【FP監修】子供に保険は必要? 不要? どんな保険ならおすすめ?
目次
監修者紹介
子供専用に作られた3種類の保険を知っていますか?
パパママが子供のために加入を考える保険は大きくわけて3種類あります。子供の教育費の積み立てのために入る学資保険と、病気やケガに備えて入る医療保険、さらに子供がモノを壊したり、誰かを怪我させてしまったときのための個人賠償責任保険です。加入するかどうかはパパママ次第ですが、それぞれの特徴とメリット、デメリットをご紹介しましょう。
子供の教育資金を積み立てるための学資保険
子供の将来について考えると必ず思い浮かぶのは「教育費」ですよね。2014年の文部科学省「子どもの学習費調査」によると、幼稚園~大学までに掛かるすべての教育費を換算すると、すべて公立の施設に通った場合では約1000万円、すべて私立の施設でその中でも理系に通った場合はなんと約2650万円の教育費が掛かることがわかっています。
毎月コツコツ貯蓄して、というのもひとつの方法ですが、大学進学などまとまったお金を必要とするタイミングで、ある程度の費用を確保するために活用されるのが学資保険です。学資保険には「貯蓄型」と「保障型」の大きく2つの種類に分けることができます。それぞれの特徴・メリット・デメリットをご紹介しましょう。
貯蓄型の学資保険
学資保険で重視されるポイントとして多いのは「返戻率(へんれいりつ)」です。初めて耳にする方もいるかもしれませんが、これは「支払った保険料と比べて、将来受け取れる総額がどのくらいあるのか」を割合で示したものです。例えば、総額100万円の学資保険料を支払って、満期の受け取り金額が110万円であれば、返戻率は110%ということになります。貯蓄型の学資保険は返戻率を重視しており、よりたくさんのお金を受け取ることを目的としています。
貯蓄型の学資保険の最大のメリットは受け取れる金額が大きくなることでしょう。返戻率は保険会社によっても異なりますし、払込期間や受け取り時期、パパママや子供の年齢などによっても変動します。そのため、さまざまな商品と比較検討してみることをおすすめします。注意したいのは、学資保険は途中で解約をすると損をしてしまうことです。学資保険は基本的に10年や15年など払込期間を契約ごとに設定するようになっています。そして、学資保険契約時に伝えられる返戻率は、この設定した払込期間を満期まで払いきった場合の率です。
そのため、満期になる前に学資保険を解約してしまった場合、支払った保険料のうちある程度の返戻金は「解約返戻金」という形で受け取れるものの、支払った保険料よりも受け取り額が下回ってしまいます。貯蓄目的で学資保険に加入したのに、受け取り額が減ってしまっては元も子もありませんよね。貯蓄型の学資保険を検討する際には、満期まで払いきれる金額か、を加味して毎月の保険料を検討することをおすすめします。
保障型の学資保険
一方、保障型の学資保険は、貯蓄目的よりもパパママや子供の万が一の場合に備えることに比重を置いた保険です。学資保険の保険料を支払うパパママが死亡してしまった際にはそれ以降の支払いが免除される、という保障内容は貯蓄型にもある場合が多いです。しかし、保障型の学資保険では、それに加え育英年金(保険契約者が死亡した場合、満期を迎えるまで育英費用として受け取れる年金)があったり、子供が怪我や入院をした際の医療保障がセットになったものもあります。
保障内容を充実させ、リスクに備えられる心強い保険ですが、保障型の学資保険は返戻率は100%以下のものが多いのを知っておいてください。保障内容を充実させればさせる程、返戻率は下がっていくので、生命保険など別の保険に入っているのであれば、それと比較しながら保障内容を選択したほうが良いでしょう。
学資保険を選ぶポイント
学資保険を選ぶ際にはどんな観点で比較すれば良いのでしょうか? 大きく3つのポイントを紹介します。
- 返戻率は何%か
- パパママ、子供への保障内容はどんなものがあるか
- 家族構成や支払い方法での割引など、どんなサービスがあるか
学資保険に入る目的によってどれを最も優先させるのかが変わります。貯蓄目的であれば支払い金額と受け取り金額の差分に注目した方が良いため、返戻率や割引・サービスを重視することをおすすめします。保障目的で検討しているのであれば、保障内容と返戻率を比較して、よりバランスの良いものを選択する、という選び方がいいでしょう。最近では学資プランと呼ばれる貯蓄型の死亡保障で貯めるケースが多くなっています。パパママの保障と学資金の貯蓄と同時にできる半面、途中での解約に大きなペナルティがかかるものが多いため、掛け過ぎには注意しましょう。
子供向け医療保険
入院・通院・手術など、大きな怪我をした際に掛かる費用を負担してくれたり、一時金などを受け取ることができるのが「医療保険」です。保険会社によって負担費用や保障内容はさまざまです。多くの保険商品では、家族構成や生活スタイルに合わせ、複数の項目の中から自分に合った保障内容を選択していくのが主流となっています。子供向けの医療保険も基本的には大人と同じような保障内容となっており、治療費だけではなく、死亡やがんなどにもしっかり対応できるような内容となっています。
子供の医療費は医療助成制度があれば無料のはずでは?
ここで気になるのが子供の「医療費助成制度」です。医療費助成制度とは、自治体に申請し医療証を受け取ることで、子供の医療費を自治体が負担してくれる制度です。厚生労働省が行った、平成29年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」によると、すべての都道府県及び市区町村において、乳幼児の医療費助成制度があることがわかりました。また、多くの自治体では15歳年度末(中学生)までは、医療費助成の対象になっています。
「子供の医療費を国が負担してくれるなら、保険に入る必要はないのでは? 」とも思いますが、医療費助成制度があるとはいえ、すべての費用が無料になるわけではありません。助成内容は各自治体によって異なりますが、小学生になると一部自己負担金が発生したり、入院費のみ助成対象になったりと、子供の年齢が上がるごとに自己負担の割合が増えていく場合があります。
また、助成対象となるのは健康保険適用の治療のみとなっているため、例えば入院した場合、個室を利用すれば個室代が別途掛かってきます。パパママが深夜も入院に付き添って寝泊まりをすればパパママ用のベッド代も必要になってきます。その他、保険適用外の先進医療の治療を行った場合にも助成対象にはならないため、すべて実費として請求されることとなります。
医療保険に加入していると、一時金や、入院・通院のたびに費用保障があるため、助成対象外の費用はこちらでカバーすることができます。また、先進医療の治療費をサポートしてくれるようなプランもあります。子供の医療費は、医療費助成制度があるため大人ほどは掛かりませんが、万が一の際には、ある程度の費用が掛かることは念頭に置いておいた方が良いでしょう。それを踏まえ、月々保険料を支払って備えるのか、万が一のために貯金をしておきそこから賄うのか、はそれぞれの家庭で話し合ってみてください。
子供向け個人賠償責任保険
子供の保険の中で、加入をおすすめしたいのは「個人賠償責任保険」です。どういった保険かというと、子供が他人の物を壊してしまったり、人に怪我をさせてしまったりした際、その時に掛かった損害賠償費用を保障してくれるものです。火災保険や自動車保険の特約として付いていたり、クレジットカードに付帯する場合もありますが、子供の過失で損害賠償を求められるケースが増えてきたため、単独で加入できる個人賠償責任保険が増えてきました。
保険料は月々数百円と非常に払いやすい金額となっており、それでも1億円を超える補償額の保険も登場しました。契約内容や保険会社によっては上限が無制限というものもあります。個人賠償責任保険はひとつ加入しておけば、基本的には家族全員が保障対象となるため、パパママが加入している保険に既に特約として付帯されていないかを確認しておきましょう。複数加入していても保障額が増えることはないので、もし複数加入している場合には、家庭に最も適したものを選んでひとつに絞る方が懸命です。ではこの個人賠償責任保険ですが、具体的にどんなシーンで適用されるのか、をご紹介しましょう。
子供がお店の展示品を壊してしまった…
子育て中のパパママは皆さん体験していることですが、子供は気になる場所には一目散に走っていき、すぐに手を伸ばして触ろうとします。筆者自身も、クリスマス時期に子供とショッピングモールを歩いていると、各所に飾られたクリスマスツリーのキラキラしたオーナメントを子供が何度も何度も触ろうとして、無理に引っ張って落としてしまわないか、ヒヤヒヤしながら見張っていました。同様のケースはどんな場所でも考えられます。「弁償します」で支払える範囲であればよいのですが、もしそれが数十万~数千万という高価な展示品だったら…と考えると怖いですよね。子供向け個人賠償責任保険はこういった場合も補償してくれます。
子供が路上で高級車を傷つけてしまった…
子供と車に関する話はよく耳にします。「子供がボールをぶつけてミラーを壊してしまった」、「車のドアを子供が勢いよく開けて、隣の車にぶつけかってへこんでしまった」、「自転車で駐車中の車に当たってしまい、傷をつけてしまった」など、日常生活の中で誰もがありえるパターンです。ちょっとした傷なら…と甘く見てはいけません。海外の高級車などは部品や塗料が特殊な場合が多く、ちょっとした傷でも修理代が何十万と掛かることは珍しくありません。
パパママが一緒にいれば注意を払って未然に防ぐこともできるかもしれませんが、子供が大きくなり、子供だけで遊ぶようになればその危険はさらに増すでしょう。「注意してね」と言っても、遊びに夢中になっている子供は周りが見えなくなるものです。だからといって、外で遊ばせないわけにはいかないため、何かあった時に対処できるように子供向け個人賠償責任保険に入っておくと安心ですね。
自転車で人を怪我させて1億円の賠償になったケースも
平成20年9月22日に起きた実際の事故です。当時小学校5年生だった少年が自転車に乗って坂道を下っていたところ、出くわした女性に正面衝突しました。事故にあった女性は一命は取り留めたものの意識は戻らず、それ以降寝たきりの状態が続いています。この事故による損害賠償訴訟で、少年の母親に約9500万円の損害賠償が命じられたがニュースがありました。
自転車による事故の同様のケースは実は多くあり、個人賠償責任保険に入っていなかったために高額賠償に対応しきれず、自己破産に至ることも少なくありません。こうした中、全国の自治体で、自転車保険の加入を義務付ける動きが加速しています。現在は16都府県の自治体において、自転車保険への加入が義務化、もしくは努力義務化が始まり、他の自治体でも導入が検討されはじめています。
元気でヤンチャな子供の万一に備えて入るケースが増えている?
このような事例を紹介すると、いつどこで何があるかわからない、と不安に感じてきますよね。だからと言って子供の遊び場を制限したり、常にパパママが付き添うということは現実的に不可能です。それに、子供には元気いっぱいのびのびと遊んでほしい、というのがパパママの本音でしょう。日々の教育の中で、基本的なルールやこれをやったら危ないよ、ということは子供に伝えた上で、それでも回避できない万が一の事態に備えて「子供の個人賠償責任保険」を検討するパパママは多くいるようです。個人賠償責任保険は月々の負担も多くは掛からないため、子供はもちろん、家庭を守るという意味でも加入しておくと安心です。また、分譲マンションにお住まいの方は管理組合で個人賠償保険をマンションの住民が使えるように契約してくれているケースも多いので、マンションの管理組合に聞いてみるのがおすすめです。他にも、戸建ての方でも火災保険や自動車保険に知らない間についていることも多いので、証券をチェックしてみてください。
まとめ:学資保険は家庭次第、医療保険は個人賠償がセットになったものがオススメ
子供にまつわる保険を大きく3つ紹介しました。学資保険については、目的によって返戻率は変わるものの「強制的に貯蓄される」という点が特徴なので、「手元にお金があるとすぐに使ってしまって貯まらない」というパパママであれば、検討しても良いかもしれません。返戻率によっては少し増えて戻ってきます。ただし、途中解約のリスクも忘れずに、無理のない範囲で月々の保険料を検討してみましょう。
子供向けの医療保険については、月々1000円以下で、医療保険と個人賠償責任保険がセットになったものも増えてきました。医療費助成制度があるため、医療保険に高額な保険料をかける必要はないと思いますが、入るのでれば、個人賠償とセットになっているものの加入をおすすめします。個人賠償責任保険に入れば自転車保険もカバーされるため、自転車保険に別途入る必要もなくなります。
さまざまなリスクに備える保険ですが、単独で考えるよりも、家庭に必要なものをすべて洗い出し、総合的に考えたほうが無駄がなくなるはず。焦って目の前の保険に取り敢えず入るのではなく、現状整理をしてみることをおすすめします。子供の将来のことをじっくり考えて「何が必要か? 」をパパママでしっかり話し合いましょう。その上で、「学資保険は単独で、医療保険の保障内容は最低限に留め、個人賠償だけは特約をつけよう」など、それぞれの家庭に合った最適な保険を選び、家族をしっかり守って行きましょう。
※この記事の情報は2021年2月現在のものとなります。