2018年改定の保育所保育指針って何? これを見れば保育園の保育方針がわかります
目次
保育所保育指針って何? どんな制度
「保育所保育指針」と聞くと名前からしてすごく難しそうですよね。まずは「保育所保育指針」という言葉を初めて耳にした方もわかるように、基本的な内容をお伝えします。
保育所保育指針とは?
「保育所保育指針」は、簡単に説明すると保育所での保育内容について厚生労働省が示したものです。具体的には、保育所における保育とは何か、保育で大切にすべきことは何かなどの基本的な考え方、保育の狙い、保育の具体的内容や保育所の運用に関することが記載されています。
全国の保育所は、この保育所保育指針に従って、子供の健康や安全を確保しつつ、保育の内容を計画して実施します。保育所保育指針は1965年に最初に制定されてから、1990年、2000年、2008年に改定されていて、2018年にも10年ぶりに改定されました。
保育所保育指針改定で保育園、幼稚園、認定こども園での幼児教育の内容が統一
未就学児の施設として、子供に教育を行うのが幼稚園、保育を行うのが保育園、両者のいいとこ取りが認定こども園とされてきました。しかし、2018年3月の保育所保育指針改定で厚生労働省は「保育園は教育も行う」ことを明確に示しました。
実は2018年3月には保育所の指針となる「保育所保育指針」だけではなく、幼稚園の「幼稚園教育要領」、認定こども園の「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」も同時に改定されています。
どこの施設でも同じ質、同じ内容の乳幼児教育が提供されるようにするための上記3つの法令の同時改定です。厚生労働省管轄の保育園、文部科学省の幼稚園、内閣府の認定こども園と、それぞれ管轄する省庁が違うのに、同時改定を行ったところに国の幼児教育への本気度がうかがえます。
幼稚園、保育園、認定こども園、それぞれの違いについて知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。
目指すのは幼児教育と小学校教育を連携させること
3つの法令を同時に改正し、どの施設に通う未就学児にも同じ教育が提供されるようになりましたが、この目的は小学校の教育と連携させることです。どの施設での幼児教育も
- 遊びや生活を通じて、知識や技能の基礎を学ぶ
- 遊びや生活を通じて、思考力、判断力、表現力の基礎を学ぶ
- 遊びや生活を通じて、学びに向かう力、周囲に優しくできる人間性を獲得する
ことを目標にしています。
上記1~3の基礎的な力を身に着け、小学校へと進むことを目的にしています。保育園、幼稚園、認定こども園、それぞれの教育方針について解説するのは別の記事で行うとして、下記より2018年改訂の保育所保育指針について紹介していきますね。
2018年の保育所保育指針の改定で何が変わった?
2018年3月の保育所保育指針の改定では、以下の5点が基本的な方向性として変更されました。
- 0歳~3歳未満児の保育についての内容が充実した
- これまで児童福祉施設と位置付けられてきた保育園が教育施設として位置づけられた
- 子育て環境の変化を踏まえ、健康・安全についての見直しが行われた
- 保護者、家庭、地域と連携した子育て支援の必要性についての内容の整理と充実化が図られた
- 職員の資質、専門性の向上について明確化に規定された
この5つの内容を踏まえた上で、パパママにぜひ知っておいて欲しい保育所保育指針の内容を紹介していきましょう。
保育所保育指針改定内容1:0~3歳未満の乳幼児保育について
乳児から3歳児未満までの時期は、特に心身の発育・発達がいちじるしく、子供にとって非常に重要な時期です。今回の保育所保育指針の改定では、3歳児未満の子供の保育の意義を明確に定義し、内容の充実化がされました。
具体的には、「健やかにのびのびと育つ」、「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものと関わり感性が育つ」の3つの視点から、「乳幼児保育」と「1~3歳児未満の幼児保育」で、それぞれどのような目的を持って、どんな保育をすべきかが書かれています。
乳幼児保育について書かれた「健やかに伸び伸びと育つ」という点だと、1人1人の発育に応じて、はう、立つ、歩くなど十分に体を動かすことを推奨したり、オムツ交換や着替えを通じて清潔になる心地よさを感じることなどが紹介されています。
また、保育園の温かな雰囲気を大切にし、子供が好きな遊びが実現できる環境が用意されていること、不安な時や悲しい時に心のよりどころとなる保育士等の存在が必要であることなども強調されています。
保育所保育指針改定内容2:保育園での幼児教育はどう変わった?
保育園は働くママのためにあくまで「保育」をしてもらうところで、幼稚園では読み書きなどの「教育」をしてもらうところ、というイメージがありませんか? 今回の保育所保育指針の改定では、保育園が認定こども園や幼稚園と共に、幼児教育の一翼を担う施設であるということが明らかに示されました。
幼児教育において育みたい子供たちの資質・能力として、上でも紹介した「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」を示し、取り組んだ結果の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」も明示されています。
保育所保育指針改定内容3:子供の健康と安全を重視した保育環境を整える
保育園では、1人1人の健康状態や発育の状態に応じて、子供の健康支援や食育の推進に 取り組むことが求められています。離乳食・幼児食の進み具合はもちろん、アレルギーに対する配慮も必要です。
さらに、平成23年に発生した東日本大地震を経て、安全・防災に対する意識も高まりました。震災時には、保育園が地域住民を支える役目を果たすこともあります。子供の命を守るために、普段からの備えや災害発生時の体制づくり等を地域の行政機関などと進めることが求められています。こういった食育の促進や安全な環境の確保についての内容が今回の保育所保育指針改正で充実しました。
充実した養護環境を整えた上で幼児教育を行う
保育における養護とは、子供たちの生命を保持し、子供の心の安定を図ることです。そのために、保育士が子供たちに丁寧に配慮した上で適切な援助を行い、関わっていくことが必要となります。
心身の機能の未熟さを抱える乳幼児期の子供が、その子らしさを発揮しながら心豊かに育つためには、保育士が、1人1人の子供を深く愛し、守り、支えることが重要とされています。
保育所保育指針改定内容4:地域の子育てを支援する
近年、保育園へ求められる役割が多様化してきました。例えば、登園している子どもの保護者の支援だけでなく、地域の子育て家庭に対する支援、特別なニーズを有する家庭への支援、児童虐待の発生予防や発生時の対応などです。保育園の担う子育て支援の役割は年々、重要性が増しています。
そのため、地域の様々な人・場・機関などと連携を図りながら、地域に開かれた保育園として、地域の子育て力の向上に貢献していくことが、保育所の役割として求められています。
保育所保育指針改定内容5:保育士の専門性を向上させる
上でご説明したように、保育園に求められる役割が多様化し、保育に関する課題もどんどん複雑化してきました。そうした中で、保育士は、子どもの保育や家庭での子育ての支援に関する専門家として、重要な役割を担うことになります。そのための施設長の役割や、研修体制の充実など、保育士の資質・向上を図っていくための方向性や方法が保育所保育指針に明確に示されました。
保育所保育指針改定内容では保育園以外の小規模保育などにも配慮
今回の改定では、保育園にとどまりません。定員が6~19人の「小規模保育」、自治体の認定を受けた保育者が居宅等で保育を行う「家庭的保育」等 の地域型保育事業や認可外保育施設においても、保育所保育指針の内容に準じて保育が行われることが定められました。
まとめ:保育所保育指針を知れば、日本の子供の教育方針がわかる
「保育所保育指針」には、基本的には保育園が意識すべきことや保育の内容についてが記載されています。全て読んで理解しようとすると大変ですが、パパママも概要を把握しておくことで、普段の子育てや保育園との関わりにも役立つのではないでしょうか。
この指針によって、すぐに保育園の何かが革命的に変わるということにはならないと思いますが、保育園側と保護者とで子育てのゴールを共有し、協力し合えると良いですよね。