男性の産休が義務化? 男性の産休制度を創設へ!
目次
男性の産休制度ができる?
現在、子供が生まれたばかりのすべてのパパに対して、新たな休業制度を創設する動きがあるのを知っていますか? 日本では出産後の休業制度といえば産休や育休がメジャーですが、産休はママだけに与えられた制度で、パパが取得できるのは育休のみでした。さらに、日本のパパの育休取得率は低い水準で推移し続けており、多くのパパが育児に参加しているとはいい難い状況です。これらの状況を考慮し、政府は男性の産休にあたる新たな休業制度を制度化する方針を固めました。パパの育休取得が進まない理由としてよく挙がる「収入が減ってしまう」「手続きが面倒」といった点をカバーするために、今回議題にあがっている男性の産休は休業中の給付金の増額や手続きの簡素化なども協議される方針のようです。
男性の産休はなぜ必要?
もしかするとパパママの中には「出産の時はママが里帰り出産をするから大丈夫」「男性が出産するわけではないのに、男性の産休は本当に必要なの?」と考える人もいるかもしれませんね。でも実は、パパが妻の出産直後に休暇を取得することはとても意義のあることなのです。2つのポイントに分けて詳しく説明していきます。
産後のママを支えるため
出産という命がけの大仕事を終えてすぐに始まる3時間ごとの授乳やおむつ替え、夜中も泣き止まない赤ちゃん……。慣れない育児の疲労に加えて、産後はホルモンバランスの急激な変化によって精神的に不安定になる「産後うつ」が発症しやすいといわれています。誰もが「うつなんてならない」と考えがちですが、産後うつはママの10~15%が発症するといわれており、誰でもなりうるものです。
産後うつのリスクが高いのは、産後2週間をピークにした約1ヶ月間。つまり産後1ヶ月の間にどれだけママの負担を減らせるかどうかが産後うつを発症するかどうかを決めるといわれています。海外の研究でも、「パートナーが乳児のケアに関与しないことが、母親の産後うつと強く関係している」と推論されています。とはいえ、仕事をしているパパがママのサポートをすることは現実的に難しいですよね。パパが産後のママをサポートするためにも、パパの産休取得が必要不可欠と考えられたのでしょう。
【産後うつ病に対する育児休業の影響】
育児休業と育児への父親の関与が産後うつ病に及ぼす影響
少子化対策にも有効
産後はママのホルモンバランスが急激に変化するため、産後うつとまでいかなくとも、ちょっとしたことでイライラしたり悲しくなってしまったりすることは多くのママが経験するでしょう。こうした産後の不安定さや心身の疲労をパパが理解してくれなかったり、ママが期待するよりもパパの育児に対する関心度が低かったりするとママの不満がつのり、夫婦仲が急速に冷え込む「産後クライシス」という状態になってしまうこともあります。
残念ながら、産後はママのパパに対する愛情はかなり低くなることがわかっていますが、その後愛情が回復するかしないかは産後にパパがどれだけ積極的に育児や家事に参加するかどうかにかかっており、その期間を逃すとママからの愛情が回復するチャンスはありません。また、第1子出産後のパパの育児・家事への貢献度が、第2子以降をもうけるかどうかの判断にも大きな影響を与えることもわかっています。今回の男性の産休制度化は、少子化を食い止める策の1つともいえますね。
第6回21世紀成年者縦断調査(国民の生活に関する継続調査)結果の概況(厚生労働省)
産休をとるならいつがベスト?
もしパパが1ヶ月以上の長期休暇を取れるのであれば出産予定日の3日前くらいから休みを取れると安心です。出産予定日であれば事前にわかっているので、休みを取得する準備もしやすいですね。特に初めての出産の場合、ママはいつ陣痛が来るかわからず不安な状態が続きます。陣痛がきた時にいつでもパパがママのサポートできるようにしておくとママも安心できるでしょう。
数日しか休暇が取れない場合は、出産日や退院日、出生届を提出する日など節目の日を選ぶのがおすすめ。赤ちゃんとの外出は荷物が多いため、産後の定期検診の日に合わせて休暇をとり、病院につき添ってあげるといいでしょう。ママの心身の負担が大きいといわれるのは産後約1ヶ月間です。休みが取れない場合でも、この1ヶ月は早く帰るようにするなど、献身的にママを支えてあげてください。いずれにしても、赤ちゃんが生まれる前にいつ休暇をとるのがベストかママとしっかり相談しましょう。
フランスには男性の産休がある
先進諸国の中でも高い就業率と出生率を誇るフランスでは、子育てや女性の就業に対してさまざまな政策がおこなわれています。その一つが、2001年に改正された父親休暇。父親休暇中は8割の給与保障があり、父親休暇から復職する場合は以前と同じ職もしくは同じ賃金の同様の職が保障されています。さらに父親休暇を正しく運用しない雇用主には罰則もあります。こうした取組みもあり、2004年には平均取得日数10.8日、20~34歳の若いパパの取得率は71%、35歳以上のパパでも58%が父親休暇を取得するほど、フランスではパパの父親休暇取得はメジャーなものになっています。
フランスにおける父親の育児休業制度(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
実は充実している日本の育休制度
パパの育児参加についてはお世辞にもすすんでいるとはいえない日本ですが、実は世界的にみると日本の育休制度自体はかなり充実しています。日本では子供が1歳になるまでの1年間育休を取得できますが、そもそも6ヶ月以上の育休を取得できるのは世界を見渡しても日本だけです。さらに「パパ・ママ育休プラス」や「パパ休暇」、子供が保育園などに入所できなかった場合などに育休を最大2年まで延長できる制度など、日本の育休制度はかなり充実しています。父親が育休中に給付される育児給付金の額は世界トップにもかかわらず、日本のパパの育休取得率はわずか10%にも届かないというのは、とても残念な結果ですね。
パパ・ママ育休プラスとは? 利用する時のコツ
本来、育休は子供が1歳になるまでしか取得できませんが、パパとママの両方が育休を取得する場合、子供が1歳2ヶ月になるまで育休を延長できるのが「パパ・ママ育休プラス」制度です。ただし、育休を取得できる期間はパパもママも1年間です。そのため子供が1歳2ヶ月になるまで育休を取得したい場合は、出産後2ヶ月たってからパパが育休を取得するなど少しずらす必要があります。ママが里帰り出産をする場合などにぜひ使いたい制度ですね。
パパ休暇とは? 育休が2回取れるって本当?
本来、育休は1度しか取得できないものですが、パパ休暇はママの産休中(産後8週間の期間内)にパパが育休を取得した場合に、再度育休を取得できる特例のことをさします。パパ休暇を利用するには、出産後8週間以内に育休の取得~終了しなければならないため注意してくださいね。
国家公務員は先駆けて男性産休制度がある
パパの育休取得をもっと浸透させるため、政府は国家公務員に対し、民間企業に先駆けて「男の産休」および育児休業の取得促進をすすめています。男の産休とは、配偶者出産休暇(2日)と育児参加のための休暇(5日)を合わせた計7日間の休暇のことを指し、有給休暇扱いとなるためお給料が減ることはありません。
令和2年度はすべての国会議員が男性育休を取得?
さらに政府は、「令和2年度から子供が生まれたすべての男性職員が1ヶ月をめどに育児に伴う休暇・休業を取得できることを目指す」という指針を発表しました。これをうけ、対象となる男性職員のうち約9割が1ヶ月以上(平均43日)の育休の取得を予定しているようです。事前に育休取得計画を作成することで、いざ職員が育休を取得しても困らないよう環境整備をしているようですが、新型コロナウイルス感染症や災害対応などにより予定が見通せない府省もあるようで、まだまだパパの育休取得が浸透しているとはいい難い状況です。一方で、もし公務員の育休取得が当たり前のものになれば、現在議題にあがっているパパの産休制度化もより現実的なものになりそうですね。
男性の育児参加には社会の変化が不可欠
専業主婦や共働きに関係なく、子供を育てる責任はママにもパパにもあります。パパの中にも「本当はもっと子供の成長を見たい」「ママの支えになりたい」と考えている人もいるのではないでしょうか? 一方で「育児に参加したくても現実的に難しい」というのも本心ですよね。男性がもっと育児や家事に関わるためには、本人の意志だけでなく社会が変わることが必要不可欠です。パパの産休の制度化はもちろん、パパが産休を取得しやすい環境や仕組みが1日も早く実現し、誰もが育児に参加できる社会になるといいですね。
文/内山沙希