出産までにかかるお金と出産費用の公的制度とは
出産までにかかるお金
赤ちゃんを授かり、いよいよ母子手帳を手にすると、今後のことに向けて漠然とした不安を感じる人も多いものです。その悩みのひとつに出産までにどのくらいのお金がかかるのか、資金面が挙げられます。どのようなものにお金がかかるのか、詳しくみていきましょう。
妊婦検診
妊娠が分かると、妊娠初期から妊娠23週までは4週間に1回、妊娠中期にあたる妊娠24週から35週までは2週間に1回、そして妊娠36週から出産までは1週間に1回、妊婦検診が母子保健法で推奨されています。母体の健康はもちろん、生まれてくる赤ちゃんの様子を確認できる大事な機会で、健康状態の把握の他、血液検査に超音波検査などが実施されます。医師に診てもらえるのは安心ですが、回数が多い分費用的な負担も重くのしかかってきます。
マタニティ・育児用品
お腹が大きくなると、マタニティ用の下着に洋服など、ほとんどすべての衣類を買い替えなければいけません。マタニティ用の下着は、妊娠中期と妊娠後期ではお腹の大きさも違うので、妊娠週数に応じた下着が必要に。さらに、生まれてくる赤ちゃんのための肌着にロンパース、おくりみにスタイ、靴下に哺乳瓶、そして退院後のベビーベッドや布団など、準備するものは多岐に渡ります。少しずつお腹が大きくなると、赤ちゃんに会える嬉しさも膨らみますが、妊娠週数が進めば進むほど出費がかさみます。
入院・分娩費
育児用品の準備を始めると、出産に向けての入院も視野に入れる時期になります。そこで大きな出費となるのが、入院と分娩にかかる費用です。どこの病院を選ぶかでも費用は変わりますが、約40万円~50万円程のお金を準備しなければいけません。
出産費用の内訳
出産で一番お金がかかるものと言えば、やはり出産費用でしょう。その内訳としては、大きく分けて分娩費用と入院費に分けられます。公益社団法人国民健康保険中央会が調査した「出産費用の都道府県別平均値、中央値」によると、項目ごとの平均は下記のように報告されています。
妊婦合計負担額の平均値、中央値(病院、診療所、助産所の合計)
|
平均 |
---|---|
入院日数 |
6日 |
入院費 |
112,726円 |
室料差額 |
16,580円 |
分娩料 |
254,180円 |
新生児管理保育料 |
50,621円 |
検査・薬剤料 |
13,124円 |
処置・手当料 |
14,563円 |
産科医療補償制度 |
15,881円 |
その他 |
28,085円 |
合計金額 |
505,760円 |
住んでいる場所や、病院の規模、そして分娩のスタイルによっても違いますが、全国の平均は505,760円という数字になりました。ある程度お金はかかると分かっていても、実際に目にするとその金額の大きさに驚く人も多いのではないでしょうか。この金額は合計ですが、もう少し細かくその費用の内訳についてみていきたいと思います。
分娩費
分娩費用とは、赤ちゃんを出産する時の費用です。医師や助産師、そして看護師の立ち合いのもとで出産しますが、基本的な分娩料金の他、出産する時間帯や休日では、割増料金がプラスされます。分娩は健康保険の適用外になるので全額自己負担になるので、出産を予定している人は、分娩料は25万円~30万円前後を目安として考えておく必要があります。
入院費
入院費は、赤ちゃんの健康状態を管理する新生児管理保育料の他、平均で約6日入院するための入院料と検査料、そして食費などです。通常は7日前後で退院となりますが、母体の健康状態によっては延長になり、追加料金がかかる場合もあります。入院費の目安は上記の平均を見ると、約25万円前後。分娩と入院の総額の平均は約506,000円となり、とても大きな出費となります。
分娩の形態によっても金額は変わる
上記でご説明した分娩ですが、最近では無痛分娩を選択する妊婦さんも増えてきました。出産=自然分娩という王道から、出産のスタイルを選べる時代になってきたので、どのタイプを選ぶかでも金額は変わってきます。では、どのような分娩のスタイルがあるのでしょうか。
自然分娩
こちらは分娩で最も多いとされる自然分娩です。自然な陣痛から母体の娩出力を用いる分娩です。陣痛の痛みや重さ、時間の長さなど個人差はあるものの、人工的な介助を行わず出産する形です。自然分娩が分娩の基本料金として設定されているケースもあります
帝王切開
帝王切開とは母子のどちらかになんらかの問題があり、手術で赤ちゃんを出産する方法です。 帝王切開は普通分娩と違い、手術で出産することから、入院期間も長くなり必然的に分娩入院費用も高くなる傾向に。自然分娩と違い、保険の適用になりますが、事前にどのような費用がかかるのか、入院期間の目安などを相談しておきましょう。
双子(多胎出産)
上記の分娩は1人の赤ちゃんにかかる費用なので、双子や三つ子など多胎出産の場合は、1人につき追加の分娩料が加算されます。
無痛分娩
出産は、命がけと言えるほど、全身全霊をかけて臨むものです。その痛みなどは、経験したことがない妊婦さんにとって、恐怖でしかありません。そんな不安を少しでも軽減すべく、無痛分娩というスタイルを選択する妊婦さんも増えてきました。無痛分娩は、麻酔などの薬を用いて、精神的体力的な負担を減らす出産方法ですが、医療的な介入があるため、基本的な分娩費用に無痛分娩がオプションとして加算されるため、その分、分娩費用は高額になります。
病院の種類
いろいろな分娩の形がありますが、分娩にはもうひとつ、病院の規模も費用に大きく関わってくるのです。個人病院と総合病院ではどのような違いがあるのでしょうか。
病院の種類1:個人病院
個人病院とは、個人が経営する病院のことで、総合病院では通院する妊婦さんが多く、どうしても分刻みの対応になってしまいますが、時間外でも臨機応変に対応してくれるという特徴があります。
病院の種類2:総合病院
総合病院は、設備が充実している他、小児科が併設されるなど、出産後も長期的に通えるというメリットがあります。しかし、出産数が多いため入院は大部屋で、個室にすると料金が高くなるというデメリットも。個人病院の方が安くなる傾向があると言われていた時もありました。
しかし、昨今では、サービスの多様化が広がり、オプションをつけるかつけないかで大きく費用は変わってくるという現状があります。個人病院にするか、それとも総合病院にするかは、費用的な綿はもちろんですが、出産後の生活にも関わることなので、サービス内容や、価格表を作って比較してみるとイメージしやすいかもしれません。
部屋の種類
病院によって費用が違うということは、部屋の種類によっても金額に差が出てきます。個室はゆっくりできますが、費用が高くなる。大部屋は入院費を抑えられるけど、周りの声がうるさいというのが皆さんの持っているイメージかもしれ、ません。それ以外にどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
個室
個室は1人部屋なので、周りの声を気にすることなく体調の回復を最優先にすることができます。さらに、個室の中にシャワーやトイレが完備している場合、周りの目を気にせず、自分の行きたい時にトイレに行けるというのは非常に大きなポイントです。また、出産後は親や親せきなど、多くの人が赤ちゃんを見に訪ねてきてくれますが、個室なので周りを気にせず話すことができるので楽! しかし、その分料金は高くなり、同じ時期に出産したママ友を作りづらいというデメリットもあります。
大部屋
大部屋は、病院の規模にもよりますが、2人部屋、4人部屋、8人部屋など部屋を分割して使用するため、料金は個室よりも割安に。同じ部屋になった人とママ友になるケースもあるので、 さみしくないというメリットもあります。しかし、大部屋という集団生活では、周りに気を遣って入院生活を過ごすことが最大のデメリットと言えます。
特に、赤ちゃんを部屋に連れてきておっぱいを飲ませる時も、「泣いてしまうと他の人にうるさいのでは?」と神経を遣います。個室か大部屋かで入院費用は大きく変わってきますが、それぞれのメリットとデメリットをチェックした上で、自分に合った部屋を考えてみる必要があります。
出産費用が払えない場合は
出産にかかるさまざまな費用をみてきましたが、平均でも50万円前後の費用がかかるため、事前に準備しなければいけません。しかし、妊娠が分かってからこれらの金額を準備できるかというと、難しいという人もいるのではないでしょうか。もし、出産費用が払えない場合はと考えただけでも不安になるものです。出産費用は現実的な問題なので、不安に思っている人も少なくありません。でも、安心してください。出産費用をサポートしてくれるさまざまな制度があるのでご紹介したいと思います。
公的制度を利用しよう
住んでいる自治体や公的機関では、さまざまな制度があり、その中でも最もポピュラーなのが、出産育児一時金という制度です。これは、健康保険に加入している被保険者や、家族の健康保険に加入しているなどの条件を満たし、なおかつ妊娠4ヶ月(85日)以上で出産した場合、1人につき42万円が出産育児一時金として支給されます。この出産育児一時金は、事前に全国健康組合協会に出産育児一時金の申請を事前に行うことで、退院時の精算に直接支払い制度が利用でき、42万円を引いた差額になります。ほとんどの家庭で何かしらの健康保険に加入していると思うので、働いている場合は、勤務先へ。ご主人の健康保険の被保険者となっている場合は、ご主人の会社に連絡して手続き方法などを確認しておきましょう。
少子化が問題視されている中、自治体では出産お祝い金や助成金、そして出産祝い支援品などさまざまな制度が作られています。申請できる条件なども細かく設定されているので、ご自身が住んでいる自治体のホームページまたは、窓口に行って相談してみましょう。今まで知らなかった制度を知ることができるかもしれません。
公的制度は申請しなければもらえない
自治体や公的機関は、特定の人が有利になるような情報は提供できません。そのため、自分で調べ、申請してはじめて受給できるので、まずは調べることが重要になってくるのです。ホームページやインターネットで分かりにくい場合は、直接窓口に行って、出産後に使える制度があるかどうか相談してみましょう。担当課でない場合は、どの部署が担当課であるか教えてもらえますし、直接話すことで具体的な申請の流れも把握できるので安心につながります。
出産後にもらえるお金
出産に関してはさまざまな制度や助成金があります。働いている場合は、会社を休んでいる間の生活費の一部として、加入している健康保険組合から出産手当金がもらえるケースや、雇用保険からは育児休業給付金がもらえることも。個人か会社員かでも違いますし、会社によっても加入する保険が違うので、就業規則をチェックし、該当する場合は早めに申請方法を確認しておきましょう。さらに、出産でかかった費用が年間10万円を超える場合は、医療費控除の対象になります。税金の還付が受けられるので、自治体や公的機関の助成と一緒にいつ、どのような申請が必要なのか確認して、リスト化しておくとひとつずつ漏れがなく申請できます。
まとめ
出産は妊娠から分娩までさまざまなお金がかかります。全体像が分かるとイメージしやすくなるのではないでしょうか。出産後にはさまざまな公的制度もありますし、子供を育てる上での育児に関する制度もあります。長期的な子育てでは、これらの公的支援は必要不可欠になってくるので、まずは自治体に相談して申請可能なものについてチェックしてみましょう。