【FP監修】教育費はいくら貯めるべき? 大学までにかかる教育費の平均と準備方法
目次
監修者紹介
「教育費」とは? 教育費に含まれる内訳
教育費とは「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」の3つを総称した費用のことです。具体的には、主に学校生活における費用を学校教育費とし、学校の給食にかかる費用は学校給食費としています。それ以外の学校外でかかる費用については、学校外活動費に分類されます。
学校教育費 | 入学料、授業料、修学旅行・遠足・見学費、学級・児童会・生徒会費、PTA会費、その他学校納付金、寄附金、学用品・実験実習材料費、通学費、制服・体操服代など |
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学校給食費 | 給食費 |
学校外活動費 | 家庭内学習費、家庭教育費、学習塾、その他習い事の費用(芸術・文化・スポーツ)、体験・地域活動など |
大学までの教育費は平均でいくらかかる?
妊娠中の方や小さな子供がいる家庭では、「大学生までどれくらい費用がかかるの?」という疑問を抱える人が多くいます。そこで文部科学省の調査結果を元に、「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」の平均値を抜粋して、表へまとめました。幼稚園から大学までの教育費を、詳しいデータと共に解説します。
幼稚園・保育園の教育費
幼稚園は子供が3歳〜5歳までの間に利用します。公立は自治体が運営しているためコストを抑えられる一方で、私立は法人が経営していることから、総額の教育費が公立よりも2倍近くプラスになっています。公立の幼稚園を選べば、5歳までにかかる教育費を抑えられるでしょう。
幼稚園 | 公立 | 私立 |
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学習教育費 | 120,738 | 331,378 |
学校給食費 | 19,014 | 30,880 |
学校外活動費 | 83,895 | 165,658 |
総額(1年) | 223,647 | 527,916 |
幼児教育・保育の無償化とは
2019年(令和元年)10月より、幼児教育無償化がスタートしました。幼児教育無償化とは、幼稚園、保育園などを利用する子供たちを対象に利用料が無償となる制度です。子育て世帯にかかる教育費の負担が軽減されるため、家計の支出削減へ大いに期待できるでしょう。ただし、利用する幼稚園や保育園によって上限額が異なるので、希望する施設がどれに該当するのか、あらかじめ確認しておくことが大切です。
年齢 | 0歳〜2歳時クラス | 3歳〜5歳時クラス |
---|---|---|
幼稚園、保育所、認定こども園など | 住民税非課税世帯は無償 | 無償(幼稚園は月額25,700円まで無償) |
企業主導型保育事業 | 住民税非課税世帯は無償 | 無償 |
幼稚園の預かり保育 | – | 月額11,300円まで無償 |
認可外保育施設など | 住民税非課税世帯は月額42,000円まで無償 | 月額37,000円まで無償 |
就学前の障害児の発達支援 | – | 無償 |
小学校の教育費
小学校からは学校外活動費の支出が増えていることがわかります。家庭教師を利用したり、塾に通ったりする子供が多くなり、補助学習費の割合が増加していることが一因です。また、私立小学校では学習教育費における授業料の割合が半分以上を占めており、公立とは学習教育費に大きな差が出ています。
公立 | 私立 | |
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学習教育費 | 63,102 | 904,164 |
学校給食費 | 43,728 | 47,638 |
学校外活動費 | 214,451 | 646,889 |
総額(1年) | 321,281 | 1,598,691 |
総額(6年) | 1,927,686 | 9,592,146 |
中学校の教育費
中学校の学校外活動費は公立と私立でほとんど変わりません。しかし、私立中学校は一年の総額が約140万円と公立中学校とは3倍近く教育費が変わります。中学受験を視野にいれている人は、早いうちから教育費をためておく必要があるでしょう。公立中学校では一年で約50万円の教育費を用意しておくと安心です。
公立 | 私立 | |
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学習教育費 | 138,961 | 1,071,438 |
学校給食費 | 42,945 | 3,731 |
学校外活動費 | 306,491 | 331,264 |
総額(1年) | 488,397 | 1,406,433 |
総額(3年) | 1,465,191 | 4,219,299 |
高校の教育費
高校からは給食がなく、お弁当などを持参する場合が多いため、学校給食費はかからなくなります。一年間の総額は公立高校で50万円、私立高校は100万円の教育費がかかると想定し、準備しておきましょう。また、高校には「高等学校等就学支援制度」があるため、活用できる家庭では教育費の負担軽減に繋がります。
公立 | 私立 | |
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学習教育費 | 280,487 | 719,051 |
学校外活動費 | 176,893 | 250,860 |
総額(1年) | 457,380 | 969,911 |
総額(3年) | 1,372,140 | 2,909,733 |
高等学校等就学支援金制度とは
高等学校等就学支援金制度とは、国が学費の一部を負担してくれる制度です。今はほとんどの子供が高校へ進学している時代なので、ひとり親や家計に余裕がないパパママには大助かりでしょう。なお、令和2年4月からは大きな制度改正により、私立高校授業料の実質無償化もはじまりました。これにより、高校の選択肢が広がり、子供が将来を考える上での大きなメリットとなります。
対象となるのは、世帯年収が590万円(相当)未満の家庭と世帯年収が910万円未満(相当の家庭です(※両親と高校生、中学生の4人家庭で両親の一方が働いているモデルの場合)。世帯年収が590万円(相当)未満の場合は一律396,000円の支援、世帯年収が910万円未満(相当)の場合は118,800円の支援を受けることができます。年収が1000万円に近い人は所得控除を最大限に活用して、制度を利用することをおすすめします。※家族構成やその他の条件などによって一律ではありません。
2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット
大学の教育費
大学は子供を養育する上で、もっともお金がかかる時です。下記の表では入学料、授業料などにかかる費用をまとめましたが、このほかに生活費や通学費などもプラスされます。また、大学は選択する学部によって教育費が大きく異なるため、子供がどんな道に進みたいのか、前もって聞いておくといいでしょう。子供が希望する大学へ通えるように、早いうちから教育費を貯金することが大切です。
国立 | 公立 | 私立文系 | 私立理系 | 私立医歯系 | |
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入学料 | 282,000 | 394,225 | 229,997 | 254,309 | 1,073,083 |
授業料 | 535,800 | 538,294 | 785,581 | 1,105,616 | 2,867,802 |
その他 | – | – | 151,344 | 185,038 | 881,509 |
初年度総額 | 817,800 | 932,519 | 1,166,922 | 1,544,962 | 4,822,395 |
総額(4年) | 2,425,200 | 2,547,401 | 3,977,697 | 5,416,925 | 23,568,949(6年) |
幼稚園から大学までの教育費総額をシミュレーション
幼稚園から大学までにかかる教育費の総額を、それぞれケース別にリスト化しています。もっとも学費が安い1は、教育費総額が約864万円。一方、すべて私立の6では総額が約2,258万円と、大きな額の教育費が必要になることがわかります。
1.高校まで公立、大学のみ国立
幼稚園(公) | 729,962円 |
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小学校(公) | 2,003,070円 |
中学校(公) | 1,414,387 円 |
高校(公) | 1,561,758円 |
大学(国) | 2,933,400円 |
総額 | 8,642,577円 |
2.すべて公立
幼稚園(公) | 729,962円 |
---|---|
小学校(公) | 2,003,070円 |
中学校(公) | 1,414,387 円 |
高校(公) | 1,561,758円 |
大学(公) | 3,097,027円 |
総額 | 8,806,204円 |
3.幼稚園と大学は私立、そのほかは公立
幼稚園(私) | 1,611,457円 |
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小学校(公) | 2,003,070円 |
中学校(公) | 1,414,387 円 |
高校(公) | 1,561,758円 |
大学(私) | 5,799,058円 |
総額 | 12,389,730円 |
4.小学校と中学校は公立、そのほかは私立
幼稚園(私) | 1,611,457円 |
---|---|
小学校(公) | 2,003,070円 |
中学校(公) | 1,414,387 円 |
高校(私) | 3,131,439円 |
大学(私) | 5,799,058円 |
総額 | 13,959,411円 |
5.小学校のみ公立
幼稚園(私) | 1,611,457円 |
---|---|
小学校(公) | 2,003,070円 |
中学校(私) | 3,800,593円 |
高校(私) | 3,131,439円 |
大学(私) | 5,799,058円 |
総額 | 16,345,617円 |
6.すべて私立
幼稚園(私) | 1,611,457円 |
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小学校(私) | 8,240,327円 |
中学校(私) | 3,800,593円 |
高校(私) | 3,131,439円 |
大学(私) | 5,799,058円 |
総額 | 22,582,874円 |
教育費以外にかかる「養育費」の平均は?
ここまでは教育費について解説しました。しかし、子供を育てるには、教育費以外に養育費もかかります。養育費とは赤ちゃんを産むための出産費用から、オムツやミルク代、食費など、子供が生活するのに必要となる費用のことです。AIU保険会社「AIUの現代子育て経済考2005」の調査によると、出産から大学卒業までの22年間にかかる養育費は、平均約1,640万円という結果が報告されています。ただ、養育費の場合は教育費とは違い、その年によって大きく変動するものではありません。養育費は一定の生活水準を保てるように、毎月の収入の中からやりくりして捻出していきましょう。
教育費はどう貯める? 教育資金の準備方法4つ
子供が希望する学校へ通えるように、早いうちから教育資金の準備をしましょう。「教育資金はどうやって貯めるの?」というパパママのために、教育資金の準備方法を4つ解説します。
児童手当などの手当を充当する
一つ目の準備方法は、児童手当などの制度を活用することです。子育て世帯向けの支援金や手当など、利用できる制度は全て申請します。なかでも児童手当は、子供を出産後すぐに申請手続きをしましょう。3歳未満の子供には月額15,000円。3歳以上は月額10,000円(第三子以降は15,000円)となり、中学校からは一律10,000円が支給されます。子供1人につき、トータルで約200万円もの児童手当が受け取れるので、貯蓄に回せば教育資金は確実に潤います。また、ひとり親家庭には児童扶養手当がもらえる制度があるなど、ほかにも子育て世帯が受け取れる支援金があります。手続きなどをしっかり行い、申請忘れや遅れがないよう注意しましょう。
自分で貯金する
教育資金を貯めるには、定期預金や積立預金を利用してコツコツ貯蓄していく方法もあります。メリットは安定的かつ簡単にお金を預けられることと、教育資金が必要になった時はすぐに解約できることです。しかしその反面、貯蓄する意志が弱い人はすぐに定期預金と積立預金を中途解約してしまうなど、継続できないケースもあります。また、今は低金利の時代により、満期時の利息は期待できない点もデメリットに挙げられます。とはいえ、原則は満期解約がルールなので、自分の口座から継続して貯蓄したい人や、気軽に貯金したいパパママにはおすすめです。
学資保険を活用する
学資保険とは教育資金を準備するための代表的な保険であり、払込満了時まで保険料を毎月支払うことで、満期時にまとまった教育資金が得られます。さらに、高い返戻率で契約した場合には、満期時に受け取る保険金がより多くなるのも嬉しいポイントです。また、学資保険は大学までの教育資金を準備することが目的ですが、小学校、中学校、高校入学前のタイミングでお祝い金が受け取れる保険もあります。しかし、中途解約した場合は元本割れをすることがほとんど。契約者であるパパかママが死亡した時には払込保険料は免除されますが、お金は満期を迎えない限り受け取ることはできません。このようなデメリットを理解した上で、学資保険を活用することが重要です。最近は学資プランといって、終身保険や養老保険を短い期間で払い込む方法が流行っています。
投資信託で貯める
投資信託とは複数の投資家から集めた資金を、投資信託運用会社が株式や債券、不動産などに投資し、得た運用利益を投資家へ還元する金融商品のこと。特に、「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」などは、非課税制度を活用しながら教育資金が準備できると、子育て世帯には魅力的なメリットがあります。ただ、ジュニアNISAは2023年末に制度が終了し、新たな投資はできなくなるため、コツコツ毎月長期の貯蓄を考えるならつみたてNISAの方が有利です。なお、投資信託は選ぶ商品によっては大きな運用利益が期待できるものの、相場下落時には元本割れするリスクもあるのがデメリット。そのため、15年後に耳を揃えてお金を用意しないといけない場合、投資信託は貯蓄にある程度余裕がある人におすすめの準備方法です。保険でも変額保険という、保険と投資信託がセットになったものも学資プランとして人気です。
子供にかかるお金は「教育費+養育費」を準備しよう
子供を育てるには、多額の費用がかかります。仮に幼稚園から大学まですべて公立を選んだ場合、約900万円の教育費と、平均1,640万円の養育費。合計2,540万円がかかると想定できます。教育費を無理なく準備するためには、早いうちから計画的に貯蓄していくことが大切です。将来、子供が行きたい高校や大学へ入学できるよう、それぞれの家計に合った方法で教育資金を準備していきましょう。(文/葛生由姫)
※この記事の情報は2020年11月現在のものとなります。