子供の中学受験 学校選びや塾選びの基本を知ろう
中学受験の学校選びは私立だけじゃない
子供が小学校に入学すると、今度は小学校の中学受験率が気になりますよね。首都圏、とくに東京23区では、中学受験を経た中学校への進学率は20%以上ですから、中学受験率はそれ以上。地域によっては、進学率が4割を超える地域もあり、漠然と「我が子は私立中学へ…」と考えるママパパも多いかもしれませんね。
実は最近の中学受験=私立中学校の入試だけではありません。1998年から始まった文部科学省による公立中高一貫校教育の推進によって、進路の選択肢が増えているのを知っていますか? ママパパが中学受験をした時代にはなかった公立中高一貫校を中心に、現在の中学受験で選べる選択肢をご紹介します。
中学受験を過熱させた公立中高一貫校の誕生
公立中高一貫校は、1998年6月の学校教育法改正によって設置され、年々増加しながら現在では全国に約200校あります。首都圏には1都6県に26校の都道府県が設置する中高一貫校あり、そのうち11校(うち1校は区立)が東京都内にあります。
公立中高一貫校の魅力は、なんといっても授業料が無料ということ。入学できれば高校受験の必要がないうえに、一般の公立中学校と同様の扱いなので、授業料はかかりません。また、都内の都立一貫校では大学進学率でも高い成果をあげている中学校も多いです。
経済的に私立中学校への進学は厳しいけど、我が子の教育には手をかけたい、という家庭にとって、都立一貫校はとても魅力的な選択肢なのです。
東京都内にある都立または区立中高一貫校(平成31年度)
区分 | 学校名 | 所在地 | ホームページ |
---|---|---|---|
都立 | 白鷗高等学校附属中学校 | 台東区 | 白鷗高等学校附属中学校HP |
都立 | 両国高等学校附属中学校 | 墨田区 | 両国高等学校附属中学校HP |
都立 | 富士高等学校附属中学校 | 中野区 | 富士高等学校附属中学校HP |
都立 | 大泉高等学校附属中学校 | 練馬区 | 大泉高等学校附属中学校HP |
都立 | 武蔵高等学校附属中学校 | 武蔵野市 | 武蔵高等学校附属中学校HP |
都立 | 小石川中等教育学校 | 文京区 | 小石川中等教育学校HP |
都立 | 桜修館中等教育学校 | 目黒区 | 桜修館中等教育学校HP |
都立 | 南多摩中等教育学校 | 八王子市 | 南多摩中等教育学校HP |
都立 | 立川国際中等教育学校 | 立川市 | 立川国際中等教育学校HP |
都立 | 三鷹中等教育学校 | 三鷹市 | 三鷹中等教育学校HP |
区立 | 千代田区立九段中等教育学校 | 千代田区 | 千代田区立九段中等教育学校HP |
2021年度から高校募集を停止する都立一貫校
現在、上記の都立一貫校の中でも併設型と呼ばれる高校の附属中学タイプの5校(白鷗高等学校附属中学校、両国高等学校附属中学校、富士高等学校附属中学校、大泉高等学校附属中学校、武蔵高等学校附属中学校)は高校入試による入学が可能です。どの学校も進学実績がよく人気校のため、中学受験で入学が叶わなかった場合に高校で再度入学を目指す「リベンジ受験」をする人もいます。
ところが2019年2月、東京都教育委員会は中高一貫教育のメリットを最大化するために、2021年度から順次、上記5校の都立中学校で高校募集を停止し、中学での募集を拡大することを発表しました。このため「リベンジ受験」が不可能となり、中学入試での競争率はより上昇するのではないかと予想されます。今後、中学入試の定員がどの程度拡大するのかは東京都教育委員会の発表が待たれます。
都立中学校の中学募集拡大
実施年度 | 学校名 |
---|---|
2021年度から | 富士高校附属中学校・武蔵高校附属中学校 |
2022年度から | 両国高校附属中学校・大泉高校附属中学校 |
未定(2021年度以降) | 白鷗高校附属中学校 |
最先端の教育を体験したいなら国立中学校も
中学受験でもう一つ選択肢としてあげられるのが、国立の中学校です。国立中学校は中高一貫校タイプ、附属の高校に内部試験によって進学するタイプ、小中一貫校で中学校までなどがありますが、どれも受験の必要があります。国立の中学校の多くは、国立大学の教育学部に附属しています。このため、先進的な教育が受けられたり、研究熱心な先生が多かったりと刺激的な授業を受けられるのが魅力。
もちろん国公立ですから、学費は無料です。国立の中学校は進学実績を目的に設立されていませんが、筑波大学附属駒場中学校など、難関大学への高い進学実績を持つ国立中学校もあります。
ただし、こうした国立の中学校は教育学部がある国公立大学の近隣にあるため、数も少なく居住地域によっては選択肢にあげられないことも多いのが残念なところです。また、附属の高校があっても、進学できるのは内部入試による成績上位の生徒のみという学校もあります。高校入試を避けたいと考えているなら、学校選びに注意しましょう。また、大学附属ではありますがほとんどの学校で特別な推薦枠はありません。私立のエスカレーター式の大学附属中学校と違って、大学附属のメリットはほとんどないと考えましょう。
東京都内にある国立中学校
学校名 | 所在地 | 附属高校の有無 | 男女 | ホームページ |
---|---|---|---|---|
お茶の水女子大学附属中学校 | 文京区 | あり(女子のみ) | 共学(高校は女子校) | お茶の水女子大学附属中学校HP |
筑波大学附属中学校 | 文京区 | あり | 共学 | 筑波大学附属中学校HP |
東京学芸大附属竹早中学校 | 文京区 | あり | 共学 | 東京学芸大学附属竹早中学校HP |
筑波大学附属駒場中学校 | 世田谷区 | あり | 男子校 | 筑波大学附属駒場中学校HP |
東京学芸大学附属世田谷中学校 | 世田谷区 | あり | 共学 | 東京学芸大学附属世田谷中学校HP |
東京大学教育学部附属中等教育学校 | 中野区 | 一貫校 | 共学 | 東京大学教育学部附属中等教育学校HP |
東京学芸大学附属国際中等教育学校 | 練馬区 | 一貫校 | 共学 | 東京学芸大学附属国際中等教育学校HP |
東京学芸大学附属小金井中学校 | 小金井市 | あり | 共学 | 東京学芸大学附属小金井中学校HP |
公立の中高一貫校受験はお得だけど狭き門
とても魅力的な国公立の中学校ですが、高い進学実績などを背景に東京都内を中心に受験倍率や偏差値は右肩上がりです。例えば2019年度の都立中高一貫校の倍率を見てみると、多くが倍率が6~7倍と狭き門。受験はすべて同日に行われますから、国立中学校や都立中学校同士を併願することもできません。受験当日に大勢の受験生を目の当たりにして、萎縮してしまう子もいるほどです。
また、都立中学校では一般的な私立中学受験とは異なるタイプの「適性検査」を行います。この「適性検査」は記述式で、思考力や問題解決力などが必要なもの。国語や算数などの勉強ができれば合格するというものではなく、一般的な私立中学校の受験よりも対策が難しいと言われています。合格圏内と言われても、当日に問題との相性が悪くて涙をのむケースもあり、合格の確証が最後まで得られない…というのが公立中学校の受験。このため、多くの子供が私立中学校も併願するのが現実です。この適性検査の問題は、各学校のホームページにも公開されているので、ママパパも見てみてくださいね。
適性検査を取り入れる私立中学校も増加中
高まる公立中高一貫校の受験熱を背景に、従来の私立中学校でも都立中学校との併願を意識して適性検査型の入学試験を実施している学校が増えています。この数は年々増えており、従来では「私立中学校と都立中学校の受験をどちらか選ばないといけない」と言われていましたが、現在では「都立中学校受験に軸足を置きながら、適性試験型の私立中学校を受験しておく」ということができるようになってきました。また、適性検査型の入試を都立中学校の入試よりも早く行う私立中学校もあり、都立中学入試の腕試しに受験するケースも多いです。
中学受験の第一歩は塾選びから
中学受験を考え出したら、まずは「塾に通わせよう」というママパパが多いでしょう。中学受験は、情報収集や学校ごとの傾向などもかなり重要。独学や家庭学習で中学受験を乗り切るのは、かなり厳しいです。いざ塾を検討するにしても、どんな塾があるかわからない…というママパパにざっくりとした塾選びの基本をお伝えします。
学校選びと塾選びの時期
中学受験をすると決めたら、まずはある程度は志望校の方向を決める必要があります。実際に受験する学校を決めるのは、併願校も含めて6年生の秋ぐらいまで余裕がありますが、中学受験の塾のプログラムは通常小学3年生の冬から始まります。もちろん子供の状況によって、変更はあるもののまずは小学3年生の入塾の時点で、子供の学力や家庭の方針などから、国立・公立・私立や難関度など、どんなタイプの学校に軸足をおいて中学受験をするのかを決めておく必要があります。3年生の夏休みが終わるころから、少しずつ近隣の塾の情報を集めておき、いくつか塾の説明会や見学に行ってみたり、子供に各塾が行う模試を受けさせてみることで、ある程度方向性が見えてくるはずです。
志望校によって変わる塾選び
たくさんあるように見える中学受験の塾ですが、以下に上げるような大手の進学塾は志望校によって生徒がすみ分けされています。都内のケースを例に見てみましょう。
まず最上位の難関校を狙えるレベルなら、SAPIXや早稲田アカデミーに通う子が多いです。最上位の難関校を狙う子は、塾のほかに苦手科目には家庭教師をつけたり、別の塾に通うようなケースもあり、子供の負担も大きく中学受験に子供のタイプが「合う・合わない」も大きいでしょう。
難関~中堅の私立受験を考えている場合、オーソドックスな選択肢は最大手である「日能研」です。中学受験といえば…という塾なので、塾が持っている情報量も多いです。一方、都立中学校の受験をメインに考えたいなら「ena」など都立中学校受験対策をうたっている塾が候補になってきます。都立中学校の場合には、その学校周辺にある地元の塾が強いケースもあります。
どんな塾に通っていても、そのときどきで子供の状況が変わったり、塾との相性があったりします。中学受験では小学校6年生になると、長期休みも含めて毎日のように塾に通うことになります。子供にとって合わないと感じたら、無理をせずに塾を変えることも検討しましょう。
入塾テストや模試で特待生を狙う手も
塾に通うとなると、気になるのが授業料などの教育費ですよね。実際に中学受験では、4~5年生では年間40~50万円。6年生になると年間100万円以上の費用がかかると言われています。都立中学校のような公立中学校を受験するにしても、塾に通うケースがほとんどですからやはり経済的余裕が必要です。
そこで多くの塾では、優秀ながら経済的な事情で通塾が難しい子供のために「特待生」制度を持っています。これは、塾で行われる入塾テストや無料の模試などで、とくに成績がよかった子供に対して「授業料を免除」する制度です。生徒は無料で通うことができ、塾は成績がいい子を入塾させることで進学実績を上げることができるというわけです。子供が勉強が好きだったり、優秀だけど経済的に厳しいという家庭は特待生制度を調べてみるのも手でしょう。
まとめ 子供に合った塾と志望校を選ぼう
首都圏のママパパにとって、思った以上に身近な中学受験。最近の中学受験熱の高まりの理由や新しい選択肢である公立一貫校について紹介してきました。一番大切なのは、子供本人の意思ではありますが、ママパパがまずは情報を知っておくことで我が子に合った選択肢を提示できるもの。中学受験の基本のキをおさえて後悔のない選択をしたいですね。