
企業主導型保育園(保育事業)とは? メリット・デメリットなどを解説
目次
企業主導型保育園を設置するメリット
企業主導型保育園を開所することで企業が待機児童問題を解決する手助けはできるものの、わざわざ企業側が保育園を開設して運用するには何かしらのメリットがあるはず。運営費用のことや保育士や運営スタッフの採用など、保育園の運営は簡単ではありません。それでも企業主導型保育園を開所したいと思えるメリットがちゃんとあるのです。
メリット1:認可外保育園なのでスピーディに開所できる
企業主導型保育園を設置するメリットは、なんといっても認可保育園より設置基準のハードルが低く、スピーディに開所できるという点でしょう。内閣府が発表した「企業主導型保育事業について」によると、企業主導型保育園は2018年3月31日時点で2,365施設、定員54,645人分まで整備が進みました。前年の2017年は871施設、20,284人分だったため、ハイスピードで新しい施設の開所が進んだのがわかります。筆者の住んでいる地域にも、去年新しく企業主導型保育園が開所したので説明会に参加してきました。まだ、一般にはあまり聞き慣れない保育園のため、赤ちゃんを連れたママたちが次々と質問を投げかけていました。
メリット2:保育園新設時の施設整備費用の補助が受けられる
2つ目の企業主導型保育園を設置するメリットは、保育園新設時の施設整備費用の補助金を受けられる点です。企業主導型保育園は認可外保育園ですが、開所にかかる工事費用の3/4相当の補助金が交付されるため、保育園開設時の運転資金の面でも安心です。企業主導型保育が急激に増えた理由の1つには、この手厚い整備費用の補助にあります。
メリット3:認可保育園並みに運営費用の補助金が出る
3つ目の企業主導型保育園を設置するメリットは、設備整備だけでなく保育園の運営にあたって認可保育園並みの助成を受けることができる点です。このため企業主導型保育事業では保育園利用者の保育料負担も認可施設と同様の水準に設定することができます。また、固定資産税、都市計画税などの税制の優遇や融資制度もあります。
メリット4:社員の多様な働き方に対応できる
4つ目の企業主導型保育園を設置するメリットは、企業主導型保育園を運用することで自社の社員の多様な働き方をサポートできるという点です。事業所内かその周辺に企業主導型保育事業を開設した会社の場合、働く女性社員の出産や子育てと仕事の両立を支援することができます。
パートタイムやアルバイトでは認可保育園になかなか入園できず、退職してしまうケースも企業主導型保育事業を開所すれば解決できるかもしれません。また、夜間・休日のシフト制の仕事だと一般の認可保育園には預けることができず、柔軟に開所時間を決められる企業主導型保育事業の設置が求められる会社もあるでしょう。企業主導型保育園は一人一人の多様な働き方に対応することができる認可外保育園です。
企業主導型保育園の開設は企業のイメージアップに繋がったり、社員が子育てと仕事を両立させて長く働くことができたり、離職率の防止にも繋がるメリットがあります。
企業主導型保育園の問題点
企業主導型保育園は制度が成立して以来、急激に設置数を伸ばしていますが一方で突然の閉園や助成金の不正受給など、問題も相次いでいます。
定員割れの施設が多い
2019年1月21日に内閣府が発表した数値によれば、全国の企業主導型保育園は2018年3月末時点で、定員に対して平均で61%しか利用者がいませんでした。年齢別でみると0~2歳児の利用率が72%、3歳児以上は22%と3歳児以上の利用率が目立って低い結果となりました。
さらに、2019年4月の会計検査院報告によると開設後の定員充足率(定員の何%が埋まっているか)が50%を切る企業主導型保育園が全体の40%もあるという報告が発表されました。企業主導型保育園に子供を預けるパパママはまだまだ少ないのが現状です。充足率の低さが原因で企業主導型保育園の経営が悪化し、突然閉園となったニュースが話題にもなりました。
保育ニーズと設置場所が合っていない
企業主導型保育園の利用率が思ったほど伸びない他の理由は、保育施設のニーズが高い都心での企業主導型保育園の整備が進まず、逆に保育ニーズが低い地方で整備が進んでいる事情もあります。社員のために保育園がどうしても必要な会社が工場などに企業主導型保育園を整備したものの、社員以外の保育が必用な子供が周辺にほとんどいない、こんな場合は利用率が低くなるのも仕方ありません。
企業主導型保育園の開設要件は見直しへ
増え続ける施設数とともに、突然の閉園による混乱や、定員割れによる経営悪化、助成金の不正受給などが表面化した企業主導型保育園。制度を立ち上げた内閣府では、適切な制度運営のために「企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会」を立ち上げ、経営の安定性や保育の質を高めるために下記のような提言を行いました。
- 新規開設する保育事業者は5年以上の保育施設運営実績があること
- 一部施設では保育士の割合をこれまでの50%から75%に高めること
- 定員充足率などの情報公開
- 自治体への定期報告を義務化
新規開設する保育事業者に5年以上の保育施設運営実績を求めるのは、短期間で企業主導型保育園が閉鎖されるのを防ぐため、保育事業の運営実績のある企業のみに新規参入を認め、安心してパパママが子供を預けられるようにするためです。
一部施設で保育士の割合をこれまでの50%から75%に高めるのは、定員20名以上の「保育事業者型」企業主導型保育園が対象です。職員に占める保育士の割合が50%だったのは、保育士の確保が難しい現状に合わせたもので、保育士に加えて子育て支援員を採用することで、これまでは対応してきました。認可保育園に比べると甘い保育士基準を75%まで高め、パパママに安心して企業主導型保育園を利用してもらおうという狙いがあります。
東京都は企業主導型保育園に独自の支援を行っている
国が企業主導型保育園の開設要件を厳しくする一方で、東京都は企業主導型保育園に独自の支援を行っています。「企業主導型保育施設設置促進助成金」は、国の助成金で賄えない遊具や安全柵などの備品、登園管理や保育日誌をタブレットで行うなどの、保育士の事務作業負担を軽減する園ICTツールの導入に最大で150万円の補助金を支給します。保育士の事務作業負担を減らすことで労働環境を改善し、企業主導型保育園に保育士が集まりやすくするのが狙いです。
しっかりとした事業者に企業主導型保育園を運営して欲しいという国の方針もありますが、自治体による保育園の整備には予算などの問題もあり、東京都は企業主導型保育園を増やすことで待機児童問題の解消を狙いたいと考えているのがわかりますね。
まとめ
まだまだ新しい制度でできた施設の企業主導型保育園。不安がある園があるのも事実ですが、運営母体がしっかりしていて、保育園見学も受け入れてくれる企業主導型保育園ならば、パパママの保活の際の選択肢になり得るでしょう。気になった人はぜひ、お家や職場の近くの企業型保育を調べてみてくださいね。