2020年から大学無償化スタート! 授業料等の減免の年収制限は?
目次
大学無償化での所得制限の注意点
幼児教育無償化などに比べ大学無償化にはかなり厳しい所得制限があります。所得制限には気を付けるポイントがあるので、チェックしておきましょう。
所得の基準になるのは前年1月~12月の所得
所得制限の基準になるのは住民税の住民税課税標準額です。住民税課税標準額は、前年の1月~12 月の所得をもとにした最新の内容が毎年6月に通知されます。サラリーマンの場合には、会社を通じて配布されますのでチェックしてみましょう。高校生など、進学予定の場合には6月に配布されている前年度の通知をもとに判断し、支援が決定します。通知書が配布されたら、課税所得欄を確認してみましょう。
一方、すでに大学などに在学中の場合には、毎年夏ごろにマイナンバーを利用して課税標準額を確認し、その判定結果がその年の10 月以降の支援額に反映されます。前年度の年収で所得要件を満たしていても、途中で支援額が変わったり、支援が打ち切りになったりすることもあるので注意してください。
学生本人の所得が含まれないように注意
大学無償化の恩恵を受けられる家庭の学生は、生活費のためにアルバイトなどをしている場合も多いでしょう。基準となる所得は、学生本人と保護者の合計で判定されます。フルタイムでアルバイトをこなすなど、年収が額面で 200 万円(成年の場合には100 万円)を超えるような場合は、市町村民税を課税されることがあります。この場合、学生本人も課税証明書等を提出する必要があります。本来、低所得層の学生が、安心して学業に励めるように設計された制度です。本末転倒にならないよう、学生本人も所得制限に注意しましょう。
新型コロナウイルスの影響などで家計が急変した場合も申請可能
2020年3月26日に文部科学省から、新型コロナウイルス等によって急に世帯の収入が減るなど「家計が急変」した場合への救済策としてお知らせが発表されています。本来、大学無償化の対象は前年度の収入によって決まりますが、保護者の病気や事故、失業や災害などによって家計が急変する場合には、家計状況が変更したあとの所得を基準に年間所得を推計し、大学無償化の対象とします。
なお、本来申請の申し込みは毎年4月と10月に限定されており、支給開始のタイミングも同じく4月と10月が基本です。しかし「家計の急変」の場合には、急変事由の発生後3カ月以内に随時申し込みが可能で、認定後は速やかに支給してもらえます。現在は対象外であっても、大学無償化の対象となる学生もいるので、急な家計の悪化で困っている場合には進学をあきらめずに調べてみてください。
新型 コロナウィルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ(文部科学省)
【Q&A】新型 コロナウィルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ(文部科学省)
大学無償化での授業料等の減免 こんな場合はどうしたらいい?
2020年4月から始まる大学無償化ですが、対象となる学生は、すでに大学独自の授業料減免制度を受けていたり、奨学金をもらっていたりするケースも多いものです。新制度での授業料等減免とそれぞれ併用ができるのかなど、個別のケースについて確認してみましょう。
すでにほかの支援を受けている場合はどうなる?
文部科学省が公開しているQ&Aによると、「大学や自治体、民間団体等による支援については、新制度での授業料等減免や給付型奨学金と併せて利用することを、国において一律に制限するものではありません」としています。しかし、中には利用に制限があることもあります。
【大学独自の授業料の減免との併用】
現在、国立大学や私立大学では成績優秀者などに対して、独自の認定基準で授業料の減免や特待生制度を持っている学校があります。国はこうした大学独自の制度の継続については、各大学に判断をゆだねています。
しかし、中には独自の授業料減免制度を廃止して、今回の「高等教育の就学支援新制度」に一本化する学校もあります。この場合、所得制限が厳しくなり自己負担が増える学生も出ています。
また、今回の「高等教育の修学支援新制度」は大学院は対象外のため、今まで大学独自の減免制度を使っていた大学院生にとっては、ダメージが大きいものです。この問題は徐々に顕在化してきており、文部科学省によれば全国で約1万9000人に上る学生が支援が減ってしまったり打ち切られたりすると推定されています。
【日本学生支援機構(JASSO)の奨学金との併用】
今回の大学無償化では、対象が低所得層に限られることから中間所得層との逆転現象が課題になっています。この問題を是正するため、日本学生支援機構(JASSO)の無利子奨学金(第一種学資貸与金)を併せて利用する場合、利用できる上限額が引き下げられます。それにより社会人になってから返済すべき奨学金の額を減らせるため、中間所得層の学生も助かりますね。
引き下げ後の上限額は学校種別などによって変わるので、下記の文部科学省の資料を参考にしてください。有利子奨学金(第二種学資貸与金)を併用する場合、制限はありません。
授業料等減免・給付型奨学金(新制度)の支援を受けた場合の無利子奨学金の額の調整
授業料減免だけを受け取れる?
今回の大学無償化「高等教育の就学支援新制度」は、「授業料等の減免」と「給付型奨学金」の2本立ての制度で、年収などの支援要件はどちらも同じです。「授業料等の減免」は大学へ、「給付型奨学金」は日本学生支援機構(JASSO)への申請となりますが、原則としてどちらか一方のみに支援を絞ることはできません。
入学前に準備するお金がないときは?
今回の大学無償化では、各制度の申請は入学後になるため、一時的に入学金などの準備が必要になります。しかし、対象となる低所得家庭ではその準備も厳しいこともあるでしょう。文部科学省では、各大学等に対して経済的に納付が難しい学生については、納付期限に猶予を与えることを依頼しています。まずは進学先の大学に相談してみましょう。
大学等が猶予を行っていない場合には、各都道府県の社会福祉協議会に相談することで、教育支援資金を貸し付けてくれる「生活福祉資金貸付制度」があります。利用には1ヶ月ほどかかるので、大学への相談と並行して検討しておきましょう。
大学・専門学校等への入学前に学生又は保護者が利用可能な支援制度(文部科学省)
まとめ 無償化=無料で進学ではないので注意して
ついに始まった大学無償化の中でも授業料の減免について、詳しく見てみました。少子化対策の目玉の政策と位置づけられていることから、ほかの制度や支援との併用には注意が必要です。また、学業の不振などによる打ち切り条件もあります。しっかり調べて、スムーズに支援を受けられるようにしたいですね。