子供がいる夫婦の離婚で決めるべきこと、親権、養育費、ひとり親制度について
目次
子供がいる夫婦が離婚する前に知っておくべきことは?
子供がいる夫婦が離婚を考える際には、親権・養育費など子供に関わる離婚条件を夫婦で話し合って決める必要があります。また、離婚による子供への影響も考えなければなりません。子供にとって両親のどちらかと別れ、片方の親だけと暮らしていく環境の変化はとても大きいことも理解しておきましょう。離婚を機に子供の名字が変わったり、転居・転校したりする場合は、学校などでの周囲の反応に子供が傷つくことのないように気を配り、子供の精神的負担が大きくならないように配慮する必要もあります。
離婚における子供への影響は決して小さいものではないため、子供のために離婚を思いとどまろうとしたり、先延ばしにしようと考えたりするかもしれません。しかし、両親が不仲な環境で子供が育つ悪影響も見過ごせない問題であり、場合によっては離婚した方が子供のためになる場合もあります。離婚による子供の不安を取り除き、離婚後子供の生活に不自由を生じさせないためにも、離婚をする時に決めるべきことを知っておきましょう。
子供がいる夫婦が離婚の際に決めるべきこと
子供がいる夫婦が離婚する際、決めなければいけないことは主に以下の8つです。順番にご説明します。
親権
離婚をする夫婦間に未成年の子供がいる場合、親には子供の養育義務があるので、父母どちらが親権を持つかを決めなければなりません。離婚届には未成年の子供の親権を父母どちらが持つのか記載する欄があり、親権者の記載がなければ離婚は認められません。
養育費
未成年の子供を育てるために必要となる生活費や学費などの費用(養育費)は、原則として子供が成人するまで親が負担する義務があります。たとえ離婚して親権者とならなかった場合でも養育費を支払う義務があるので、離婚前にどのように養育費を分担するかを決めておく必要があります。
面会交流
離婚の際に親権を得ず子供と別々に暮らすことになった親には、離婚後に子供と定期的に面会する権利があります。いつどこでどのようにして子供と面会するのか、面会の頻度と形態を離婚前に話し合って決めておきましょう。
婚姻費用(離婚が成立するまでの生活費)
離婚まで夫婦が別居している場合でも、法律上の夫婦である限り互いの生活費や子供にかかる学費などを分担する義務があります。離婚が成立するまでは、夫婦の収入の大小に応じて婚姻費用をどのように負担するかを決める必要があります。
財産分与
婚姻中に夫婦でともに形成・維持してきた財産は、離婚の際に公平に分配します。現金、家具家財、預貯金、車、不動産、土地、株式、年金、退職金などが財産分与の対象となりますので、離婚前にどのように分配するかを決めます。
年金分割
離婚時に、婚姻中に納付された年金保険料の納付記録を夫婦で分割する制度を年金分割と言います。年金分割は、離婚後に夫婦間で年金受給額に大きな差が出ることを防ぐための制度です。平成20年4月以降の期間については夫婦どちらか一方の請求により自動的に1/2に分割が行われますが、平成20年3月末までの期間については、分割の割合を夫婦で話し合って決めるか、家庭裁判所の手続きにより分割が行われることになります。
慰謝料
離婚する際、離婚の原因となった側は相手側に対し、精神的苦痛に対する損害賠償金である慰謝料を支払う義務が生じます。慰謝料は子供の有無に関係なく支払われるものですが、養育する子供が多いほど慰謝料は高額になる傾向があります。離婚後の生活の基盤を築く上で大切な生活資金ともなるので、慰謝料についてもしっかりと話し合う必要があるでしょう。
子供の姓と戸籍
一緒の戸籍に入っていた夫婦が離婚すると、当然夫婦の戸籍は別々になりますが、離婚により子供の姓と戸籍が変わることはありません。例えば、夫が筆頭者である夫の戸籍から妻は抜けますが、子供は父親の戸籍に入ったままになります。たとえ母親が親権者になったとしても、子供の戸籍と姓が自動的に母親側に変更されるわけではありません。子供を親権者である母親と同じ姓にし、戸籍も母親の戸籍に入れたいと考える場合は、家庭裁判所に対して子の氏の変更申立手続きを行う必要があります。
協議離婚の場合は離婚協議書や公正証書を作成する方法もある
離婚協議書とは?
夫婦で話し合い、双方ともに離婚に合意して行う協議離婚の場合は、離婚の際の約束事(離婚条件)を「離婚協議書」で定め書面に残しておくのが安心です。口約束のままでは、離婚後忘れられたり曖昧になったりして、トラブルの元になりかねません。
離婚協議書では、主に財産分与・慰謝料などの財産関係と、養育費・面会交流などの子供関係について定めます。離婚協議書は夫婦自身で作成するか、弁護士等法律の専門家に依頼して作成してもらう方法があります。
公正証書とは?
離婚協議書に法的効力を持たせるために、離婚協議書を公正証書として作成するという選択肢もあります。離婚協議書と公正証書の大きな違いは、金銭の支払い関係における強制執行の効力の有無にあります。離婚条件に金銭の支払いが定められているにもかかわらず約束通りに金銭の支払いが行われなかった場合、公正証書を作成している場合は、裁判等を経ずに支払義務者の財産を差し押さえることができるのです。
離婚条件を書面で残したい場合は離婚協議書か公正証書のどちらかを選択しますが、養育費など長期の金銭の支払いを含む場合などは特に、公正証書を作成しておいた方が後々安心と言えるでしょう。公正証書は、各都道府県にある公証役場に夫婦で出向き、手続きの上作成することになります。調停離婚の場合は、調停証書が金銭の支払いなどについて強制執行の効力を持ち、協議離婚における公正証書と同様の役割を果たします。
離婚する時に弁護士に相談する必要はある? かかる費用は?
弁護士相談は必ず必要ではないが、専門的な知識からアドバイスが得られるのがメリット
離婚する夫婦の約9割を占める協議離婚の場合は、夫婦の話し合い・同意により市区町村の役所に離婚届を出せば離婚が成立するので、夫婦で話し合いがまとまる場合には必ずしも弁護士に相談する必要はありません。夫婦間で協議がまとまらない場合の調停離婚、離婚調停が成立しなかった場合の裁判離婚の場合も、弁護士に依頼をするのは必須ではなく、自身で離婚手続き行うこともできます。
しかし、調停離婚・裁判離婚を自身で進めるには難しい面も多いので、弁護士に依頼した方が必要なアドバイスを受けられ、離婚を有利に進められる、煩雑な事務手続きをお願いできるなど大きなメリットがあります。協議離婚の場合であっても、弁護士に相談することで、離婚条件を有利にまとめられる、離婚協議書(または公正証書)を適切に作成できるなどのメリットがあります。
弁護士相談にかかる費用
弁護士に依頼するには相応の費用がかかりますので、状況に応じて弁護士を利用するかどうか考えてみましょう。以下が主な弁護士費用の相場となりますので、参考にしてみてください。
- 相談料 1時間5千~1万円程度(相場)
- 協議離婚時の弁護士費用 ~30万円程度(相場)※成功報酬の場合
- 離婚調停時の弁護士費用 40万円~70万円程度(相場)
- 離婚裁判時の弁護士費用 70万円~110万円程度(相場)
ひとり親家庭の支援制度を知っておこう
離婚後ひとり親家庭になった場合、生活や医療、教育などの負担を減らすため、国や自治体から支援を受けることができます。助成金としては、国から0歳~18歳の子供を育てているひとり親家庭に支給される「児童扶養手当」、各自治体から同様に0歳~18歳の子供を育てているひとり親家庭に支給される「児童育成手当」があります。
自治体による減免制度としては、医療費、所得税、住民税、保育料、通勤交通費等が対象となっており、申請することにより免除・割引等を受けることができます。ひとり親家庭支援制度は、所得制限が設けられていたり、自治体によって内容や条件が異なっていたりしますので、まずは自治体にひとり親家庭支援制度について問合せをして、内容を確認してみましょう。
まとめ
夫婦間に子供がいる場合に離婚を考える場合は、子供への影響にも配慮し、今後の子供との生活に不利にならないよう慎重に離婚条件を固めていく必要があります。場合によっては弁護士に相談することを考えても良いでしょう。離婚後の生活には大きな不安がつきまとうと思いますが、国や自治体からひとり親家庭支援制度を受けることができますので、取りこぼしのないように離婚以前にしっかりと調べておくことをおすすめします。