されていました。しかし2019年に改訂された「授乳・離乳支援ガイド」では「母乳にアレルギーの予防効果を示す確定的な根拠はない」と明記されています。「授乳・離乳支援ガイド」が改訂されたのは2007年以来12年ぶりのことで、いきすぎた母乳信仰にストップをかける大きなきっかけにもなっています。粉ミルクは母乳に近い栄養成分が含まれているので、赤ちゃんに安心して飲ませることができますよ。
完全粉ミルク育児は赤ちゃんの肥満リスクが上がる?
粉ミルクを飲んでいる赤ちゃんは肥満になりやすいイメージをお持ちのママもいるかもしれませんが、規定量を守っていれば粉ミルク育児の赤ちゃんが太りすぎることはありません。母乳だけで赤ちゃんを育てている場合、体重があまり増えないと粉ミルクを足すように指導されることから、「ミルク=体重を増やすもの」というイメージがついたのかもしれませんね。
完全粉ミルク育児は愛情不足になる?
赤ちゃんが母乳を飲まないからといって、愛情不足になるとは言えません。また、赤ちゃんが母乳の分泌量は愛情の多さではなく体質によるものです。赤ちゃんが小さいうちから完全粉ミルク育児を選択することを迷っているママのなかには「赤ちゃんが愛情不足になってしまうかも」「赤ちゃんへの愛情が足りないから母乳が分泌されないのでは?」と考えているママもいるでしょうか。完全粉ミルク育児ではパパやおじいちゃん、おばあちゃんなどママ以外の人から授乳をしてもらえるので、いろいろな人からの愛情を感じることができる子になると自信を持っていて大丈夫ですよ。
完全ミルク育児のメリット
日本には古くから「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養である」という母乳信仰があるため、どうしても母乳育児の良さに目がいきがちですが、実は完全粉ミルク育児にはメリットがたくさんあります。完全粉ミルク育児を選択することを迷っているママはぜひ参考にしてみてくださいね!
ママ以外でも赤ちゃんに授乳ができる
前述したとおり、完全粉ミルク育児はママ以外も授乳することができます。育児の負担はどうしてもママのほうに傾きがちですが、粉ミルクであればパパも授乳することができるため、パパが積極的に育児に参加してくれるきっかけになるかもしれませんね。
ママが休む時間を確保しやすい
一般的に粉ミルクは母乳よりも腹持ちが良いと言われています。そのため、完全粉ミルク育児の赤ちゃんは授乳間隔が安定することが多く、ママが休む時間を確保しやすいという特徴があります。産後ママの体調がすぐれないときも、粉ミルクであれば誰でも授乳できるため、しっかり休んで体力を回復させることができますね。
赤ちゃんが粉ミルクを飲んだ量がわかる
粉ミルクは哺乳瓶で飲ませるため、赤ちゃんがどれくらい粉ミルクを飲んだかは哺乳瓶のめもりを見て確認することができます。しかし母乳育児の場合、スケールを使用しないと赤ちゃんがどれくらい母乳を飲めたか確認ができません。授乳量を確認するためには授乳前後にスケールで赤ちゃんの体重を計る必要がありますが、空腹でぐずっていたり、お腹いっぱいになって寝ている赤ちゃんの体重を毎回計るのは大変ですよね。粉ミルクであれば飲んだ量が一目瞭然なので、赤ちゃんに栄養が足りているかどうか不安になることも少ないのではないでしょうか。
母乳に足りないビタミンDを粉ミルクから摂取できる
母乳にたくさんのメリットがあるのは事実ですが、一方で近年完全母乳育児の赤ちゃんに増えているのがビタミンD不足による「くる病」です。くる病は骨の変形や成長障害を起こす病気で、その原因の多くがビタミンD不足によるものです。粉ミルクにはビタミンDが配合されているため、ビタミンD不足によるくる病を予防する効果があるのです。
ママの食事やお酒、服薬制限がない
完全粉ミルク育児であれば、ママが摂取したものが赤ちゃんに移行することがありません。完全母乳育児だと風邪を引いた場合であっても薬を飲めないことがあるため、風邪がなかなか治らず、ママの体調が悪いなか赤ちゃんのお世話をしなければならないなど、大変なことが多くあります。完全ミルク育児であればアルコールやカフェイン、服薬制限がなく過ごせるのが大きなメリットの1つですね。
外出先で授乳室を探さなくても良い
粉ミルクであれば、飲食店や友人の家など、人目を気にせず授乳をすることができます。母乳をあげるときは、人目が気になるのでなるべく授乳室であげたいですよね。外出先で赤ちゃんが空腹でぐずった場合、すぐに授乳をしてあげたいところですが、完全母乳育児だとそうはいきません。機嫌の悪い赤ちゃんを抱えながら授乳室を探すのはとても大変ですよね。粉ミルク育児であればお湯と粉ミルク、哺乳瓶があればすぐに作ることができ、人目を気にせず授乳ができる点は粉ミルク育児のメリットですよね。
おっぱいトラブルが少ない
母乳をあげているママは、乳腺炎やおっぱいに傷ができるなどのトラブルも多いです。ママの母乳の分泌が良くても赤ちゃんが上手に母乳を飲むことができないと、乳腺が詰まり乳腺炎になってしまいます。乳腺炎になると、おっぱいが痛いのはもちろん、発熱や体の痛み、寒気などの症状が出ることもあります。赤ちゃんに歯が生えてくると、乳首を噛まれて傷ができることもあります。こうしたおっぱいトラブルが少なく、常に安定した量を授乳できる点は粉ミルク育児の良いところですね。
卒乳が楽だったと感じるママが多い
赤ちゃんが1歳前後になると卒乳を考えるママが多いと思います。完全母乳育児の場合、寝かしつけ時や機嫌が悪い時におしゃぶり代わりにおっぱいをくわえさせたりしていることがあるため、なかなか卒乳をしづらい傾向があります。粉ミルク育児の場合、栄養補給以外の目的で授乳することがないため、離乳食が進んでいくのと同時に自然と卒乳できるケースが多いですよ。
完全ミルク育児のデメリット
完全粉ミルク育児のメリットをたくさん紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。メリットとデメリットを考えながら、自分に合った育児方法を見つけてみてくださいね。
粉ミルクの費用がかかる
母乳育児と比べると、粉ミルク育児はお金がかかってしまいがちです。粉ミルクのほかにも、哺乳瓶や乳首、消毒のための道具などをそろえる必要があるからです。粉ミルクの値段や赤ちゃんが飲むミルクの量にもよりますが、ピーク時は1週間でミルク缶1缶を消費する時期もあり、1ヶ月8000円~1万3000円程度かかると言われています。
粉ミルクを作る手間があり、授乳までに時間がかかる
粉ミルクは、お湯を沸かしたり、粉ミルクを赤ちゃんが飲める温度まで冷ましたりする手間と時間がかかります。使い終わった哺乳瓶は消毒をする必要がありますよね。
やっとの思いでミルクを作ったら「機嫌を損ねて赤ちゃんがミルクを飲んでくれない…」というママの声もあります。そんな調乳のストレスを軽減させたいママは、調乳ポットで調乳用のお湯を事前に準備しておく方法や、調乳の手間がない液体ミルクを使用してみるのも良いでしょう。
授乳した時間や量を記録する必要がある
赤ちゃんが欲しがるだけ与えても良い母乳と違い、ミルクは前回の授乳から3時間以上開けなければならないという決まりがあります。またミルクは、1回に授乳できる量も決まっています。そのため、いつ、どのくらいの量を授乳したのかを記録するという必要があり、手間だと感じるママもいるかもしれません。
外出時に「哺乳瓶・お湯・粉ミルク」分の荷物が増える
おむつや着替えなど、赤ちゃん連れの荷物はただでさえ多いものですが、粉ミルク育児の場合はそれに加えて哺乳瓶やお湯、粉ミルクを用意しておく必要があります。ママ一人で赤ちゃんを抱っこしながら、これらの荷物を持つのはとても大変です。旅行や荷物を増やしたくないときは、使い捨て哺乳瓶を使い、外出先で捨てて帰ることができれば少し荷物を減らすことができますよ。
母乳育児に比べて寝かしつけに苦労することもある
前述した通り、粉ミルクの場合は授乳間隔や規定量が決まっているため、夜に赤ちゃんが目を覚ましてしまった場合にすぐに授乳することができない場合があります。母乳育児の場合、ママが赤ちゃんに添い寝をしながら授乳する「添い乳」ができますが、完全粉ミルク育児の場合はそれができません。粉ミルク育児の場合は抱っこで寝かしつけることが多くなると思いますが、毛布やぬいぐるみなど赤ちゃんのお気に入りのグッズを入眠グッズとして使用するのも効果的ですよ。
おっぱいトラブルを避けて完全粉ミルク育児に移行する方法は?
ママの仕事復帰など、家庭環境に合わせてこれから完全粉ミルク育児にしたいと考えている場合、計画的に完全粉ミルク育児に移行していくことをおすすめします。完全母乳育児のママが完全粉ミルク育児にする場合、いきなり母乳をあげるのをやめてしまうとおっぱいが張って辛い思いをしたり、乳腺炎になってしまう可能性があります。
また、完全母乳育児の赤ちゃんは哺乳瓶に慣れていないことが多いため、まずは赤ちゃんが哺乳瓶でミルクや搾母乳などを飲めるかどうか確認してくださいね。母乳は赤ちゃんが飲むほどどんどん作られてしまうので、もしおっぱいが張ってしまって辛い場合は圧抜き程度に搾乳するようにすると自然と母乳の量が減っていきます。また、おっぱいトラブルを避けたい場合は母乳外来に通うのもおすすめですよ。
ストレスをためないで、ママと赤ちゃんに合った授乳方法を選ぼう!
「母乳で育てたい」と思っていたママにとって、完全粉ミルク育児はできれば選びたくない育児方法だと思います。また、「赤ちゃんには母乳が一番」という世間のイメージも完全粉ミルク育児のママにとっては大きなストレスですよね。ママがどうしても完全母乳育児にチャレンジしたいのであれば、頑張ってみるのも良いと思いますが、やはり1番大切なのはママがストレスを溜めず、笑顔でいられることです。ママが納得できる方法で、赤ちゃんとママに合った授乳方法を選べると良いですね。
まとめ
この記事を読んでいるママの中には、完全粉ミルク育児に対してマイナスイメージを抱いているママもいるかもしれません。混合育児を選択した筆者自身も感じていました。しかし完全粉ミルク育児にもメリットはいっぱいありますし、何より赤ちゃんが問題なく成長できるのであれば完全母乳育児にこだわる必要はないのではないでしょうか。ぜひストレスのない方法で赤ちゃんとの授乳タイムを楽しんでくださいね。