特別支援学級とは? どのような子供が対象になるの? ママの悩みや疑問を先生に聞きました!
目次
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子供が特別支援級に入ることになった理由は?
- うちの子供は幼少期から特別支援(療育など)を受けていました。学校公開を利用してどの学校に入学しようかと検討して、今の学級を選択しました。
- 就学支援委員会で、特別支援学校で学ぶ方が適切であると判断されました。しかし、特別支援学級を見学したところ、熱心に学習を進めてくださる学級の様子を見て、この特別支援学級に子供を入れたいと思い、入学しました。
- 就学時健康診断の際に観察をした学校側から、子供の普段の様子について聞かれました。その際に特別支援教育を進められ、相談に行ってから入級することになりました。
- 通常の学級に入級したのですが、学習についていけず、教室の中で騒いでしまうことも多く…。この子のためにもよくないと思い、特別支援学級に編入しました。
特別支援学級の教育内容と1日のスケジュールは?
特別支援学級は通常の学級とは異なり、教科書があってその通りに学習が進行するということがありません。学級ごと、個々の子供ごとの教育内容に大きく差があります。
今回は、都内のある特別支援学級の担任の先生にお話を伺いました。
特別支援学級の教育内容:少人数で教科の学習を理解しやすく
国語、算数、体育、音楽、図工などといった教科学習が基本的に行われています。子供の障害や学年に合わせてクラス分けがされていて、私たちの学校は3クラス(各8人ずつ)で編成されています。教科学習は学年における目標とは異なる課題が用意され、勉強していきます。課題が近い子供がグループで学ぶこともありますし、個別に指導が進められることもあります。
体育や音楽はすべてのクラス合同で学びますが、子供それぞれの障害や学年によって学ぶべき課題はさまざまです。子供たちの実態に合わせて柔軟にグループ分けをして、より効果的に学習を進めるクラス分けをすることがいいかと思います。クラス分け、グループ分けは学級により異なります。
特別支援学級の教育内容:朝の会も大切な成長の場
日常生活の指導や生活単元学習などといった教科・領域を合わせた指導もあります。日常生活の指導の中で行われる「朝の会」は、通常の学級よりも長い時間を取って指導している学級が多いです。私たちのクラスでは、出席をとる、歌を歌う・今日の予定の確認・スピーチ・質問などを行い、一日の予定などを書き込む日課表を書いています。「朝の会」は全員で行なっています。
特別支援学級の教育内容:生活に根差した学習で子供たちの意欲に繋げる
・生活単元学習は、例えば「クッキー屋さんを開こう」という子供たちの生活に根差した単元を組み、クッキーを作り、お店を出して、お客さんの対応をするなどの魅力ある創造的な学習を展開することが多いです。国語では招待状を書いたり、算数ではクッキーをつくる時の材料を量ったりするなど、他教科の授業内容と連携させて学習を進めます。そうすることで、1つ1つの学習が子供たちにとって意味のあるものになり、学習する意欲にも繋がっていくのです。
・「動物園に行こう(校外体験学習)」という単元を組み、事前に国語においては『どうぶつのあかちゃん』の物語を読みました。算数では動物園までの交通費を計算したり、好きな動物について本やパソコンで調べて、事前学習を進めました。当日はその動物について詳しく観察し、事後で調べた動物についてプレゼンテーションでまとめて発表会をしたり、図工では動物園での様子を絵に描いたりするなど、さまざまな学習をつなぎ合わせて子供たちにとって意味のあるものにして学習意欲を高めながら行っています。
※単元とは、学習過程における学習活動の一連のまとまりのこと。
特別支援学級の1日の流れ
時間 | 内容 |
---|---|
1時間目 | 朝の会(上記参照) |
2時間目 | 国語 |
・学習の課題に合わせて、少人数のグループを作って学習 | |
休み時間 | 校庭で。教員も一緒に遊んだり、見守ったりする |
3時間目 | 生活単元 |
・校外体験学習のまとめをタブレットで行う | |
4時間目 | 算数(国語と同じ) |
給食 | ・上学年を中心に給食当番を行い配膳。時間はかかるが、大切な活動 |
・給食を食べる時間も通常の学級よりも長めに設定し、食事指導をしっかりと行っている。大切な自立のための学習 | |
・偏食指導、食事のマナーなども行う場合も。給食後の掃除を行わないで時間をとる学級も多い | |
昼休み | 休み時間と同じ |
5時間目 | 音楽 |
・みんなで歌を歌った後、グループに分かれてリコーダー、鍵盤ハーモニカなどの練習 | |
6時間目 | 生活 |
・掃除をする。毎日の短い時間の掃除ではなく、1時間かけてしっかりと丁寧に行う | |
下校準備・帰りの会 | 明日の予定を確認 |
下校 | 下校後、子供によっては通常の学級へ教科の交流に行くこともある |
特別支援学級にまつわる親の悩み・疑問Q&A
「子供を特別支援学級に通わせたほうがいいのか? それとも普通級がいいのか?」と悩む親は多いでしょう。親の悩みに、特別支援学級担任の先生に回答していただきました。
Q.就学支援委員会で特別支援学級をすすめられました。通常の学級に通わせてはだめなの?
A.通常の学級に通わせるのはだめということはありません。子供の状態で決めましょう。通常の学級と特別支援学級の長所と短所は異なります。どちらに入学させれば、子供の伸ばしたい部分伸びるのかを見定めて決定していくべきだと思います。
Q.特別支援学級に入ったら、通常の学級には入れないの?
A.特別支援学級に入ったら、もう通常の学級には入れないということはありません。特別支援学級に入って自信ややる気を取り戻し、自分をコントロールする力をつけて落ち着いてくる子供は多いです。社会性を学んで大きな集団の中でも生活できるようになり、子ども本人の通常の学級へ行きたいという気持ちが高まれば、丁寧に交流を重ね、少しずつ通常の学級にいる時間を増やしていきます。
ステップを踏みつつ、通常の学級へ戻るというケースはあります。また、中学入学時に通常の学級へというケースもあります。支援学級において、学習面・精神面ともに自信をつけて安定することが、社会という集団の中で、その子が共生できる一歩となると思います。
Q.子供に合った学習が行われているか不安
A.個別の指導計画という、1人ひとりの子供たちのための指導計画を教師が作成し、保護者に提示しています。保護者は指導計画に補足したいことや要望などを担任に伝えることができ、反映することが可能です。また、保護者と担任の距離は通常の学級に比べると密なので、個人面談などだけではなく日々の連絡帳のやり取りを通して要望を伝えたり、電話などで直接伝えたりといったこともやりやすいでしょう。疑問を感じたら担任の先生に相談されるのがよいです。
特別支援学級に通学している子供のエピソード
特別支援学級に通学している子供たちの様子をママにお伺いしました。
通常の学級で3年生まで通っていたA君の場合
Aは通常の学級で3年生まで通っていましたが、学級で不適応を起こし始めました。イライラしたり暴れたりすることが多くなり、学校に行きたがらなくなりました。私たちも困り果ててしまったため、「Aに合った教育をしてくれる学級はないか」と特別支援学級の見学に行きました。
担任の先生とお話しをすると「今は勉強が理解できずに進んでしまうので、A君にとってはストレスが多いのでしょう。A君のペースで少しずつ学習を重ね、自信をつけることが大事ですよ」と言われ、Aを体験入級させることにしました。
Aはゆったりとした学習ペースや思いを受け止めてくれる先生に安心し、表情もやわらかくなりました。親としては、通常の学級の進み具合も気になりますが、教室の中にいても何も学んでいない状態に比べたら、Aはゆっくりでも着実に自ら学ぼうとしています。将来のことはもう少し子供の様子を観察して、担任の先生や療育の先生などに相談して考えていきたいです。
通常の学級で2年生の途中まで通っていたB君の場合
Bは、人の気持ちを捉えることが苦手で、独自の考え方やこだわりがある子です。2年生の途中まで通常の学級で過ごしていましたが、授業中に暴れたり暴言を吐いたりといった行動から、担任の先生に強く叱責される日々でした。そのため、非常に教師に対する不信感が強くなり、保護者が授業を見学する時のみ授業に参加し、それ以外は校庭の隅で読書して過ごすようになりました。そのため、特別支援学級がある学校に転校しました。
支援学級の先生に対しても警戒心から、最初はツバを吐こうとしていました。授業中も、電化製品に対するこだわりが特に強く、教室の電化製品のコンセントを抜いてしまったり、配線を勝手に変えてしまったり…。また、集団でいると、友達にちょっかいを出してトラブルも起こしてしまいます。
担任の先生には「まず個別対応から始めましょう。B君の興味がある電気や虫など、そこから教科の学習に発展させましょう」と言っていただきました。懐中電灯の豆電球や電池を取り替えて、明るさの差を調べたり豆電球の中身を割って観察したりといった学習内容で、Bも少しずつ集中して学ぶことができるようになりました。体育では、自分の思い通りにならないとイライラする場面もありましたが、じっくりと先生がBの自信のなさからくる不安な気持ちを受け止めてくれることで、少しずつ参加できるようになりました。
人の気持ちをキャッチすることが苦手なBですが、先生がBの存在を温かく受け入れてくれることで、落ち着きが出てきました。何より、学校を楽しむ気持ちが育まれ、本当の意味で「生きる」意欲が出てきたと思います。
障害に合わせた環境を選び、教員と密にコミュニケーションを取ることが大事
「うちの子、少し心配だな」と感じたら、就学相談や地域の療育機関で専門家に相談してみましょう。そして、特別支援学校や特別支援教室、特別支援学級の見学に行き、どんな教育が行われているか実際に知って、子どもが学習を進めて行けそうな環境を探してみましょう。また、入級してからも担任の先生と連絡帳などを通し、密にコミュニケーションをしていくことが大事です。学習や学級活動を通じて、子どもが「自信」をつけていくことが成長に繋がるので、親と教師が連携して子どもの教育を考えていきたいですね。