育児介護休業法とは? 短時間勤務や罰則の有無・改正ポイントを解説
目次
育児介護休業法とは?
育児介護休業法とは、育児や家族介護と仕事を両立しやすい環境を作れるようにした法律で、前身となる「育児休業等に関する法律」が平成4年(1992年)に成立し、平成11年(1999年)に現在の「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(略称:育児介護休業法)となりました。
最近では介護をしながら仕事をしているという人も少なくありませんが、仕事か介護のどちらかを選ぶのではなく、不当な扱いを受けることなく仕事と介護、仕事と育児のどちらも選び両立できることを目的としています。
育児介護休業法は、少子高齢化を受けて改正を繰り返しており、労働者に関する法律の中ではとくに改正が多い法律です。パパママの生活に直結することも多いため、よく内容を理解しておきましょう。
育児介護休業法は労働者・企業・国にメリットがある制度
育児介護休業法は、働き手だけがうれしい制度ではなく、社会や企業にとってもメリットがあります。例えば、育児ができる環境が整えば女性が出産・育児のブランクを気にすることなく活躍し続けることができるため、出生率の増加が期待できます。これは少子化問題に対する解決の糸口となっていくでしょう。女性労働者が増えることで国のマンパワーも確保することができ、ひいては国力の強化につながります。
また、高齢者の増加に伴う介護問題は深刻です。介護サービスの助けを借りつつ、働きながら家族を介護ですることができれば、仕事を辞めずにすむため、介護が終わったとしても働き続けることができますし、企業も雇用の安定化を図ることができるのです。介護や育児をしながら働ける人が増えれば、将来的な税収アップにもつながるでしょう。
育児介護休業法に反する企業は罰則がある
育児介護休業法は、制度を利用する労働者側の立場が弱くなりがちな法律です。そこで利用に際して、労働者が不利益を被らないよう企業に対して罰則が設けられています。 企業が育児・介護休業法の規定に違反している場合、厚生労働大臣名義で勧告(公的な注意)が行われます。さらに勧告を受けても企業が従わなかったときは、企業名を公表することがあります。
また、厚生労働大臣およびその委任を受けた都道府県労働局長が、育児介護休業法に関して報告を求めることがあります。この報告の求めに対して、報告をしない、または虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料に処することとされます。
育児に関する制度と改正ポイント
子育てをしながら働くパパママも増え、育児介護休業法の改正が2017年10月に行われました。2017年10月の改正以前は育児介護休業法の対象は、法律上親子関係のある実子・養子の育児を行っているパパママのみが対象とされていました。しかし法改正では対象となる範囲が拡大、特別養子縁組の看護期間中の子供や、養子縁組里親に委託されている子供など、法律上親子関係に準じる関係にまで対象が広がりました。
育児介護休業法で定められた育児に関する制度には以下のようなものがあります。
- 育児休業制度
- 短時間勤務制度
- 所定外労働の制限
- 時間外労働の制限、深夜業の制限
- 子の看護休暇制度
育児休業制度
これまでの育児休業制度では、子供が1歳の時点で保育園に入れない場合は1歳6ヶ月まで育児休業を延長することが可能でしたが、改正後は1歳6ヶ月の時点でも保育園に入園させることができない場合、2歳になるまで育児休業を再度延長することができるようになりました。
またこれまで育児休暇を取得するにあたり、「子供が1歳以降も雇用継続の見込みがあること」とされていた条件が「子供が1歳6ヶ月になるまでに、契約期間が満了しないこと」となり、パートタイマーや契約社員など、有期雇用者に向けた条件も緩和されました。つまり今までは子供が2歳になるまでの契約見込みがなければ育児休業が取れなかったところ、1歳6ヶ月になるまで契約見込みがあれば育児休業を申請できます。
ただし、育児休業を取得するには他にも満たすべき条件がありますので、育児休業を申請する場合には確認が必要です。
短時間勤務制度(時短勤務)
3歳未満の子供を持つパパママが、子供を育てながら働けるように短時間の勤務にすることができる制度のことを「短時間勤務制度」と言います。時短勤務と言った方がわかりやすいですよね。時短勤務を希望する場合、企業へ申請すれば所定労働時間を短くしてもらうことができるのです。この制度はママだけの権利ではありません。条件を満たして短時間勤務を希望すればパパでも利用することができます。
時短勤務は原則1日6時間としており、残業についても拒否することができますが、勤務時間が短いため給与も下がってしまう可能性があることを事前に知っておきましょう。給与は下がってしまいますが、年金保険料については時短勤務になる前の金額を払っているとみなして計算されますので安心してください。ただし、自動で計算してくれるわけではなく、企業を通して年金事務所に申請することが必要となりますので、きちんと申請できているか確認しておくことをおすすめします。
所定外労働の制限
3歳未満の子供を育てながら働く労働者が申請すれば、企業は所定労働時間を超えて働かせることはできません。前にも述べたように対象となる子供の範囲が拡大されているため、法律上親子関係に準じる関係であればこの申請をすることができます。
時間外労働の制限・深夜業の制限
小学校に入るまでの子供を養育している労働者が申請すれば、1ヶ月で24時間、1年間で150時間を超える時間外労働をさせることはできません。また、深夜の業務を課すこともできなくなります。
子の看護休暇制度
例えば、子供が風邪をひいて病院へ連れていきたい時などに、これまでは1日単位で1年間に最大5日間まで「子の看護休暇」として休みを取得をできていました。しかし、育児介護休業法改正後の現在は、半日単位で1年間に最大10日間(子供2人の場合は20日間)まで取得することが可能となりました。特に保育園に入園したての頃は、出社後すぐに呼び出しの連絡が来てしまった…ということは日常茶飯事です。予防接種や検診などで午前中だけ仕事に出れない場合なども、丸1日休まずに半日単位で休暇が取れるのはとても助かりますよね。
2021年~看護休暇が1時間単位でも取得可能に
病気やけがをした子供の看護をする場合に取得できる、子の看護休暇。2019年12月、厚生労働省は現在半日単位としている子の看護休暇を1時間単位でも取得できるよう緩和する案をまとめました。これにより、2021年1月からは1時間単位での取得が可能になる見込みです。さらに柔軟な制度に変わることで、フレキシブルな働き方ができそうですね。
男性の育児参加を促すためにできた育児目的休暇
2017年10月の育児介護休業法改正時には、育児に関する新しい休暇制度として「育児目的休暇」が新設されました。これは特に男性の育児参加を促すための制度で、子供の入園式や卒園式などの行事に参加したり、看護ではなく出産に伴う育児のために休むことができる制度です。ただし、この育児目的休暇は法的な決まりは特に定められておらず、各企業毎の裁量に委ねられている努力義務となっています。
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