幼稚園教育要領とは?改訂内容をわかりやすく解説!
幼稚園教育要領って何? どんな制度?
「幼稚園教育要領」について詳しく知っているパパママは多くないでしょう。幼稚園教育要領は幼稚園で日々行われている子供たちの幼児教育の基準になります。基本的な内容から解説していきます。
幼児教育の教育基準や方針が定められた法令
幼稚園教育要領とは、小学校入学前までの子供たちが日本全国どこに住んでいても同じ水準の教育を受けられるよう、学校教育法に基づいて定められた教育基準です。幼稚園教育要領には以下の事項について記されています。
- 幼稚園での教育における基本的な方針
- 預かり保育や延長保育についての方針
- 幼児期の終わりまでに身につけて欲しい資質や能力
- そのために必要な教育環境や教育課程
最新の幼稚園教育要領は2018年に施行
幼稚園教育要領は1956年に当時の文部省により制定され、最新版は2017年3月に改訂、2018年4月に施行されました。また同時に保育園の「保育所保育指針」、認定こども園の「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」、小・中学校の「学習指導要領」も改訂されました。幼稚園・保育園・認定こども園の新指針・要領は2018年4月、小学校の学習指導要領は2020年4月から実施され、中学校の学習指導要領も2021年4月から実施される予定です。これらの教育指導方針が一斉に改定されたのは、幼児から中学校を卒業するまでの教育に一貫したコンセプトを持たせる目的があってのことでした。
新しい幼稚園教育要領の内容は?
新たに改訂された幼稚園教育要領には、具体的にはどのような内容が記されているのでしょうか。これまでの幼稚園教育要領と比べて幼稚園での教育環境に変化があるのか、どのような点が改訂されたのかなど気になるポイントを解説します。
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新しい幼稚園教育要領の特徴1:幼稚園・保育園・認定こども園で幼児教育の内容が統一
最近は多くの子供たちが就学前に幼稚園・保育園・認定こども園のいずれかに通っています。幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省、認定こども園は内閣府と管轄が異なり、これまでは各省がそれぞれで教育方針・保育方針を定めていました。しかし「幼児教育から中学校卒業まで一貫した教育が受けられるように」、「どの施設に通っても同じ水準の幼児教育、保育環境が保証されるように」とのねらいから、幼稚園・保育園・認定こども園の幼児教育基準が統一されました。新しい幼稚園教育要領でもこの考え方に基づいた教育方針が示されています。
2017年3月には幼稚園の教育の指針となる「幼稚園教育要領」だけではなく、保育園「保育所保育指針」、認定こども園の「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」も同時に改訂されています。保育所保育方針については下記の記事で詳しく解説しています。
新しい幼稚園教育要領の特徴2:「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を明確化
改訂された幼稚園教育要領では、幼児期の終わりまでに身につけておきたい資質や能力についても明確に記されました。幼稚園での生活を通じて以下の3つを柱とした力を身につけることを目指しています。
- 知識及び技能の基礎
- 思考力・判断力・表現力等の基礎
- 学びに向かう力、人間性等
これらの力を身につけるためには、どのような幼稚園生活を送ればいいのか、子供の指導の際に留意すべきポイントを下記の10項目にまとめました。
- 健康な心と体
- 自立心
- 共同性
- 道徳性・規範意識の芽生え
- 社会生活との関わり
- 思考力の芽生え
- 自然との関わり・生命尊重
- 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
- 言葉による伝え合い
- 豊かな感性と表現
上記ポイントは社会生活のなかで必要となる思考力や判断力、コミュニケーション力の基礎となるもので、幼稚園生活での遊びや体験を通して身につけることが新たな幼児教育の基準とされています。
新しい幼稚園教育要領の特徴3:幼稚園での教育を小学校教育と連携させる
新しい幼稚園教育要領では、幼稚園での生活を終えて小学校への入学を見据えた教育方針についても明確化されました。
- 幼稚園教育を通して創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うことが、小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながる
- 幼稚園教育で育まれた資質・能力を小学校教育で活かせるよう、小学校の教師との意見交換や合同の研究の機会などを設ける
このように、幼稚園と小学校が教育で連携することが新しい幼稚園教育要領で示されています。幼稚園と小学校では子供の生活や教育などが異なるため、先述した「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の具体的なイメージも異なるケースが多くあります。そのため幼稚園教育と小学校教育を別々の物と考えるのではなく、幼稚園教育で学んだことを小学校教育に活かせるよう、お互いに協力し子供の姿を共有し合うことが子供たちの成長につながるとされます。
筆者の子供が通う幼稚園では、卒園後に子供たちがスムーズに小学校生活に入れるよう幼稚園と小学校が合同で運動会や音楽会を開催したり、入学前の体験入学や給食試食会などの交流を行ったりしています。こういったイベントはパパママにとっても小学校での生活をイメージできるいい機会ですね。
新しい幼稚園教育要領の特徴4:預かり保育など子育て支援を強化
「預かり保育」や「一時預かり」は多くの幼稚園で実施されるようになりましたが、これらについても幼稚園教育要領の第3章「教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動」で触れられています。これは預かり保育の実施を促すものではなく、「預かり保育中にどのような教育をするのか、しっかり計画を立てて行うように」といった内容です。
預かり保育や一時預かりなどの教育時間外の活動は、パパママのニーズや地域の実態に応じて希望者を対象に行う教育活動で、活動内容は園によって異なるのが現状です。しかし、幼稚園教育要領の改訂によって留意すべき4点が明確化されました。
- 預かり保育で過ごす子供の心身の負担に配慮する
- 家庭や地域での幼児の生活も考慮する
- 地域の様々な資源を活用しつつ、多様な体験ができるようにする
- 家庭との緊密な連携を図るようにする
幼稚園への入園当初や進級当初は緊張したり不安になったりする子供も多く、そのような中でも一人ひとりが心身の負担が少なく、落ち着いて過ごせる場を提供することが求められます。そのためには幼稚園とパパママの連絡を密にし、子供の生活の様子も把握しておくことが大切です。
また、新しい幼稚園教育要領では「地域における幼児期の教育のセンターとして役割を果たすよう努めること」とも記されています。子育ての支援のためにパパママや地域の人々に施設を開放したり、幼児期の教育に関する相談に応じたり、パパママ同士の交流の機会を提供したりすることが求められています。幼稚園・教師・パパママ・地域の人々が連携し、社会全体で子供を育てていくことが大切ですね。
新しい幼稚園教育要領の特徴5:障害のある幼児の指導などへの特別な配慮
改定後の幼稚園教育要項では、障害のある幼児の指導など特別な配慮が必要な子供たちへの指導についても触れられています。障害のある子供の場合、パパママや福祉施設、医療機関等と連携し「個別の教育支援計画」の作成・活用が必要とされます。また、引っ越しや転勤などで海外から帰国した子供、パパママが外国籍の子供は早期の日本語の習得が困難なため、子供たちに合わせた指導方法を行うよう定められました。
幼児教育で育む資質と能力とは?
幼稚園での幼児教育で身につけたい資質と能力として、新しい幼稚園教育要項では以下の3点が示されています。
- 知識及び技能の基礎:遊びを通して豊かな経験をし、何かに気づいたり、理解したり、感じたり、何かができるようになったりする力
- 思考力、判断力、表現力等の基礎:遊びを通してできるようになったことや気づいたことを考えたり、試したり、表現したり、工夫したりできる力
- 学びに向かう力、人間性等:遊びを通していろいろなことに興味や関心をもつことで、意欲・心情・態度が育ち、よりよい生活を営める力
これら3つの力を幼稚園生活のなかで身につけるためには、3つの力をそれぞれ個別で学ぶのではなく、遊びを通した総合的な指導のなかで育めるように努めることが新しい幼稚園教育要項で示されています。一方的に情報を与えるだけの教育ではなく、遊びや体験を通して子供たち自らが「感じ」「考え」「興味を持つ」ことが子供たちの資質と能力を育む機会になります。幼稚園での生活だけでなく、家庭でもこれらを意識してもいいでしょう。
まとめ:幼稚園教育要項は幼児期の教育方針を定めている
幼稚園教育要項について知ることで、子供にどんな方針でどのような幼稚園教育が行われているのか理解できたのではないでしょうか。幼稚園に通い始めた子供たちは、それまでパパママやきょうだい、祖父母など親しい間柄の人と過ごしていた生活から、幼稚園の先生、同じ園に通う子供たち、地域の人たちと関わる生活に変わります。そのなかで新しいことに興味や関心を持ち、他者との関係を学ぶことで視野が広がります。幼稚園教育要項は子供にとって非常に大事な幼児期に適切に子供たちの資質と能力を育むための教育方針を定めています。