離婚時に子供の親権を獲得するために知っておくべきこと! 話し合いを円滑に進めるには?
目次
親権とは?
親権(しんけん)とは、未成年以下の子供の利益を守るための、親の責任や義務のことです。離婚する時は、どちらの親が子供の親権者を持つかを決めなければいけないと民法で決まっています。
親権には「身上監護権」「財産管理権」の2種類ある
親権は2つの権利に分かれています。子供の保護や教育に関する権利が「身上監護権(しんじょうかんごけん)」、子供の財産管理や契約書・訴訟に同意する権利が「財産管理権」です。
身上監護権
身上監護権は、監護権とも呼ばれます。この監護権には、4つの権利があります。
- 居所指定権:親が子供の居所(住む場所)を指定する権利。
- 懲戒権:親が子供の教育に必要な範囲で懲戒、しつけをする権利。
- 職業許可権:子供が職業(アルバイトも含む)を営む時に親がその職業を許可する権利。
- 身分行為の代理権:子どもの身分法上の行為の同意・代理権。(15歳未満の子供の氏変更、相続の承認放棄など)
財産管理権
子供の通帳や預金などを管理する権利、義務になります。財産管理権を持っている親は、子供の財産の管理を行ったり、財産に関する法律行為を代わりに行ったりします。
親権を決める時の流れ
親権を決める流れは4つです。
- 協議離婚:夫婦2人で親権条件について決める方法です。
- 離婚調停:協議離婚で親権条件が決まらない場合、家庭裁判所で調停を申し立てます。調停委員と裁判官が介入して話し合いを進める方法です。
- 離婚審判:離婚調停で親権者が決まらない場合、裁判所に親権者を指定してもらう方法(親権者指定の審判手続)です。納得がいかない時は、2週間以内に不服申立ができます。
- 離婚訴訟:調停で親権が決まらず、親権者指定の審判手続に不服がある場合、訴訟を起こして親権者を決める方法です。
親権の話し合いをする時に知っておくべきポイント
親権は離婚届を出す前に決めるのが一般的
離婚届に親権者を記入する欄があるため、離婚届を出す前に親権を決めるのが一般的です。しかし離婚を急ぐあまり、親権や養育費などの取り決めをきちんとせず離婚届を出してしまう、勝手に出されてしまうケースもあります。
一度離婚が成立してしまうと、その後に親権変更をするには、家庭裁判所へ親権変更の調停又は審判を申し立てが必要です。離婚後では面会頻度、金銭的な話し合いに相手が話し合いに応じてくれず、後悔するケースもあります。
夫婦で話し合いをせず、勝手に離婚届を出されることを防ぐ方法として「離婚不受理申出」があります。これを役所に提出しておくと、離婚不受理申出の取り下げ申請をするまでは、勝手に出された離婚届けが受理されることはありません。
夫婦で話し合う時はとにかく冷静に
日本の離婚の90%が協議離婚です。協議離婚では夫婦二人だけで話し合うため、早く離婚が進む一方で、感情的になりトラブルが起きるケースもあります。離婚について話し合う時は、とにかく冷静に話しを進めることを心掛けましょう。話し合いが上手く進まない時は、一旦中止し、冷静になってから再度話し合いをするようにしましょう。
お互い感情的になると何が起きるかわからないので、事前に安全の確保や子供への影響を考えて以下のような準備をしておくと安心です。
- 何かあった時、避難できる場所を確保する。(実家・友人宅など)
- 逃げることを想定して、軽めの荷造りをしておく。(印鑑、婚前の通帳など)
- 子供は事前に預けておく。(感情的な親の姿は、子供のトラウマになることもあります。)
- 話し合いの場所は片付ける。(感情的な時に手元の物があると、投げつけるなどの危険があります。)
子供の年齢によっては意向を聞く
子供が小さい場合、どちらも親権を欲しがるケースが多くなります。調停又は裁判になった時、子供が小さい(0歳~3歳)場合は原則母親に親権が渡りますが、子供が15歳以上であれば、本人の意向を聞くのが法律上の義務になっており、子供が選ぶ親権者を尊重されます。
10歳くらいになると、どちらの親と暮したいなどの意向が出てくる子供もいます。離婚協議の際、子供が10歳以上であれば、子供の意見を聞いて親権者を決めるのも一つの方法です。ただし、10歳以降でも子供の性格によっては、親権者を選ぶことがストレスに感じることもあるので、子供の性格を考慮して意見を求めましょう。
円満に親権を決めるために知っておくこと・相手に伝えること
どちらも親権を希望すると、話し合いはなかなかスムーズに進みません。親権決めは「どちらと暮らすのが子供にとって幸せか」という答えの出しにくい話になります。親権を取るために上手く話を進めたい場合、これから紹介することを知っておくと役立ちますよ。
交流面会権があること
面会交流権は、親権(監護権)を持たない親が子供と面会したり一緒に過ごしたり、親子としての交流を持つ権利です。法律で親の権利として認められており、親権者が一方的に面会を拒否することはできません。親権者が子供と親権を持たない親の面会をもし一方的に拒否すれば、裁判所からの指導や制裁金の支払いが発生したり、親権の変更に繋がることもあります。
ただし子供に悪影響があると考えられる場合、面会交流を拒否・制限できます。例えば、決められた日時以外で勝手に子供に会う、暴力を振るう可能性がある、薬物依存、アルコール依存症などです。
親権を取った後の状況(親権を取ることが現実的かどうか)
今まで仕事を中心に生活していた、育児に関わって来なかった相手が親権を希望してきた場合、現実的に子育て・仕事・家事をこなしていけるか具体的に考えてもらいましょう。例えば、子育て、家事のTodoリスト、子供の病気にかかった年間日数などを紙に書きだすなどしてイメージしてもらう方法もいいですね。具体的なイメージを持ってもらうことで、親権を取るのではなく、面会交流で休みに会う方が現実的だと考えてくれる可能性もあります。
親権が取れる可能性の高さ
協議離婚から調停、訴訟になってしまった場合、約9割の親権は母親に指定されています。父親が親権を取るケースは数が少ないです。ほかに親権者に指定されるには、以下のようなポイントで判断されます。
- 子供への愛情(子供と過ごした時間が長い)
- 経済的安定、心身が健康であること
- 子育てに十分な時間がさけるか
- 今までの子供との関わり
- これからの子供との関わり
こうしたポイントをふまえ、お互いの親権を取れる可能性を考えておくと、話し合いがスムーズにいくこともあります。お金をかけ調停や訴訟をしても親権を取れる可能性が低いの場合、子供ときちんと会える条件なら父親が親権を諦めるケースもあります。
親権と監護権を分けて取る方法もあること
「親権をとる」ことにお互いにこだわりがある場合、親権の「身上監護権」と「財産管理権」をそれぞれが取る方法もあります。どうしても親権者が決まらない合意しない場合にこの方法を使うことがあります。
ただし、後に財産管理者と監護権者が対立することがあると、子供の成長に悪影響を及ぼす恐れもあるため、このケースが認められることは稀です。
話い合いの時に夫婦で決めるべき内容とルール
離婚後について話し合う時に、子供に関して夫婦で決めるべき内容やルールは次のようなものがあります。
- 面会の頻度(月に何回か、宿泊の不可、遠出の不可など)
- 連絡方法はどうするか
- 面会時間(何時間か)、場所
- 日時は誰が決めるのか
- 子供の受け渡し方法
- 学校行事への参加はできるか
- 予定変更の場合はどうするか
- 祖父母の面会の不可
- 相手の悪口を子供に言わない
- 項目を違反した場合どうするか
上記以外にもそれぞれの夫婦で必要な項目があるかと思いますが、特に面会交流権については具体的に話し合っておくと、離婚後にトラブルを避けることに繋がります。面会交流で決めておく項目によっては、細かく決めすぎないで「その都度相談する」などをルールに入れるのもいいでしょう。
あまり細かく決めすぎると、お互いルールを守るのが大変になったり、子供にルールを押し付けることにもなりかねません。例えば、面会回数を「月に2回」ではなく「月に2回まで」とし、子供の体調不良などで月の面会回数が減ってしまっても問題ないことを記載しておくなど、緩和条件で決めた方がいいこともあります。
他には、「面会時間は午前10時~17時の間で相談して決める」「子供の体調を考慮する」「子供が会いたくないと言ったら無理に会う(会わせる)ことはせず、子供の意思を尊重する」など、子供のことを第一に考えて決めていきましょう。面会交流について決めた内容も離婚協議書に書いておくと安心です。
話し合いで親権者が決まらない時はどうすればいい?
協議離婚で話がまとまらないケースも多くあります。金銭面や子供に関しての条件の合意がなかなか難しい時、どのように対処したらいいのでしょうか。
別居する
冷静に話し合いができない場合、まず別居をしてみるのも一つです。別居することでお互い冷静になる時間ができます。別居をしたころで離婚はせず、やり直す道を選ぶ夫婦もいますし、冷静に話し合いができるようになり、納得のいく条件で離婚ができるなどのメリットがあります。
話し合いを進めたい場合は「弁護士に相談する」
親権や離婚条件を夫婦の話し合いだけでは決まらない場合、弁護士に相談する方法もあります。話し合いが進まない時は弁護士に相談することで、法的な離婚条件を提示してもらえ、具体的な話を進めやすくなります。東京都など自治体によっては無料の法律相談ができる場合もありますよ。利用の条件が合えば、法テラス(日本司法支援センター)で1回30分、3回まで無料で相談することもできます。
夫婦の話し合いで決まらない時は「離婚調停を申し立てる」
夫婦2人ではどうしても話がまとまらない時は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、裁判官と調停委員に間に入ってもらいます。夫婦の待合室は別で、調停での面会もそれぞれ交互です。トイレや行き帰りに顔を合わせる可能性はありますが、基本的に相手と顔を合わせることはありませんので、夫婦2人で話合うよりも冷静に話進めることができます。調停は手続きも多く、時間と精神的負担も大きいため手続きなどを弁護士に依頼することもできます。
調停でも決まらない時は「離婚裁判を起こす」
離婚調停や離婚訴訟には、時間とお金がかかります。調停を弁護士に依頼する場合は、70万~100万円の費用が必要とされています。個人で行う場合は、およそ2700~4000円です。
調停を申立した夫婦によりますが、一般的に調停期間は、申立してから2~6ヶ月程度で終わることが多く、場合によっては1~2年ほどかかることもあります。調停の終了期間は、次のような要素で異なってきます。
- 調停に関わる人間の日程調整の都合
- 話し合う項目の多さ、資料準備の早さ
- 離婚すること、親権についての意見の違い
2と3の要素では、双方が話し合う姿勢を見せた場合は、条件のすり合わせのため期間が長引きます。一方、事前にある程度、条件が決めてあれば調停の期間は短くなります。双方が譲らない場合は早期不成立になり、離婚訴訟に移行していくのが一般的です。離婚調停期間は平均11.6ヶ月、弁護士費用は100万〜200万円ほどです。
配偶者が話し合いに応じてくれない時の対応策は?
相手が離婚をしたくない場合やどうしても親権を譲りたくない場合は、別居中に一方の親が勝手に子供を連れ去ったり、話し合いに応じてくれなかったりするケースがあります。子供を連れ去り親権の話し合いに応じなくなると、お互いの納得のいく離婚は難しくなります。勝手に連れ去った場合でも、親権を決める際の「生育環境の現状維持」や「監護実績」が相手に認められ、親権を決める時の条件を有利にしてしまうケースもあります。
子供を連れ去られた時の対策としては、「子の引渡し調停」「子の引渡し審判」があります。「子の引渡し調停」を家庭裁判所に申立てることができます。「子の引渡し調停」は裁判官と調停委員に立ち会ってもらい、相手と話し合う解決方法です。「子の引渡し審判」というものもあり、こちらは裁判官がそれぞれの言い分を聞き、どちらに子供を戻すか決定する手続きです。
話し合いで決まったことは離婚協議書に書き残しておこう
親権を含めて、決めた離婚条件を守ってもらえるか心配な場合は、「離婚についての約束」を離婚協議書として書面化しておくと安心です。離婚協議書にした項目が守られなかった場合、裁判所に訴えを起こすことができます。内容を守るよう裁判所の指導や、離婚協議書に違反した場合の取り決めがあれば、従うよう判決が出されます。
離婚協議書の書き方や、項目を詳細に決める場合や最終的な確認は、弁護士などの専門家に相談した方が安心です。また、離婚協議書を公正証書にすることもできます。離婚する時に決めたことを公正証書にしておけば、養育費の不払い時に 強制執行で給与を差押えることができます。公正証書の作成は公正役場で行います。公正証書の内容に強制執行認諾文言が明記されていないと、裁判所を通さず強制執行ができないケースがあるので、公正役場に行く前に専門家へ相談しておくと安心です。
まとめ
離婚後に後悔しないためにも、離婚届を出す前に親権を含め離婚条件について、きちんと冷静に話し合っていくことが必要です。離婚協議の内容は離婚協議書や公正証書にしておくと、後で問題が発生した時も、有利に対応しやすくなります。親権について話し合いが進まない時は、弁護士相談の利用や調停などの制度を使うことも考えましょう。