シュタイナー教育とは? 幼児期の教育内容やモンテッソーリ教育との違いを解説
目次
幼児期におけるシュタイナー教育
幼児教育におけるシュタイナー教育も特徴です。シュタイナー教育では知的な遊びは子供の世界に持ち込むべきでなないと考えています。ここでいう知的な遊びとは絵本や知育などを指します。
テレビは禁止・おもちゃは木や石など自然素材
シュタイナーは子供にとって理想的なおもちゃについて次のように述べています。
子どもが4歳、5歳さらに6歳、7 歳までの素朴な思考において(中略)ハンカチで形作られた人形、つまり上に頭があり、おそらく目としてインクのしみがついているものが与えられます。この人形において、子どもが理解できる、また子どもが愛着をもつことのできるすべてがあるのです。
この考えから精巧な人形やプラスチック製のおもちゃは与えず、子供がふれるおもちゃは石や木、布といった自然素材のものを用います。またシュタイナー教育では子供の心と身体を育むためには静かな環境づくりが重要だと考えています。そのためテレビを見せることもありません。
絵本は読まず早期教育はしない
子供の発達段階にそぐわないため、幼児期に文字や数字を教えません。また絵本や紙芝居の読み聞かせも行わず、子供たちにはシンプルなお話のみを聞かせます。絵がない話を聞くことで、子供自身が頭の中で物語のイメージを膨らませてそれが想像力を養い、心の成長につながっていきます。
自由遊びの時は、大人が干渉せずに遊ぶ内容や遊び方はすべて子供に任せます。遊び道具はぶらんこや木馬、羊毛をくるんだだけのシンプルな人形、色鉛筆、スカーフなどさまざまです。子供たちは自分で遊ぶ場所や遊び道具を決定し、遊びの世界を自由に創造します。
同じ生活リズムをくり返す
シュタイナー教育では、決まった生活リズムをくり返していくことが、子供の心の調和と安定につながると考えています。そのため毎日の生活リズムを作ることも重要視しています。例えば、月曜日は粘土遊び、火曜日はお話、水曜日はお絵かき、木曜日はお散歩、金曜日は歌唱劇という風に遊ぶ内容を決めています。
シュタイナー教育とモンテッソーリ教育の違い
シュタイナー教育と同様に、海外発祥で注目を集めているものに「モンテッソーリ教育」があります。モンテッソーリ教育は、イタリアの医学博士・幼児教育者である『マリア・モンテッソーリ』によって提唱された教育方法です。モンテッソーリ教育は「子供には、自分を育てる力が備わっている」という「自己教育力」の考え方があり、子供の自主性を尊重しています。
シュタイナー教育もモンテッソーリ教育も子供の自由や自立を重視していますが、そのアプローチの方法は大きく異なるのです。例えばモンテッソーリ教育では、ボタンと穴のついた二枚の布を「教材」として使いますが、シュタイナー教育では実際に服を脱いだり着たりすることでボタンの使い方を学ばせます。またシュタイナー教育では知育などは使いませんが、モンテッソーリの教育施設「子どもの家」では、パズルやカードなどの知育的な遊びがあり、それを子供たちは自由に遊べます。
シュタイナー教育 | モンテッソーリ教育 | |
---|---|---|
提唱者 | ルドルフ・シュタイナー 哲学博士、教育学者、著作家、人智学者、ゲーテ研究家、講演家 |
マリア・モンテッソーリ 医学博士、幼児教育者、科学者 |
目的 | 自由・自立を重視。 知性だけではなく、生命力、肉体、感情など全体としてバランスがとれた自由人を育てることを目的とする。 |
自主性・自立を重視。 責任感と他人への思いやりを身につけ、常に学び続ける人間に育てることを目的とする。 |
成長過程の捉え方 | 7年の周期で「体」「心」「頭」が成長し、それぞれにあった教育を展開。 | 幼児期は「言語の敏感期」や「秩序の敏感期」「感覚の敏感期」などにわけられ、それぞれにあった教育を展開。 |
教師の役割 | 「権威」の象徴として子供のお手本となる。 | 子供の意思を尊重し、サポート役となる。 |
教育の特徴と教育法 | 12年間の一貫教育 「フォルメン」「オイリュトミー」「エポック」といった独自の教授法 |
3学年合同の縦割りクラス編成 少人数制 教科の選択制 |
教育を受けた著名人 | 斎藤工(俳優) ミヒャエル・エンデ(作家) 村上虹郎(俳優) サンドラ・ブロック(女優) ジェニファー・アニストン(女優) |
藤井聡太(棋士) バラク・オバマ(元米大統領) ビル・ゲイツ(マイクロソフト共同創業者) ラリー・ペイジ(Google共同創業者) セルゲイ・ブリン(Google共同創業者) ジェフ・ベゾス(Amazon共同創業者) マーク・ザッカーバーグ(Facebook共同創業者) |
日本にある学校数 | 9校(NPO法人など含む) ※幼児施設…61校 |
3校(NPO法人など含む) ※幼児施設…全国に多数 |
シュタイナー教育の目的は「人間形成」にある
子供の個性や多様性が重要視される昨今、人間学に重きを置いたシュタイナー教育に興味を持つ人々が増えています。シュタイナーの幼児施設が近隣に無く、家庭でシュタイナー教育を行おうと考えるパパママもいるかもしれません。ですが物や情報にあふれている現代において、シュタイナー教育を完全に実践するのは困難です。「テレビを見せない」「絵本を読まない」「天然素材のおもちゃだけを与える」などに固執しすぎてしまうと、本来の目的を見失ってしまいます。あくまでシュタイナー教育の目的は、子供の個性を重視して軸のある人間を育てることです。こちらで紹介したシュタイナー教育を、まずはできる範囲で取り入れてみてはいかがでしょうか。
文/あおの