【FP監修】出産育児一時金とは? 対象条件や金額、申請方法は?
目次
監修者紹介
出産育児一時金とは?
妊娠や出産は思いのほか大きな出費ですよね。出産育児一時金は、そんな妊娠や出産における費用の負担を軽減するための制度です。病院や出産時の状況によっては100万円以上かかることも珍しくないため、とても嬉しい制度ですね。
出産育児一時金は、退院時に窓口で一度全額支払い、その後申請手続きをして出産一時金を受け取る「産後支払制度」のほか、事前に申請することで退院時に差額のみを支払う「直接支払い制度」「受取代理制度」があります。
出産育児一時金の対象条件は?
出産育児一時金の受給対象条件は大きく2つあります。出産育児一時金の受給対象条件の1つ目は、健康保険に加入している人、または健康保険に加入している人の扶養家族です。出産後に仕事復帰を考えている人や妊娠を機に退職する人、専業主婦なども対象になります。
出産育児一時金の受給対象条件の2つ目は、妊娠4ヶ月(85日)以上で出産をした人です。これは早産、流産、死産、人工妊娠中絶の場合にも適用されます。在胎週数が12週以上22週未満で出産した場合も出産育児一時金をもらうことができますが、妊娠4ヶ月以上で出産をした時にもらえる金額よりは少なくなります。
また、保険適応となる帝王切開で出産した場合も出産育児一時金の受給対象です。帝王切開は普通分娩よりも高額になることが多いですが、保険適用&出産育児一時金の利用ができると自己負担分は少なくなりますよ。
出産育児一時金でもらえる金額はいくら?
子供1人につき42万円支給されるが、場合によっては減額することもある
健康保険には「社会保険」や「国民健康保険」などの種類がありますが、出産育児一時金の支給額はどの健康保険でも子供1人につき42万円、多胎児の場合は「42万円×子供の数」になります。ただし、産科医療補償制度に加入していない病院で出産した場合は、出産育児一時金が40万4000円に減額されるため、事前に病院に確認しておくと安心です。
また、在胎週数が12週以上22週未満に出産(早産、流産、死産、人工妊娠中絶の場合にも適用)した場合も出産育児一時金を受け取ることができますが、その場合の受け取り額は40万4000円となることも覚えておきましょう。
加入している健康保険組合によっては出産育児一時金に追加して付加金が支給されることもあります。健康保険組合によっては付加金ではなく「一部負担金払戻金」や「療養費付加金」と呼ばれることもあるので、ご自身の会社の福利厚生を確認してみましょう。
出産育児一時金の手続き方法は?
出産育児一時金の手続き方法にはいくつか方法があります。それぞれ制度の仕組みや手順をみていきましょう。
直接支払い制度
直接支払い制度は、事前に手続きをしておくことで、健康保険側から病院に出産育児一時金が直接支払われます。パパママは、退院時に出産育児一時金の金額を超えた分のみを支払えば良いので、大金を持ち歩く必要がなく安心ですね。直接支払い制度は多くの病院が採用していますが、まれに導入されていない場合もあるため、事前に病院に確認しておくと良いでしょう。
直接支払制度の手続き方法は、病院で直接支払い制度に関する説明を受け、書類に必要事項を記入するだけなのでとても簡単です。病院で手続きした後は、病院が健康保険側に出産育児一時金を請求してくれます。ママがパパの扶養に入っている場合はパパの健康保険から出産育児一時金の支給を受けることができますが、手続きに必要な合意書にはパパの自筆署名が必要なので、里帰り出産でパパと離れてしまう場合は早めに確認し、手続きを行っておくと安心ですね。
受取代理制度
受取代理制度は、直接支払制度が利用できない助産院などの小さな医療機関で利用する制度です。受け取り代理人制度は、出産前に自身で申請書を記入し、医師の証明書を添付して健康保険側に申請することで、健康保険側が病院に出産育児一時金を支払ってくれます。
直接支払い制度よりも申請時に用意する書類が多いため少し手間がかかりますが、出産費用の合計金額が出産育児一時金より低かった場合、産後の忙しい時期に改めて差額請求の手続きをする必要がない点はメリットと言えるでしょう。
産後申請制度
産後申請制度とは、出産した病院を退院した後にパパママが健康保険に出産育児一時金の申請を行い、その後パパママが出産育児一時金を受け取る仕組みです。直接支払制度や受取代理制度とは違い、退院時はパパママが病院に出産費用の全額を病院に支払うことになります。クレジットカードが使用できる医療機関の場合はポイントを貯めることができるので、あえてこの方法を選ぶパパママもいるようです。
出産後はバタバタしているのですぐに申請をするのは少し大変ですが、出産育児一時金の申請期限は出産日から2年間なので、忘れずに申請するようにしましょう。
出産費用が42万円以下の場合は差額が請求できる
出産費用が42万円を超えなかった場合は、差額を請求することができ、直接支払い制度の場合は、出産後に改めて差額申請をする必要があります。出産育児一時金の差額申請に必要なものは「出産費用の明細書・保険証・世帯主の印鑑(朱肉を使用する物)・世帯主名義の振込口座」です。直接支払い制度を利用した場合、差額申請の期限は出産翌日から2年以内ですので、忘れないうちに申請しておくと良いでしょう。
受取代理制度を利用した場合は、改めて差額申請をする必要はなく、出産後日、出産育児一時金の金額を超えなかった分の差額が健康保険側からパパママに支給されます。
申請後はどれくらいの期間で出産育児一時金が振り込まれるの?
産後申請制度や差額請求をした場合、必要書類の提出後約1ヶ月~2ヶ月後に振り込まれることが多いです。出産育児一時金の申請をしたらすぐ振り込まれるわけではないので、早めに出産育児一時金を受け取りたい場合は、余裕を持って申請するようにしましょう。
出産前にママが退職して資格喪失している場合、退職先の健康保険から出産育児一時金はもらえるの?
出産前にママが仕事を退職した場合、出産育児一時金を受け取るための方法は2つあります。1つ目は前述した通り、パパの健康保険から支給を受ける方法です。ママがパパの扶養に入っている場合、パパが退職してしまうと出産育児一時金は受け取れないので注意が必要です。
2つ目はママの前勤務先の健康保険から支給を受ける方法です。退職した勤務先の健康保険から出産育児一時金の支給を受けるための条件は、ママが1年以上継続して健康保険の被保険者であり、退職から6ヶ月以内に出産する場合です。出産前に退職した勤務先の健康保険から支給を受ける場合、退職する勤務先の健康保険の資格喪失を証明する書類が必要になりますので、退職時に勤務先へ忘れずに請求してください。
家族出産育児一時金とは? 出産育児一時金とは違うの?
出産育児一時金と家族出産育児一時金は一見違う制度に思えますが、どちらも支給額や支給方法に違いはありません。支給対象者が被保険者本人の場合は「出産育児一時金」、支給対象者が被扶養者(配偶者や家族など)の場合は「家族出産育児一時金」に分類されています。
間違えやすい! 出産育児一時金と出産手当金の違い
出産育児一時金と混同されやすい制度に「出産手当金」があります。出産手当金は産前産後休業期間中に支給されるお金で、妊産婦自身が会社に勤めていた場合にお給料の代わりとして支給されるものです。フリーランスや自営業で国民健康保険に加入している場合は、出産手当金を受け取ることはできません。
産前産後休暇の期間は、出産予定日の42日前〜出産後56日までです。出産予定日を過ぎた場合は出産の日〜出産後56日、多胎妊娠の場合は出産の98日前~出産後56日目までが産前産後休暇になります。
出産費用について知っておきたいポイント
出産するにあたり、支給されるお金や、免除されるお金について知っておきましょう。
産休・育休中の被保険者ママの保険料は免除される
産休、育休中は社会保険料が免除されます。産休・育休を開始した月から終了する前の月までが社会保険料免除の対象です。社会保険料が免除されていても厚生年金の納付記録は残るため、産休・育休中に支払わなかった社会保険料の分が将来の年金受取額から減額されることは無いので安心してくださいね。
妊娠中の通院や出産費用は医療費控除の対象
医療費控除とは、その年に家族全員の医療費が10万円を超えている場合に税金が返ってくる制度です。医療費控除は、出産育児一時金の42万円や生命保険などで支給される給付金を差し引いた額が対象になるので、なかなか10万円に達しない場合も多いですが、ぜひ試してみてくださいね。医療費控除は妊婦健診の費用や入院・退院時の公共交通費、分娩費なども医療費控除の対象になるので、確定申告をするまで領収書を捨てずにとっておくようにしましょう。
帝王切開の費用は高額医療費制度で戻ってくる
高額医療費制度とは、健康保険適用の治療で、1ヶ月の自己負担の限度額を超えた場合の払い戻し制度です。高額医療費控除制度では、家族の医療費も合算することができます。帝王切開や切迫早産などで治療や入院が発生した場合は医療費が高額になるため、とても嬉しい制度ですね。高額医療費制度は事前に申請しておくと、退院時に支払う金額が自己負担限度額までとなるので、計画帝王切開の場合は事前に高額医療費制度の申請をしておくのがおすすめです。
自己負担の限度額は年齢や所得によって変わるので、自分がいくら支給されるか事前にチェックしてみてくださいね。また、高額療養費の申請期限は、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。「出産当時、高額医療費制度のことを知らなかった!」という方は、1度調べてみると良いかもしれません。高額医療費制度の支給は診療月から少なくとも3ヶ月以上かかるため、余裕を持って申請をおこないましょう。
出産費貸付制度は無利子で出産費用を貸付できる
出産する医療機関で出産育児一時金の直接支払い制度や受取代理制度を利用できず、退院時までにパパママが出産費用を準備するのが難しい場合は、健康保険に費用の借り入れを申し込むことができます。この出産費貸付制度では、出産育児一時金支給見込額の8割相当額を無利子で貸し付けてくれます。
出産費貸付制度を利用するためには、出産育児一時金を受け取る見込みがある必要があります。同時に「被保険者または被扶養者が出産予定日の1ヶ月以内であること」「被保険者または被扶養者が早産・流産等の理由により妊娠4ヶ月以上で分娩し、医療機関に一時的な支払いが必要であること」のどちらかに当てはまる人が対象になります。出産費貸付制度での貸し付け時点で3ヶ月以内に退職する予定のある方は対象外となりますので注意しましょう。
まとめ
面倒な手続き関係は後回しにしてしまいがちですが、出産後は想像以上にママの体力が落ちていたり、パパママも赤ちゃんの育児に追われていたりとなかなか手続きの時間が取れないことも多いので、事前に詳しく調べておくのがおすすめです。さまざまな制度を使いなるべく出産費用の負担を軽減して出産をのりきりましょう!
※この記事の情報は2020年12月現在のものとなります。