【FP監修】育児休業給付金とは? 月収別の支給金額例と育児休業給付金の計算、申請方法について
目次
監修者紹介
育児休業中にもらえる育児休業給付金ってどんな制度?
育児休業(育休)について簡単にご紹介
まずは育児休業とはどういった制度なのかを簡単にご説明しましょう。育児休業は会社に申し出ることで取得することのできる、子供の育児のために仕事を休むことができる期間です。育児休業は育児介護休業法で定められた労働者の権利で、男女を問わず取得することができます。
もし、育児休業を取得する人以外に子供の育児が可能な方がいたとしても、育児休業を取得してもいいと法律で定められています。育児休業は通常、産休明けの生後8週間~1年までの期間に取得することができます。育児休業を取得できるのは子供1人につき1回までですが、子育ての状況によっては2歳になる誕生日の前日まで育児休業期間を延長することができます。
産休、育休については下記記事でも紹介しています。よろしければご覧ください。
育児休業給付金とは?
育児休業給付金は、育児休業(以下、育休)中に申請をすることで支給される、パパママの子育てを支援してくれる国の給付金になります。育児休業給付金は育休中の家計をサポートするために支払われ、育休に入る前までの月収をベースに算出、2ヶ月ごとに支払われます。
育児休業給付金の受給資格について
以下の条件に該当していればパートや派遣社員、正社員などの雇用形態を問わず、どのパパママも育児休業給付金の支給を受けることができます。
- 雇用保険に加入している
- 育休中、休業開始前の給料の8割以上の賃金をもらっていない
- 育休前の2年間のうちで、1ヶ月に11日以上働いた月が12ヶ月以上ある
- 育休中に就業していたとしても、支給期間中、月に10日以下しか働いていない
ただし、以下に該当するパパママは育児休業給付金がもらえません。
- 雇用保険に加入していない
- 妊娠中に退職する
- 育休開始時点で、育休後に退職すると決まっている
- 育休を取得せずに、職場復帰する
- 育休中でも会社から給与が8割以上出る
雇用保険がない自営業のパパママは育児休業給付金の受給対象になりません。産後退職する予定のママも、育児休業給付金の受給対象には含まれませんので注意してください。
育児休業給付金でいくらもらえる? 計算方法と月収ごとの支払い例
次に、育児休業給付金でいくらもらえるのか、支給期間の上限は何ヶ月なのか、いつ育児休業給付金が支給されるのかについてご説明します。育休中の育児休業給付金の額によっては子育て計画が変わるかもしれません。そのため、月収ごとの育児休業給付金支給額の計算式と、サンプルの月収をいくつか設定し、育児休業給付金支給額を計算してみました。下記表から今のみなさんの月収に近い数値を見つけ、皆さんが育児休業給付金をいくらもらえるのかをイメージしてください。
育児休業給付金で私はいくらもらえる? 育児休業給付金の計算方法は?
育休開始日から180日目までの期間に月収の67%の育児休業給付金が支給されます。181日目~育休最終日までは月収の50%の育児休業給付金支給となります。また、育児休業給付金には月収の上限下限が定められており、上限は42万6300円、下限は6万9000円となっています。例えば、月収が50万円の人は上限の42万6300円で育児休業給付金支給額を計算することになります。間違えないように注意してください。では、育児休業給付金の実際の計算方法を見ていきましょう。以下に具体例を載せました。
月収30万円だった人がもらえる育児休業給付金の支給額
育休に入る前の6ヶ月の月収が30万円だとします。この場合、育休に入った最初の6ヶ月に受け取れる育児休業給付金の支給額を計算してみると
30万円×0.67=20万1000円
月20万1000円が育児休業給付金として支給されます。
7ヶ月目以降は育児休業給付金支給額は少し低くなります。月収の50%の支給となりますので計算すると
30万円×0.5=15万円
月15万円が育児休業給付金として支給されます。
月々の育児休業給付金支給額ではイメージしづらいでしょうから、1年の育児休業給付金の総額でまとめましょう。月収30万円の育休中のパパママは育児休業給付金を1年で210万6000円もらえることになります。育児休業給付金でこれだけもらえるとパパママも安心して子供の子育てをすることができますね。
育児休業給付金の月収ごとの支払い金額の計算例
月収30万円の例だけではわかりにくいでしょう。いくつかの月収パターンで、「月々にもらえる育児休業給付金」、「1年間での育児休業給付金総額」を表にしてみました。こちらも参考にして皆さんの月収から育児休業給付金の支給額を計算してください。
最初の6ヶ月 | 7ヶ月目以降 | 1年間の総額 | |
---|---|---|---|
月収5万円 | 4万6230円 | 3万4500円 | 48万4380円 |
月収10万円 | 6万7000円 | 5万円 | 70万2000円 |
月収20万円 | 13.4万円 | 10万円 | 140万4000円 |
月収30万円 | 20万1000円 | 15万円 | 210万6000円 |
月収40万円 | 26万8000円 | 20万円 | 280万8000円 |
月収50万円 | 28万5621円 | 21万3150円 | 299万2626円 |
上記表を見ると、どれだけ年収が高いパパママでも1年にもらえる育児休業給付金の総額は300万円を超えないことがわかりますね。なお、育児休業給付金は収入には換算されず、非課税です。つまり、育児休業給付金は所得税が引かれることはなく、満額が支給されます。また、育児休業給付金は収入ではないため、育児休業給付金の支給を受けた翌年の住民税も大幅に安くなります。
育児休業給付金がもらえる期間はいつからいつまで? 育休を延長してももらえるの?
育児休業給付金がもらえる期間は原則として子供が1歳になるまでとなっています。ただし、子供が認可保育園に子供が入園できないなどの理由で育休を延長する場合、引き続き育児休業給付金を受け取ることができます。育児休業給付金の期間延長が認められるケースは下記になります。
- 認可保育所の入所待ちがある場合
- 配偶者の死亡や怪我、病気などで養育が困難な場合
- 婚姻の解消などにより配偶者が子供と同居しない場合
- 6週間以内に出産する予定または、産後8週間を経過しないとき
育児休業給付金はいつ、どこで申請するの? いつ支給されるの?
育児休業給付金の申請は会社が代行することが多い
育児休業給付金の申請は本人に代わって会社が申請するのが一般的です。会社が育児休業給付金を申請する場合、最初の2ヶ月の育休期間が過ぎてから育児休業給付金の支給申請を行います。ただ、忙しくて育児休業給付金の申請手続きが遅れたり、忘れていたりということも稀にあります。
最初の育児休業給付金の支払いは育休開始から3ヶ月目が一般的
育児休業給付金の申請手続きがスムーズであれば、手続き完了後1週間以内に育児休業給付金の入金があるでしょう。最短で育休が始まって3ヶ月目に最初の育児休業給付金が指定口座に振り込まれているでしょう。振込が確認できない場合は「育児休業給付金の申請手続きは終わりましたか?」と会社に確認しましょう。
パパママ本人が育児休業給付金の申請をハローワークを通じて行う場合は、育休開始日から4ヶ月後の月末までが申請期限となります。先に紹介した通り、育児休業給付金でもらえるのはかなりの金額になります。くれぐれも育児休業給付金の申請手続きを忘れないようにしてください。なお、育児休業給付金は会社で申請する場合もパパママが申請する場合も2ヶ月ごとに申請が必要となります(希望すれば1ヶ月ごとに申請も可能)。よほどの事情が無い限り、会社に育児休業給付金を申請してもらう方がいいでしょう。
育児休業給付金は申請期限の2年後までなら再申請可能
育児休業給付金は申請期限を過ぎたとしても、申請期限から2年の時効が成立するまでに再申請すれば受け取ることができます。申請期限を過ぎてしまったからと言って育児休業給付金を諦める必要はありません。とは言え、育児休業給付金の支給が遅れると子育てに影響があるでしょうから、申請期限に遅れないよう注意してください。
育児休業給付金支給中に支払いが免除になる税金
育児休業給付金をもらっている期間は下記の税金が減税もしくは免除となります。税金によっては免除申請が必要なものもあるので、手続きを忘れないようにしてください。
1、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)は免除
※ただし「産前産後休業取得者申出書」を健康組合と日本年金機構へ提出する必要あり。会社で手続きを代行してもらえるのが一般的です
2、住民税は自治体によっては安くなる可能性があります
自治体によってルールが違うため、役所の税務課など住民税を担当する部署に確認してみましょう。
育児休業給付金の支給ミス? 過去に支給を受けた人は追加給付が受けられるかも
2019年1月11日に厚生労働省から「毎月勤労統計調査」が不正な方法で集計されていたと発表されました。簡単に説明すると、育児休業給付金の支給金額を計算するベースデータが不正なもので、正しいやり方で集計しなおすと育児休業給付金の支給額が増えることになります。不正な毎月勤労統計調査の集計は2004年から行われていたとのことなので、2004年以降に育児休業給付金を受け取ったパパやママは、不足している金額の追加給付が受けられるかもしれません。
ただ、育児休業給付金の追加給付の対象だったとしても、追加で支払われる育児休業給付金は一人あたり平均で1400円とのこと。対象者には文書で連絡が来ると発表されていますが、厚生労働省は1000万人以上の対象者の住所を転居などで把握できていないとのことなので、気になる人は問い合わせてみてはいかがでしょうか。
パパが育休を取っても育児休業給付金は支給されます
厚生労働省の2017年の調査によると、パパの育休取得率は約5%と低い数字になっています。政府は2020年までに男性の育休取得率を13%にする目標を定めていますが、厳しい状況です。政府は「パパ・ママ育休プラス」という制度を設け、パパママがそれぞれ育休を取得した場合、1歳2ヶ月まで育休を認めるなどの工夫をしていますが、雇用主の企業がパパの育休に理解を示すようにならないと、パパの育休はなかなか普及しないでしょう。
育休は1日から取得できますし、ママが専業主婦である場合ももちろん取得可能です。生まれたばかりの子供の子育てはママ一人で行うには体力的に大変です。また、子供は生まれてからの1年で驚くほど成長します。子供の成長をそばで見守るという点でも、仕事とバランスを取りながらパパの育休取得も当たり前の世の中になればと思います。
保活をするには育休取得がマイナスになることも
フルタイムで職場復帰していると、保活(自分の子どもを認可保育園に入れるためにパパママが行うさまざまな活動のこと)では選考のための点数が高くなり、希望する認可保育園に入りやすくなります。パパとママがフルタイム勤務の共働きだと点数は高くなりますし、認可保育園入園前に認可外保育園に預けていた実績があれば、さらに点数が加算されます。つまり、産休明けの早いタイミングで認可外保育園を見つけて職場に復帰して、仕事をしている実績をつくり、その翌年の認可保育園の入園申請をすると育休を取得している家庭より有利になるのです。
育休を取得して仕事をお休みしていると、職場復帰した家庭より加算される点数が少なくなり、希望する保育園に入れる可能性が低くなってしまうのです。子供を認可保育園に入れたい場合は、育休を取得すべきか、いつ育休を終えて職場復帰するのかについてよく考えておきましょう。
まとめ:育休や育児休業給付金制度を上手に利用し、子育てをしましょう
子供が1歳になるまでの子育ては本当に大変です。しかし、育休制度を使えば仕事をお休みして子育てに専念することができますし、育児休業給付金が支給されれば育休中の家計も助かります。ただし、育児休業給付金の支給までには最低2ヶ月以上はかかるため、育休中の家計は育児休業給付金をあてにし過ぎず、しっかり計画しておきましょう。
子供が生まれての最初の1年、2年はパパママの子育ての悩みは尽きません。しかし、子供のことを考えて、できるだけ希望に近いライフスタイルを送ることができるよう、育休や育児休業給付金の制度を上手に利用してください。
※この記事の情報は2021年1月現在のものとなります。