【FP監修】出産にも関係する高額医療制度とは? 対象・申請方法、限度額などを解説

監修者紹介

FP鷲田昌平さん

ファイナンシャルプランナー・証券外務員二種:鷲田昌平さん

兵庫県神戸市出身。高校時代は陸上競技に打ち込み、その後IT企業に入社。2007年~金融業界へ。これまでマネーセミナーの講師を140回務めるお金のプロ。3人のお子さんのパパでもあります。

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高額医療制度(高額療養費制度)とは?

高額医療制度(高額療養費制度)とは

帝王切開で赤ちゃんを出産したママも対象になる、高額医療の支援制度

高額医療制度とは、入院や手術で多額の医療費や薬代が必要になった場合に、ひと月(月の始めから終わりまで)の上限金額を超えた金額が支給され、自己負担を抑えられる制度です。長期の入院や想定外の手術などで、医療費がいくらになるかわからず不安に感じることがあるかもしれません。そんなとき高額医療制度を利用すると医療費の出費を一定額まで抑えることができ、家計への負担を軽減することができるのです。ママが帝王切開で出産することになった場合も、この高額医療制度の対象となります。これからママになろうとしている方にぜひ知っておいていただきたい制度です。

帝王切開の出産費用はいくら?自己負担額や双子、限度額認定証、医療保険は使える?
帝王切開の出産費用はいくら?自己負担額や双子、限度額認定証、医療保険は使える?
帝王切開の費用は、入院する医療機関や日数、地域などで異なってきますが高額になることもあります。原則自己負担の経膣分娩とは異なり、限度額認定証があれば高額療養費の事前申請も可能です。帝王切開に関するお金の不安を解消しましょう。

高額医療制度(高額療養費制度)はいくらから受けられるのか

高額医療制度(高額療養費制度)はいくらから受けられるのか
高額医療制度は年齢や所得によって受けられる金額が異なります。自分の限度額がいくらなのかを事前に知っておくと、もしものことがあった場合にかかる医療費の見通しが立てやすいでしょう。高額医療制度の限度額について、詳しくご紹介します。

窓口で支払う自己負担には限度額がある

高額医療制度には自己負担分の限度額が設定されており、医療機関の窓口で支払う自己負担分の金額は、所得や年齢によって異なります。まずは69歳までの人の区分と、70歳以上75歳までの人の区分に分けられ、そして各区分に設定されている所得状況によって限度額が決定するのです。

69歳までの保険加入者が自己負担の限度額を超えた場合

69歳までの保険加入者で一般的な所得(標準報酬月額28万円~50万円の方)の場合、ひと月の上限額80,100円+(医療費-267,000)×1%が自己負担分となります。高額医療制度を利用すると、窓口で支払った金額から自己負担分を差し引いた金額が後に支給されるため、かかった医療費にもよりますが、高額医療制度を利用することで自己負担を約10万円以内に抑えられるのです。

70歳以上の保険加入者が自己負担の限度額を超えた場合

70歳以上の保険加入者の場合、これまではひと月の上限額は「個人分」と「世帯分」で設定が異なりましたが、平成30年8月より現役並みの所得(標準報酬月額28万~)がある方に関しては、各世帯の負担能力に応じた負担を求める観点から69歳までの保険加入者と同じ設定となりました。そのため上記と同様に、高額医療制度を利用することで自己負担を約10万円以内に抑えられると考えられます。

高額医療制度(高額療養費制度)をもれなく利用するには

高額医療制度(高額療養費制度)をもれなく利用するには
上記の限度額に加えて、自己負担をさらに軽減できる仕組みもあります。高額医療制度は保険加入者にとって助けとなる制度なので、利用できる仕組みをもれなく把握しておきたいですね。詳しくご紹介していきましょう。

世帯合算する―世帯合算の仕組みとは

自分一人の一回分の医療費では限度額を超えない場合でも、複数の受診や同じ世帯にいる家族の受診分の医療費を1ヶ月単位で合算することができます。その合算額が限度額を超えた場合には、超えた分の金額が支給されます。(共働き夫婦で健康保険が別の場合は合算できません)

多数回該当―期限内に3回以上限度額に達したとき

過去12ヶ月以内に3回以上限度額に達した場合には、4回目からは「多数回」該当となり、限度額が下がります。例えば一般的な所得(標準月額報酬28万円~50万円)の人の場合、4回目からは限度額が44,400円まで引き下げられます。

高額医療制度(高額療養費制度)の事前申請のしかた

高額医療制度(高額療養費制度)の事前申請のしかた
それでは実際に高額医療制度を利用したい場合、どこに、どのように申請すればいいのでしょうか。いざというときに慌てないために、事前に知っておきましょう。高額医療制度を申請するには2種類の方法があります。1つ目は「限度額適用認定証」を医療機関の窓口に提示し、支払いを限度額までに留める方法です。入院や手術をすることがあらかじめわかっている場合や、定期的に外来で受診している場合に限度額適用認定証を窓口で提示すると、支払いを自己負担分のみに抑えることができます。高額な医療費を立て替える必要がなくなるので、経済的な負担が早い段階で軽減されます。

加入している健康保険組合に問い合わせる

まずは自分が加入している健康保険組合に問い合わせましょう。組合によって申請方法が異なる場合がありますので、最初に必ず確認しておくことをおすすめします。通常、保険証に記載されている保険者(○○保険組合・○○保険協会など)が申請先となりますが、詳しい担当窓口は電話やホームページで確認してください。国民健康保険に加入している場合は、市役所などの国民健康保険担当の窓口に確認しましょう。

「健康保険限度額適用認定申請書」を自筆で記入、押印する

「健康保険限度額適用認定申請書」を記入・押印し、限度額適用認定書を申請しましょう。申請書の他に、マイナンバーや身元確認書類が必要になることがあります。添付書類に関しては、ご自身が加入している健康保険組合に確認してください。

加入している健康保険組合に提出する

「健康保険限度額適用認定申請書」を提出後、即日、もしくは後日郵送することで限度額適用認定証が発行されます。発行までに何日かかるかわからないので、手続きは早めにやっておきましょう。限度額適用認定証は所得の認定を毎年行うため、使用期限があります。使用期限を過ぎたら健康保険組合に返却しなければならない場合がありますので、注意しましょう。

高額医療制度(高額療養費制度)の事後申請のしかた

高額医療制度(高額療養費制度)の事後申請のしかた
2つ目は、先に自分が窓口で医療費を立て替え、後日保険者に高額療養費の支給を申請する方法です。審査に問題がなければ、後日限度額を超えた分が払い戻しされます。

後日「高額療養費の支給」を申請する

医療費を支払った後、「高額療養費支給申請証」を記入し、ご自身が加入している健康保険組合に提出しましょう。組合によっては申請手続きについて連絡をもらえることもありますが、自分から申請しなければいけない場合もあります。申請の際には医療機関で受け取った領収書が必要になりますので、大切に保管しておきましょう

事前申請してもしなくても個人の負担額は変わらない

事前に申請しようと事後に申請しようと、個人が負担する限度額は変わりません。ただ、事後申請すると、立て替え分が払い戻しされるまでに時間がかかるため、一時的とはいえ支払額が高額になってしまいます。医療費が高額になることがあらかじめわかっているのであれば、事前に限度額適用認定証を取り寄せておくことをおすすめします。筆者自身、帝王切開での出産と子供が県外の病院に入院した際に事前申請で高額医療制度を利用しましたが、最初から支払いを自己負担分のみで抑えることができ、大変助かりました。医療費が限度額を超えるかどうかわからないという方も、事前に限度額適用認定証の申請だけしておいても損はないでしょう。

高額医療制度(高額療養費制度)をさらに詳しく!

高額医療制度(高額療養費制度)をさらに詳しく!
高額医療制度について、さらに詳しい内容を下記にまとめました。制度を利用する際に知っておいていただきたいことばかりですので、しっかり内容を確認していきましょう。

申請から支給までにはどのくらいの時間がかかるのか

事前申請をする場合、約1週間ほどで保険組合より限度額適用認定証が発行されます。ただし組合によってかかる時間が異なりますので、ご自身が加入している組合に確認してください。事後申請の場合、支給されるのは受診した月から少なくとも3ヶ月後です。高額療養費は申請後、各医療保険で審査された後に支給されるためです。審査には一定の時間がかかります。

どのくらいまで過去にさかのぼって申請できるのか

高額療養費は2年前までさかのぼって申請できます。診療を受けた月の翌月の初日から数えて2年の間に、手術や入院、長期の外来受診で高額な医療費を支払っていた場合、申請の対象となります。

高額医療制度(高額療養費制度)の対象とならないケースとは


高額な医療費を支払っていれば、必ず高額医療制度の対象となるというわけではありません。高額医療制度の対象外となってしまうケースについてご紹介しましょう。

カギは「レセプト」-レセプトとは

高額療養費が支給されるかどうかの審査のカギとなるのが、レセプト(診療報酬明細書)です。医療機関の窓口で支払った医療費から自己負担分を差し引いた差額は、加入している健康保険に対して医療機関が請求しています。この請求する書類が「レセプト」です。高額医療制度の対象となる医療費はレセプトによって計算されており、このレセプトの確定に時間がかかるため、高額療養費が支給されるには少なくとも約3ヶ月はかかるとされているのです。

レセプトの合算ができないケースとは

自分の年齢・所得によって設定された限度額を超えないと、高額医療制度は適用されません。つまりレセプトを合算しても限度額を超えていないと、高額医療制度の対象外となるのです。他にも、医科(歯科以外のすべての診療科)と歯科、入院と外来ではレセプトが合算できない、69歳までの人は、21,000円未満のレセプトについては合算できない、などのルールもあるので注意が必要です。

その他の高額医療制度(高額療養費制度)の対象とならない費用とは

医療機関に支払った金額全てが高額医療制度の対象となるわけではありません。医療に直接かかわらない「食費」・「居住費」、患者の希望によってサービスを受ける「差額ベッド代」・「先進医療にかかる費用」は高額医療制度の対象外になりますのでご注意ください。高額医療制度の対象外になる費用をカバーするためには民間の生命保険を検討するのもいいでしょう。

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高額医療制度を利用することによって、長期の入院や突然の手術でも医療費をいくら負担しなければならないのか目処がつきます。自分や家族に万が一のことがあった場合でも、この制度を理解しているだけで不安は減るのではないでしょうか。

まとめ

いつ怪我や病気で高額な医療費が必要になるかわかりません。特に女性の場合、妊娠中や出産時に想定外の入院や手術が必要になることもあるかもしれませんね。高額医療制度について知っておくことで、自分や家族に何かあったときの安心材料になります。自分は関係ないと考えず、万が一の時のために知識を蓄えておきましょう。

※この記事の情報は2020年12月現在のものとなります。

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はいチーズ!クリップ編集部

はいチーズ!クリップ編集部員は子育て中のパパママばかり。子育て当事者として、不安なこと、知りたいことを当事者目線で記事にします。Instagram・LINEなどでも情報発信中ですので、ぜひフォローください!