妊婦が注意すべき感染症「風疹」のリスクって? 大人の風疹の抗体検査・予防接種について
目次
妊婦が注意すべき感染症「風疹」とは?
風疹ウイルスに感染して症状が出る急性のウイルス感染症が「風疹」です。空気感染はしませんが、くしゃみや咳などの飛沫感染や接触感染が原因でうつります。感染力は強いですが、感染しても比較的症状が軽い事が多い病気です。子供の方が軽い症状で現れ、大人は発熱や関節通が酷くなり、完治まで子供よりも時間がかかります。
特別な治療法や治療薬は無いので、病院では発熱・関節炎などに対する解熱鎮痛剤を処方するといった、症状を和らげる対処療法のみが行われます。そのため、事前のワクチン接種で抗体を付ける「予防対策」がとても重要です。近年の日本では数年ごとに流行が確認されており、特に妊娠初期に気を付けなければならない病気のひとつですので、特徴や症状をよく知っておきましょう。
妊婦が注意すべき感染症「風疹」の症状は?
ウイルスに感染すると、発熱や関節痛、小さなピンクの発疹、耳の後ろなどのリンパ節の腫れと言った症状が出ます。潜伏期間は2~3週間、まれに発症しない人も15~30%いますがウイルスは保有しているので感染源になりえます。発疹が表われる前後約1週間は感染力が高く、その後ウイルスが減少し始め、熱が下がると感染力も弱くなります。風疹の免疫が無い妊娠20週ころまでの女性が感染すると、胎児にも影響が出る可能性が高いと言われているので注意が必要です。
先天性風疹症候群とは?
妊娠初期の胎児が風疹に感染し、それが原因で障害を持ったまま生まれてしまう赤ちゃんがいます。主に心臓や目、耳に重い障害が現れ、心臓の血流などが悪くなる先天性心疾患、白内障、重度の難聴などが具体的な疾患です。他には体の発育が遅れたり、糖尿病になったり、精神発達に遅れが見られたりとさまざまな症状が現れる事もあります。複数同時発症もまれではありません。これらの症状が出ると「先天性風疹症候群」と診断されます。
妊娠1ヶ月で感染した場合は50%以上、妊娠2ヶ月の場合は35%の発症の可能性があるというデータの通り、妊娠初期の20週くらいまでは特に注意が必要です。それ以降の感染でも発症する事もありますのでしっかりとした対策をしなければなりません。
妊婦の風疹の抗体検査は妊婦健診で行う
初期の妊婦健診で行われる血液検査には、風疹の抗体価を調べる項目があります。特に妊娠初期に注意が必要なので早い時期に検査を受けるのです。抗体の数値が低かった場合、風疹に対する警戒心を持ってもらうために医師から十分注意するようにと言われます。
風疹の抗体検査で抗体を持たない・抗体価が低いことがわかった場合
妊婦健診の結果、もし十分な抗体が無かったらどうすべきなのでしょうか。妊娠すると風疹のワクチンを接種する事はできません。
唯一の方法は風疹から遠ざかる事です。まず風疹の流行有無にかかわらず不要な外出は極力避けるようにしてください。やむを得ず外出する場合は、マスクをし、人ごみは避け、早急に自宅へ戻るようにします。出産後はなるべく早く予防接種をしてくださいね。そして同居の家族には風疹の抗体検査を受けてもらうようにお願いしてください。抗体価が十分ではない場合は予防接種をしてもらいます。十分な免疫を付けるためには2回の摂取が理想です。
風疹の流行に関する情報は国立感染症研究所のホームページ、もしくは各都道府県のホームページで知る事ができます。
夫の風疹抗体もチェック! 抗体検査と予防接種を受けてもらう
なぜ夫の風疹抗体を確認すべきなのでしょうか。現在のパパ世代は予防接種を受けていない、もしくは1回のみの摂取で十分な抗体価を期待できないという理由があります。そのため外で夫が風疹に感染するケースが多くあり、その夫から風疹をうつされる妊婦が多いという現状があります。
夫の予防接種回数の確認をする
現在では、国から補助を受けられる形で原則2回の予防接種を受けられますが、これは1990年4月2日以降の若い世代の男女に限られます。それ以前では予防接種1回もしくは0回で、風疹患者数が多い世代との報告があります。
最も風疹の抗体を持たない世代は、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性です。以下の表でパパママの摂取状況がどうなっているかを確認しましょう。
生まれた年月日 | 男性 | 女性 | 危険度 |
---|---|---|---|
1990年(平成2年)4月2日~ | 2回個別に摂取(1歳と小学校入学前) | 低い | |
1987年(昭和62年)10月2日~1990年(平成2年)4月1日 | 1回個別に摂取(幼児期) | 要注意(接種率が男女とも低い) | |
1979年(昭和54年)4月2日~1987年(昭和62年)10月1日 | 1回個別に摂取(中学生) | 要注意(接種率が男女とも低い) | |
1962年(昭和37年)4月2日~1979年(昭和54年)4月1日 | – | 1回集団接種(中学生) | 要注意(抗体の減少の可能性がある) |
~1962年(昭和37年)4月1日 | – | 無摂取 | 特に要注意 |
~1979年(昭和54年)4月1日 | 無摂取 | – | 特に要注意 |
1回の摂取経験者も免疫強化の観点から、抗体検査を受ける事が推奨されています。また、個別に摂取していた時代は男女とも接種率が低いので、抗体を持っていない人数が多い可能性も指摘されています。
以下サイトでも詳しく確認できますよ。
自治体発行のクーポンを活用しよう
厚生労働省の事業として、昭和37年度~昭和53年度の男性に対し、風疹の抗体検査と1回の予防接種を無料で受けられるクーポン券を発行しています。すでに送られている場合は早めに利用し、送られていなければ各自治体の保健所に問い合わせをしてみましょう。
風疹と「麻疹(はしか)」の違いは?
ウイルスによる感染症で風疹と似た症状が出る「麻疹」。妊娠すると風疹同様、ママは予防接種を受ける事ができません。過去に風疹にかかったことがあると思っても実は麻疹だったという事もあります。特徴や症状、胎児への影響などに違いがあるのでここで確認しておきましょう。
麻疹の症状は?
感染後10日~12日間で38度くらいの発熱と咳、鼻水といった風邪に似た症状が出た2~3日後に38度前後まで熱が上がり、同時に発疹が出ます。風疹との違いは、初期症状が麻疹の方が風邪に似ている事です。熱が下がっても再び上昇するなど、麻疹の症状の方が重い傾向があります。
麻疹の感染
風疹に比べて感染力が強く、風疹と同じく飛沫感染や接触感染もしますが、風疹には無い空気感染もするのが大きな違いです。
麻疹の妊婦への影響
風疹の胎児への影響である「先天性風疹症候群」のような先天性疾患の影響はありません。しかし早産や流産になる恐れ、麻疹になった母体の重症化の懸念はありますので、風疹の時と同じようになるべく人ごみに出ないなどの対策が必要です。
まとめ
風疹の流行は繰り返されています。平成14年から少しずつ流行の規模が拡大し始め、それまで毎年0~1名だった先天性風疹症候群の赤ちゃんが平成15年~平成16年には10名にまでのぼりました。平成24年~25年は、45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されました。その後、一度落ち着いたものの、平成30年の7月ごろから関東を中心に患者数が増加しているとの調査結果があります。
風疹は感染するので、妊娠がわかったらママだけでなく、パパをはじめ一緒に住む家族にも十分な注意が必要となります。自治体が発表する風疹の情報を一緒に見るなどして、出産まで家族みんなで予防と対策をしていきましょう。