2020年から小学校での英語教育が義務化。授業内容と保護者が意識しておきたいポイントを紹介!
目次
小学校での英語教育の現状と課題
小学校での英語教育は1986年より検討が進められ、さまざまな段階を経て、2020年にいよいよ全面実施を迎えます。文部科学省の資料から、簡単な経緯とこれまでの成果、課題をまとめました。
小学校での英語教育全面実施の経緯
「総合的な学習の時間」設定(1998年) | 指導要領が改訂され、英語に関する活動が広く行われるようになりました。2003年度には約97%の小学校で英語活動が実施されているという調査結果が出ています。 |
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「外国語活動」設定(2008年改訂、2010年全面実施) | 小学5・6年生を対象に週1コマの「外国語活動」が設定されました。 |
新学習指導要領(2017年告示、2020年全面実施) | 英語が小学校5・6年生において正式な教科となります。 |
これまでの小学校での英語教育成果と課題
英語学習に関する状況調査(2011~2012年)の結果の一部が、文部科学省の下記資料に記載されています。子供の大半が「英語が好き」、「将来、英語を使えるようになりたい」と答え、英語への親しみ・学習意欲という点で成果が見られます。さらに、中学1年生の多くが「小学校での英語学習が役に立っている」と回答しました。
しかし、「小学校で英語の読み書きをもっとしておきたかった」との意見から、音声中心の小学校英語から読み書きが問われる中学校英語との接続が上手くいっていない課題が見えてきます。また、教師側からは、教材研究や指導力向上のための研修が不十分であるとの声も上がっています。こうした成果と課題を踏まえ、新しい英語教育はどのように決められたのでしょうか。次以降の章でご紹介しましょう。
2020年から小学校の英語教育が本格実施
2020年から正式に小学校で学ぶ教科となった英語について、新学習指導要領から概要を簡単にまとめました。
英語教育の開始学年と授業数
従来は小学5・6年生を対象にしていた「外国語活動」が、小学3・4年生に前倒しされます。授業数は年35単位時間(週にして1コマ程度)です。そして小学5・6年生は教科としての「英語」が年70単位時間設定されます。
小学校での英語授業の目標
新学習指導要領では高校卒業までに4技能(「聞く」「読む」「話す」「書く」)の力を総合的に育むことを目指します。小学校における外国語教育は、外国語でコミュニケーションできるようになるための「素地」(小学3・4年生)・「基礎」(小学5・6年生)という位置づけです。
小学3・4年生の外国語活動の目標
- 言語や文化の理解を体験的に深め、音声や基本的な表現に慣れ親しむ
- 考えや気持ちを伝え合う力の素地を養う
- 言語や文化の理解を深め、相手に配慮しながらコミュニケーションを図ろうとする態度を養う
小学5・6年生の英語の授業での目標
- 日本語と外国語の違いを理解し、「聞く」「読む」「話す」「書く」をコミュニケーションに活用する基礎的な技能を身につける
- 情報を整理し考えや気持ちを伝える基礎的な力を養う
- 外国語を使ってコミュニケーションを図ろうとする態度を養う
小学3・4年生の外国語活動授業内容は?
英語を使う活動を通して、言語によるコミュニケーションの楽しさ、文化理解を体験することを目指します。短い話を聞いて内容を把握したり、身近なことについて簡単なやり取りや発表を行い、情報を整理して表現したり伝える力を養います。
小学5・6年生の英語の授業内容は?
知識として、発音やアクセントといった音声、文字と符号、身近な単語と慣用表現などの連語、よく使うシンプルな文構造などを学習します。それらを用いて、考えを伝え合う・表現する・書き写すなどの活動を、身近で簡単な事例を題材として行っていきます。
小学校で英語教育を行うメリット
コミュニケーションに主眼をおいた体験的な学習を通じ、子供が抵抗なく英語学習を受け入れることが期待できます。また、特にリスニングや発音など、身体で覚えることの効果は低年齢ほど発揮されやすいと考えられます。
小学校で英語教育を行うデメリット
限られた授業数の中で英語の授業が増えるわけですから、他教科への影響や子供の負担が心配になるところです。実際、2004年に行われた意識調査では、「英語を必修とすべきでない」とする教師・保護者のうち70%近くが「他の教科の内容をしっかりと学んでほしい」という理由をあげています。ただ、他教科や学校行事を題材として活用するなど、英語教育が総合的な学びの機会となるような指針も示されています。覚えるべき事項が増えるという捉え方ではなく、豊かな学びに繋がることを期待したいですね。
各自治体の英語教育の取り組み事例
新学習指導要領策定に先立ち、「英語教育強化地域拠点事業」としていくつかの学校が先進的に英語教育に取組み、効果を検証してきました。一例として以下のような実践がなされており、今後の英語教育にも展開されていくでしょう。
- 短時間学習(京都府光華小学校):
ゲームやチャンツ(※)の他、身近なフレーズを寸劇の中で用いる「一言English」など、毎日短時間の習慣的な取組み。短時間学習で学んだ語彙は非常に定着率がよかったとの成果も。※チャンツ…リズムにのせて単語やフレーズを口ずさむ表現。 - 国語教育との連携(京都府光華中学校):
国語の「書き方・話し方」等の単元を踏まえ、英語でのプレゼンテーションなどの原稿作成・発表に役立てる。 - 絵本の活用(千葉県流山市立南流山小学校):
絵本を補助教材とし、音声で慣れ親しんだ語や文を視覚的に捉える。登場人物への共感など、絵本の内容から自己表現活動にも発展。 - ICTの活用(葛飾区立本田小学校):
デジタル教科書・教材の活用。ネイティブの発音を映像で観察、波形表示機能を使った発声練習など。
小学校の英語教育に関する意識調査
参考までに、公立小学校の4年生と6年生およびその保護者・教員を対象とした文部科学省による意識調査結果をご紹介します。背景として、調査が行われた2004年は、「総合的な学習の時間」において国際理解の一貫として外国語に触れる時程を設定できるという段階でした。
英語に対する児童の反応
「英語活動が好き」「英語が使えるようになりたい」と答えた割合は共に73.9%で、子供たちの英語に対する姿勢はおおむねポジティブであると言えます。
小学校の英語教育で目標とすべき(目標としてほしい)こと
「英語に対する抵抗感をなくすこと」に「そう思う」と答えた割合は、保護者・教員とも94.8%でトップでした。一方で、「英語を聞いたり話したりする力をつけること」を保護者の83.3%が支持したのに対し、教員は59.6%に留まりました。英語に親しむことを主目的としつつも、保護者としては技能という面でも小学校での教育に期待する感覚が見てとれます。
小学校の英語活動は誰が教えるのがよいか
保護者・教員とも、「小学校の教員と英語を母語とする外国の人の組み合わせ」がよいと思う人が最も多い結果となりました。反面、教員に聞いた「英語活動を実施する上での課題」では「ALT(外国語指導助手)や英語に堪能な民間人など外部人材の確保」が多く挙げられています。指導体制について、ネイティブ人材を望ましいとする理想と、体制の確立に苦慮する現状にギャップが窺えます。
小学校での英語教育の本格実施前に保護者が意識しておきたいポイント
子供がスムーズに英語学習に入るため、また将来のことも見据えて、以下のような点は意識しておきたいところです。
中学受験での英語入試も視野に学習計画を
首都圏の中学入試は受験者数、受験率とも増加の一途をたどっています。小学校で必修科目となった英語を、受験科目とする中学校が増えることは間違いないでしょう。実際、2019年度に英語入試を導入している首都圏の中学校は125校にのぼります。現段階では選択科目とする学校が多いですが、中には英語1教科入試の制度を持つ学校もあります。一方で、いわゆる最難関中学では英語を受験科目としているところはそれほど見られません。受験を検討する中学校の動向は早い段階からチェックしておく必要があるでしょう。
今のうちから英語に慣れさせる
小学校での英語学習では、コミュニケーションの素地を養うという点から、知識量や技量よりも能動的な姿勢がより求められると考えられます。学校の「勉強」だと子供が構えてしまう可能性もありますが、その前から、家庭もしくはイベント・習い事といった体験を通じてなら、抵抗感をおぼえにくいでしょう。今は幼少期から遊びや習い事で英語に触れて育っている子供も少なくありません。あらかじめ英語に触れておくことは英語学習の準備としては有効でしょう。
新しい英語教育の情報収集は積極的に行う
英語教育はこれから新しい制度に変わる段階なので、指導方法が確立されるまでは不安に感じる点もあるでしょう。そのため、英語教育に関する情報を早めに知っておきて心構えをしておきたいところです。身近なところでは、同じ小学校の上級生ママから授業内容を聞くなどはすぐに参考になる情報ですね。
また、中学入試における英語の導入状況もしばらくは流動的であると予想されますので、志望校の情報はこまめに仕入れておく必要があるでしょう。その他、こちらの記事で紹介したような教育関係機関の資料、先進校での取組みなどは、今後の学校教育の方向性を推し量るのに参考になりますので随時チェックしてみてください。
まとめ
大きく変わりつつある英語教育にパパママとしては心配な面も多いでしょう。ですが、新学習指導要領が示す英語教育の目標は、世界中の人と英語でコミュニケーションできるようになることです。英語の知識を問う試験の成績にとらわれすぎず、子供が世界の人と英語でコミュニケーションを取るための準備として、前向きにサポートしていきたいですね。