【医師監修】妊娠中の安定期はいつからいつまで? 安定期にやっていいこと・だめなこと
目次
安定期の運動や自転車の利用は?
経過が順調なママは、安定期に「適度な運動」を指示されることも多いです。でも、「適度」とは、「どのような運動」を「どれくらい」までを指すのでしょうか? また、スポーツ好きのママはどのくらい動いていいのか気になりますよね。
転倒、転落、ぶつかりあうスポーツはNG
妊娠とともに、ママの体には体重の増加、重心が前になる、背骨のカーブの変化、関節がゆるむ、血液量の増加などの変化がおこります。「適度な運動」は、全身の筋肉を使い酸素を十分に取り入れる有酸素運動で、ウォーキング、水泳、ヨガ、エアロビクスなどがよく行われています。
特に問題のない妊婦さんでは1日に30分以上の運動を週に数回行うことができるとされていますが、運動へのなじみは個人差があるもの。妊婦さんが無理なく「リフレッシュ」できるレベルと考えましょう。ただし、転倒、転落のリスクがあるアンバランスな種目(スキー、スケート)や、ぶつかり合う競技(バスケットボール、サッカーなど)、競争的性格の強いスポーツ(激しいラケットスポーツなど)は避けて。
妊娠中の自転車を推奨する医師はいない
妊娠中の自転車は、常に転倒するリスクがあり、振動がおなかに影響がないとは言い切れません。医師によって判断はいろいろですが、推奨する医師はいません。そうはいっても、例えば、自転車で10分の幼稚園に、妊婦が3歳児の手をひいて満員のバスに30分乗って行くというのも過酷です。
自転車に乗る場合は、できるだけ「疲れない」「転倒リスクの少ない」方法を選びましょう。妊娠中はお腹が大きくなるにつれてバランスがとりにくくなったり、こぐのが難しくなります。また、妊娠後期には、自転車のハンドルとおなかの距離が近くなり、事故にあった時の子宮への衝撃も大きくなります。今乗っているママも、“やめどき”が来ることを念頭に、別の交通手段を考えておきましょう。
自転車に乗る場合は…
- 疲れにくい電動アシスト付き自転車にする
- 自転車に乗る時間はできるだけ短かくする(歩けるところは歩く)
- サドルを安全に止まれる高さに調整する
- 慌てて転倒しないよう、時間に余裕を持って移動する
- 子どもの乗せ降ろしは、なるべくママがしない
自転車の“やめどき”をチェック!
- (おなかが大きくて)足元が見えなくなった
- バランスがとりずらくなった
- 主治医に禁止されている場合
- 強い風、雨などで路面が悪いなど天候が悪い時
車は必ずシートベルトを
車は、事故にあったとき、おなかにかかる衝撃が心配です。正しくシートベルトを着用すると、いざというときのママと赤ちゃんのリスクを軽減できます。運転するときも、同乗するときも(後部座席でも)、必ず着用しましょう。
妊婦さんも違反罰則の対象です。道路交通法施行令では、妊婦さんのシートベルト着用義務が「免除」と記載されていますが、対象は特定の一部妊婦さんだけです。また、着用時は、肩・腰を支える3点式シートベルトを選びましょう。斜めベルトは両乳房の間を通し子宮の膨らみを避けお腹の横に通します。腰ベルトはおなかのふくらみの下(恥骨上)に置き、腰骨を結ぶ線上に通すと、子宮を横切ることなく正しく装着できます。やむを得ず運転する場合は、ハンドルとお腹までの距離が近くなるため座席の位置を調節しましょう。
妊娠中に旅行(マタ旅)に行きたい! 安定期なら行ける?
安定期に入ると、「今のうちに!」と旅行に行きたくなるママもいるのでは? 安定期に旅行を計画する人も多いでしょう。妊婦さんは、飛行機に乗っても大丈夫なのでしょうか? 飛行機に乗るのならどの程度の距離や場所がいいのでしょうか?
飛行機は経過が順調なら乗れると判断されることも
飛行機は「経過が順調ならOK」と判断する医師も多いので、担当医に相談してみましょう。ただし、航空会社によっては、安定期でも搭乗に診断書が必要になることも。事前に航空会社に確認しておきます。また、搭乗時には、健康保険証、母子健康手帳、妊婦健診の検査結果は必ず持っていきましょう。
海外旅行はトラブルの元
妊娠中の国際線はおすすめできません。妊娠は、経過が安定していても、いつトラブルが起きるかわからないもの。とくにフライトが長時間になるのは心配です。さらに、万が一、現地で早産になり数カ月の入院になった場合、日本の保険証が適用されないので、百万円単位の入院費がかかることも知っておきましょう。また、現地の言葉で微妙なニュアンスを伝えたり聞きとるのも困難です。海外旅行は、避けましょう。
飛行機ではエコノミークラス症候群に要注意
搭乗中は、エコノミークラス症候群に注意します。エコノミークラス症候群はエコノミークラスだけで起こるものではありません。飛行機の中で長く座って動かないでいると、足の血流が悪くなりふくらはぎの静脈の中に血栓ができることがあります(深部静脈血栓症)。この血栓が歩き出したときに血液のながれにのって運ばれ肺の血管に詰まり、命に関わることがあります(肺血栓塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群)。
妊婦さんは出産時の出血に備えて血がかたまりやすく、血管の中に血のかたまり(血栓)ができやすい状態になっています。お腹も大きく、ずっと座っていると血流も悪くなりやすいです。飛行機の中は湿度が低く、体の水分が失われやすいので、トイレが近くなって面倒でも、水分をしっかりとって、こまめに足を動かしましょう。飛行機だけでなく、長時間のドライブ、車中泊でも起こりえるので注意して。
安定期のうちにやっておくといいこと
安定期は体調が落ち着きやすい時期です。妊娠後期にはまたトラブルが増える人も多いため、できれば今のうちに、出産・産後の準備をしておくと安心。産後はなかなかできないこともリストアップして実行しておきましょう。おすすめなのは以下の項目です。
- お産入院の準備
- ベビーグッズなどの準備
- 赤ちゃんをお世話するスペースづくり(自宅・実家)
- 歯科治療
- 母親学級・両親学級
- 保育園の情報収集
- 保険や金融商品の見直し
- 美容院
- 友人とランチ など
まとめ
安定期は、妊娠前期・後期と「比べて」体調が安定している時期。何をしても大丈夫というわけではないので、妊婦である自覚を持って過ごしましょう。体調のいいママが、より安定して過ごすためには、バランスの良い食事、適度な運動が大切です。妊娠後期になると、マイナートラブルや、おなかの張りなどが増えてきます。安定期は、妊娠後期に無理せず過ごすための準備期間と考えましょう。(取材・文/大部陽子)
参考文献
・産婦人科診療ガイドラインー産科編2017 公益社団法人日本産科婦人科学会
CQ107 妊娠中の運動(スポーツ)について尋ねられたら?
CQ901 妊娠中のシートベルトの着用、および新生児のチャイルドシート着用について尋ねられたら?