小規模保育って何? 一般の認可保育園との違いやメリット、デメリットは?
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小規模保育と一般的な保育園とはどう違う?
小規模保育とは、定員6~19名の乳児保育を行う認可保育園です。少し前までは、定員数が20名以下の小規模な保育施設はすべて「認可外保育園」として認定され、国が定める認可保育園にはなれませんでした。そんな小規模な保育施設が、2015年にスタートした「子ども・子育て支援制度」によって、国や自治体からの補助を受けられる、認可保育園として運営できるようになりました。それが今回紹介する「小規模保育」です。
小規模保育と通常の認可保育園との大きな違いは、保育対象年齢が0歳~2歳の乳児保育に限られることと、定員が6名以上、19名以下と決められて運営されている点にあります。この違いについて、以下より詳しく紹介していきましょう。
小規模保育が0~2歳限定の理由
年齢区分 | 利用児童数(2019年) | 待機児童数(2019年) |
---|---|---|
0歳児 | 152,780人 | 2,047人 |
1・2歳児 | 943,470人 | 12,702人 |
3歳以上 | 1,583,401人 | 2,023人 |
全年齢児童の合計 | 2,679,651人 | 16,772人 |
上記表は2019年に厚生労働省がまとめた年齢別の保育園利用者数と待機児童数の調査結果です。数値を見てみると、待機児童16,772人のうち、0歳~2歳児が占める割合が全体の87.9%、14,749人ということがわかりました。待機児童が最も多いのが0歳~2歳の子供で、待機児童数全体の約9割を占めているということですね。
【厚生労働省】保育所等関連状況取りまとめ(平成31年4月1日)
国が2015年に「子ども・子育て支援制度」を制定した大きな目的のひとつとして「待機児童の解消」がありました。保育士の不足などさまざまな問題を抱えるこの待機児童問題を、限られたスペースと人員を使ってより効果的に解決するために、「子ども・子育て支援制度」では待機児童数の多い0歳~2歳の乳児保育に限定して小規模保育を運営することに決めたのです。
小規模保育の定員が19名以下の理由
小規模保育の定員が19名以下と制限された背景には、従来の基準で生じてしまう環境整備問題を解消する狙いがありました。
一般の保育園が整備できない都心部にコンパクトな保育園を増やすため
国や自治体は待機児童解消のため、積極的に保育園を整備していますが、都心部はビルが密集しており広い土地が確保できず、大規模な保育園が作れないという問題がありました。そのため、多くの子育て世帯が住むエリアにも関わらず保育園の数が少なく、結果として待機児童が増えていました。
そういった問題を解決するために、都心部にも保育の受け皿が増やせるよう、限られたスペースでも開園できる「小規模保育」が2015年に制度化されました。コンパクトな保育園にすることで広い保育園用地確保の必要性を減らすため、「19名以下」という人数制限が決められました。
開園スピードを早められるメリットも
また、大規模な保育園は、土地を整備して建物を建設し、開園するまでに数年の期間を必要とします。しかし、小規模保育であれば、マンションの一室など既存の建物の一部で保育を行うことが可能なため、計画から保育園開園まで数ヶ月で進めることも可能です。保育園の開園スピートを早め、施設数を増やすことで、より多くの待機児童を受け入れられるようになります。そのため、小規模保育は今後の待機児童問題解消のため、大きな期待を受けています。
小規模保育の種類とそれぞれの特徴
小規模保育の種類 | 対象年齢 | 保育園定員 | 職員数 | 職員基準 |
---|---|---|---|---|
A型 | 0~2歳 | 6~19名 | 一般の保育園の基準+1名 | 全職員が保育士 |
B型 | 職員の半数が保育士 | |||
C型 | 6~10名 | 子供3人につき職員1人(補助者がいれば5人につき2人) | 家庭的保育者 |
小規模保育にはA型、B型、C型の3種類あり、それぞれ「子供の定員数」「職員の数」「在籍する職員のうちの保育士資格保有者の割合」が異なります。上記の表を見ながら具体的にご説明しましょう。
A型の小規模保育は、定員数が6名以上、19名以下となっており、職員の数は下記表で紹介した保育園の職員配置基準+1名と設定されています。つまり、0歳児が3名、1歳児が8名、2歳児が8名の園だった場合、一般の保育園では職員は最低5名が必要となりますが、小規模保育の場合、最低6名の職員が必要ということになります。
参考として、一般的な保育園の保育士配置基準を以下の表にまとめておきます。
年齢区分 | 保育士数の基準 |
---|---|
0歳児 | 児童3人につき保育士1人 |
1、2歳児 | 児童6人につき保育士1人 |
3歳児 | 児童20人につき保育士1人 |
4、5歳児 | 児童30人につき保育士1人 |
また、A型は在籍するすべての職員が保育士資格を保有していることが条件となっています。B型の小規模保育は子供の定員数・職員の数はA型と同様ですが、「保育士資格保有者の割合」が1/2以上と設定されています。B型小規模保育の職員全員が保育士の資格があるわけではなく、一部はその保育士をサポートする子育て支援員などの職員で構成されているということですね。
C型の小規模保育は、定員数が6名以上、10名以下と、3つの中では最も規模が小さい施設になります。職員の数は、子供3人につき職員1人(補助者を置く場合は5人に2人) とされており、職員の保有資格は「保育士」である必要はありません。C型の小規模保育に従事する職員は各自治体の研修を受け、保育士と同等以上の知識・経験があると認められた「家庭的保育者」や「子育て支援員」であることが条件となっています。
小規模保育の保育料はどう計算するの?
小規模保育は認可保育園の一種なので、保育料の計算方法は一般的な認可保育園とまったく同じです。認可保育園の保育料は、各家庭の市区町村民税(住民税)を元に、各自治体ごとに決められています。保育料は家庭の状況により変動しますが、基本的には所得の多い家庭ほど、保育料は高くなるようになっています。
具体的な金額は自治体によって変わるため、同じ所得の家庭でも、住んでいる地域によって保育料は全く異なります。また、3歳児未満と3歳児以上など年齢区分でも保育料が変わってきますので、詳しくはお住まいの自治体のホームページで確認してみるか、もしくは窓口に問い合わせてみても良いでしょう。
保育料の決定には、住民税の中の「所得割額」という項目が必要となってきます。ご自身の所得割額が知りたいという方は、会社員の方であれば会社から送られてくる「市町村民税・県民税特別徴収税額通知書」に記載されています。また、お住まいの市町村役場・行政センター等で「市町村民税・県民税課税(非課税)証明書」を発行してもらい確認するという方法もありますので、気になる方は一度確認してみてください。保育園の保育料の計算方法、年収ごとのおおよその保育料については下記記事で紹介していますので、そちらもご覧ください。
小規模保育に子供を預けるメリット
小規模保育には、規模が小さいからこそ利用しやすいと感じるメリットがあります。
交通の便がいい、アクセスしやすい場所に保育園がある
小規模保育を行う保育園は、広大な敷地を必要としません。そのため、小規模保育は駅から近い場所に設置されている場合が多く、「自転車で子供を送ってから駅まで歩いて電車通勤…」といった送り迎えの負担が少ないのがポイントです。小規模保育が駅近の商業施設の一角や区役所の中など便利な場所にあることも多いため、送り迎えのついでに買い物ができたり、用事を済ませたりできるという点もメリットのひとつとなっています。
アットホームな環境が魅力
小規模保育の特徴は、「子供と保育士」、また「子供同士」や「保育士とパパママ」といった、さまざまな人たちが親密なコミュニケーションを取れることにあります。一般の職員配置基準よりも職員が多く配置されている一方、園児は多くても19名のため、顔と名前はすぐに覚えてもらえます。園にいる先生やお友達のことをパパママも子供自身もちゃんと把握できるのは安心感に繋がりますよね。大きな保育園だと、児童数300名という園もあり、他の年齢やクラスの子供との関わりが少ないということもあるため、さまざまな年齢のお友達との交流があるのは嬉しいポイントです。
少人数保育なので病気をもらいづらい
保育園に通い始めると必ずと言っていいほど風邪を引きます。筆者の子供も毎月何かしらの病気をもらってきており、通院する小児科の先生にも「毎月保育園に健康診断に行くけれども5人に1人は鼻水・咳だから、常に色んなウイルスがぐるぐる巡っているんだよね」と言われました。「だからなかなか治らないのか…」というのはどのパパママも実感できる悩みでしょう。そう言った点では、園児の数が少なければ蔓延するウイルスも必然的に減ってくるため、小規模保育に子供を通わせると病気への感染の可能性が少なくなることになりますね。
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