幼稚園教諭と保育士の違いとは? 資格取得の方法、仕事内容や子供との関わり方はどう違う?
目次
幼稚園教諭と保育士の大きな違いはここ
幼稚園と保育園、どちらも「小さな子供を預かる施設」というイメージがあるかもしれませんが、実は様々な違いがあります。
大きな違いは、それぞれの保育内容と目的です。施設の在り方が違うため、そこで働く幼稚園教諭と保育士にも大きな違いがあります。
幼稚園と保育園を比較するとどんな違いが?
幼稚園と保育園の違いについて、表で比較してみましょう。
幼稚園 | 保育園 | |
---|---|---|
所管省庁 | 文部科学省 | 厚生労働省 |
法令 | 学校教育法 | 児童福祉法 |
保育内容 | 学習面を中心とした指導 | 生活面を中心とした指導 |
対象年齢 | 3~5歳(2歳児受け入れ園もあり) | 0~5歳 |
保育時間 | 標準4時間以上 | 原則8時間以上 |
1年間の保育日数 | 39週を下らない | 特別な規定なし |
長期休み | 有り(春休み、夏休み、冬休み) | 無し |
保育者の配置基準 | 幼稚園教諭1人につき(原則)35人以下 | 保育士1人につき、0歳児3人/1・2歳児6人/3歳児20人/4・5歳児30人 |
給食 | 任意 | 義務 |
保育者の勤務形態 | 固定勤務体制 | 早番・通常勤務・遅番などシフト体制。 土曜保育は交代制。 |
平均的な月額費用 | 公立2万円、私立4万円 | 年齢や世帯年収によって違う |
入園申し込み時期 | 9月~11月頃 | 12月頃 |
幼稚園と保育園の施設の違いについては別記事にまとめていますので、詳しくは下記記事をご覧ください。
幼稚園教諭と保育士、子供との関わり方に差があるの?
幼稚園は「児童の教育」を目的とし、保育園は「児童の保育」を目的とします。そこで働く幼稚園教諭と保育士はどちらも同じく幼い子供たちの面倒を見る仕事ですが、子供たちとの関わり方に大きな違いがあるのです。
幼稚園教諭は「先生」
幼稚園は文部科学省が直轄する学校教育施設です。幼稚園教諭は「先生」として学習面を中心とした指導が求められます。
文部科学省が定める「幼稚園教育要領」に基づいたカリキュラムに準じ、音楽活動やリトミックなどの体を動かす活動を通して、子供たちの知識や感情を育てるための教育を行っていきます。
保育士は「保護者の代わり」
保育士は「保護者の代わり」として、生活面を中心とした保育が求められます。
仕事や病気などを理由に保育ができない保護者に代わって、子供たちの食事や着替えなどの日常生活の補助をし、生活習慣を見につける手伝いをするのです。保育園の運営方針は厚生労働省の「保育所保育指針」で定められています。
保育所保育指針は2018年に改定され、保育園も幼児教育を行う施設と位置付けられました。
そのため、これまでの幼稚園は幼児教育、保育園は保育という違いは徐々に無くなりつつあります。共働き世帯が増え、保育園でも幼稚園と同様の幼児教育を求める声が高まってきて、国もその声に応えた改定と言えます。
幼稚園教諭と保育士、資格取得までの流れは?
幼稚園教諭と保育士では、資格取得に至るまでの流れにも違いがあります。詳しく見ていきましょう。
幼稚園教諭 | 保育士 | |
---|---|---|
保有資格 | 幼稚園教諭二種免許状、もしくは幼稚園教諭一種免許状 | 保育士資格 |
資格取得までの流れ | 幼稚園教諭免許を取得できる教職課程がある大学や短期大学等を卒業する。
または保育士資格取得後に3年の実務経験を経て、幼稚園教員資格認定試験に合格する。 |
保育士養成課程がある大学、短期大学、専門学校などを卒業する。
または保育士試験に合格する。 |
公立の保育所や幼稚園への就職を希望する場合 | 自治体の公務員採用試験を受ける。 | |
私立の保育所や幼稚園への就職を希望する場合 | 志望先の園で個別の就職試験を受ける。 |
幼稚園教諭の一種免許・二種免許・専修免許って何? 保育士の資格とどう違う?
幼稚園教諭の資格には「一種免許」「二種免許」「専修免許」の3種類があります。それぞれどのようなものなのか、また保育士資格とはどのように違うのか、表にまとめてみました。
幼稚園教諭 | 保育士 | |||
---|---|---|---|---|
保有資格 | 一種免許 | 二種免許 | 専修免許 | 保育士資格 |
養成機関 | 4年生大学 | 短期大学・専門学校 | 大学院 | 4年生大学・短期大学・専門学校・通信講座 |
就ける役職 | 制限なし | 主任まで | 制限なし | 制限なし |
このように免許取得のために学ぶ学校が違うこと、そして働き始めた後のキャリアアップに差が出てくることがわかります。
しかし実際には仕事内容に大きな差はないため、学費などの理由から、幼稚園教諭の資格では7割以上の人が二種免許を選びます。一種免許を取得する人は約2割、専修免許に至っては持っている人は全体の1割以下です。
二種免許でも問題なく働けますが、将来幼稚園の園長職に就きたいなどと考えた場合は、一種免許または専修免許を取得する必要があります。
大学・短大・専門学校でお給料に差があるの?
卒業した学校によって仕事内容に差があるわけではありませんが、お給料には差が出てきます。
幼稚園教諭の場合は、4年生大学を卒業して一種免許を持っている人(もしくは大学院を卒業して専修免許を持っている人)の方が、短大・専門学校を卒業して二種免許を持っている人より、お給料が高めに設定されていることが多いです。
公立幼稚園・保育園に勤務している場合、身分は公務員となりますので定期的に昇給があり、長く働くほど給料は上がります。
私立幼稚園・保育園は園によって給与額が異なるため、同じ年度に同じ学校を卒業していても、働く園によって毎月の給料や昇給に差が出ることも珍しくありません。
幼稚園教諭と保育士資格を両方取得できる学校は?
保育士と幼稚園教諭の両方の資格を取得したい場合には、どちらの養成課程もある学校を選びましょう。
多くの大学・短大または専門学校に、両方の資格取得ができるカリキュラムがあります。中には小学校教諭の免許が取れる学校もありますので、ぜひ詳しく調べてみてくださいね。
認定こども園では幼稚園教諭と保育士資格の両方が必要
昔に比べて共働きの家庭が増えている中で、幼稚園と保育園両方の特長を併せ持つ「認定こども園」が人気です。
認定こども園にもいくつか種類がありますが、その中でも幼稚園と保育園両方の機能を兼ね備えた「幼保連携型」の認定こども園では、幼稚園教諭と保育士、両方の資格を持っている保育者が求められています。
昔からの幼稚園・保育園が認定こども園化していく傾向にあるため、両方の資格を持っている方が今後は有利になるかもしれませんね。
幼稚園教諭と保育士資格は通信制大学でも取得できるの?
既に社会人として働いている方や子育てがひと段落したママの中で、幼稚園教諭や保育士を目指したいと考えている方もいるのではないでしょうか。
そんな方のために通信制の大学や通信講座で資格を取る方法もあります。既に別の専攻で4年生大学を卒業している方でも、3年次に編入し、最短2年で過程を修了できる大学もありますよ。興味のある方は是非詳しく調べてみてくださいね。
幼稚園教諭と保育士の仕事内容はどう違う?
幼稚園教諭と保育士の仕事内容は、子供を預かる時間に差があったり、保護者対応の内容が異なるなど様々な部分で違いがあります。ここではそれぞれのタイムスケジュールやワークシフトに焦点をあてて、仕事内容の違いを紹介しましょう。
幼稚園教諭のタイムスケジュール
時間 | 活動内容 | ||
---|---|---|---|
7時~ | 朝の受け入れ準備・早朝保育 | 掃除・施設のチェックなど。早朝保育がある園もあります。 | |
8時半~9時 | 園児登園 | バスで送迎する場合と保護者が送ってくる場合があります。早朝保育以外の園児は大体同じ時間の登園です。園児たちの体調や気分などをチェックして預かります。 | |
9時~12時 | 午前中の活動 | クラス別に設定された保育活動を行います。制作をしたり、集団遊びなどをします。 | |
12時~13時 | 昼食(給食または弁当) | 年齢によって、昼食の介助を行います。 | |
13時~14時 | 午後の活動 | ||
14時~ | 園児降園 | バスで送迎する場合と保護者が迎えに来る場合があります。個人の連絡帳などがない場合は、園での様子について掲示板で連絡したり直接話をするなどして保護者とのコミュニケーションを図ります。 | |
14時~18時 | 預かり保育 | 園によっては預かり保育を実施している場合もあります。 | |
18時~ | 行事の準備・事務作業・掃除など |
保育士のタイムスケジュール
時間 | 活動内容 | ||
---|---|---|---|
7時~ | 園児の受け入れ準備 | 掃除・施設のチェックなど | |
7時~9時 | 園児登園 | 園児たちの体調や気分などをチェックして預かります。 | |
9時~11時 | 午前中の活動 | 園庭遊びや近所のお散歩に出かけたりします。 | |
11時~12時 | 昼食(給食) | 年齢によって、食事の介助を行います。 | |
12時~14時 | お昼寝 | お昼寝の寝かしつけを行います。お昼寝をする年齢は園によって異なります。園児たちがお昼寝をしている間に、個人の連絡帳に園児の様子を記入します。保育士間の伝達や会議を行うこともあります。 | |
14時~15時 | おやつ | 年齢によって、おやつの介助を行います。 | |
15時~18時 | 午後の活動・園児降園 | 午後の活動を行いながら、降園する園児の引き渡しを行います。降園時には、その日にあった出来事を報告するなどして、保護者とコミュニケーションをとるようにします。 | |
18時~ | 掃除・次の日の準備・伝達など | 保育園は開園時間が長く、シフト制のところが多いため、保育士間で情報の伝達をしっかり行うことが大切です。 |
幼稚園と保育園では長期休暇や土曜出勤が異なる
幼稚園は土日祝日が休みであり、かつ春休みや夏休み・冬休みという長期休暇があります。幼稚園教諭も基本的に園がお休みの時はお休みですが、土曜や祝日に預かり保育を行う場合には交代で出勤することになります。
また長期休暇中、幼稚園児は休みでも職員は休みではありません。平日は出勤して、期末の後処理や期初の準備などの事務作業を行いますし、預かり保育を実施する場合には職員が交代で対応します。
一方で保育園の場合は長期休暇はなく、基本的に日祝日以外は開園しています(認可保育園の場合)。開園時間も長いため、職員はシフト制で勤務しています。
幼稚園と保育園、就職先としてどちらが良い?
大学・短大・専門学校などでは、幼稚園教諭と保育士の両方の資格が取れる課程も充実してきています。両方の資格を取得して就職を考えたときに、どのような就職先があるのでしょうか。
幼稚園教諭と保育士資格で、どんな就職先があるの?
幼稚園教諭の資格で働ける主な施設
- 公立幼稚園
- 私立幼稚園
保育士の資格で働ける主な施設
- 保育園
- 児童館
- 乳児院
- 学童
- 企業主導型保育
- 院内保育室
こうして見ると、保育士資格を持っていると様々な場所で働くことができるといえますね。
幼稚園と保育園、やりがいや大変なことは?
幼稚園教諭と保育士、勤務体系や保育内容など様々な違いはあれど、子供の成長に深くかかわる仕事であることは共通しています。
それぞれの仕事のやりがいや大変なことについて、現場の声をまとめました。
幼稚園教諭のやりがい
- 「昨日までできなかったことができるようになった」「友達と仲良く遊べるようになった」など、子供の成長を間近で見守り、日々の変化を見ることができる。
- 日々の活動の中で、子供たちの感受性の豊かさ、秘めた可能性の大きさを実感するとともに、子供たちからたくさんのものを教えてもらっていると感じる。
幼稚園教諭の大変なこと
- 特に1年目は仕事の流れが把握できず、苦労することが多い。先輩も忙しそうでなかなか質問することができず、自分で考えて動いた結果失敗してしまい落ち込むこともあった。
- いわゆるモンスターペアレントといわれる保護者の担任になると、コミュニケーションを取ることが難しい。
保育士のやりがい
- 自分の声掛けによって食べられなかったものが食べられるようになったり、集中できる時間が長くなったりと、子供たちの成長に直接関われることがとても嬉しい。乳児の頃から通っている子供であればなおさら。
- 子育てに悩んでいる保護者をサポートする中で、保護者自身がどんどん笑顔になり、活き活きした姿で子供と再び向き合えるようになった姿を見ると嬉しくなる。
保育士の大変なこと
- 同じ保育室に複数の保育士がいるため、それぞれの保育への考え方や子供への促し方に違いがあり、考えがぶつかることが日常茶飯事である。
- 同時進行で進めなければならない仕事が多く、手が回らない。
- 保育時間が終わってからも、次の日の活動の準備や行事の準備などをしなくてはならず、勤務時間が終わってからの仕事も多い。
地方では閉鎖・統合される幼稚園が増えている
0~14歳の年少人口が減っている地方では、幼稚園の入園者数が定員割れしてしまい、閉鎖や統合される園が増えています。
そのような幼稚園の定員充足率が低い地域では、入園可能な年齢を引き下げ保育園としての機能も兼ねた「認定こども園」化が進む傾向にあります。
認定こども園では幼稚園教諭と保育士の資格両方を持っている人が求められるので、幼稚園教諭の資格だけでは、今後働くことができる場所が不足する可能性があることも考えておいた方がいいでしょう。
まとめ
幼児教育に深く関わりたい人にとって、幼稚園教諭と保育士は持っておきたい資格です。
資格の取りやすさだけではなく、それぞれの違いについてしっかり理解した上で、将来どのような働き方をしたいのかを視野に入れて検討していきたいですね。