産後クライシスは夫婦の危機! 原因は何? 乗り越え方は海外事情がヒント

産後クライシスとは? 60%以上のママが実感

産後クライシスとは? 60%以上のママが実感

産後クライシスとは、これまで仲良しだった夫婦が、産後をきっかけに急に冷めきった関係になる状況をいいます。株式会社カラダノートの「産後クライシス調査」では、6割以上のママが産後クライシスを経験していることが判明しました。また、産後クライシスを経験した9割以上のママが「産後半年以内」に愛情の冷え込みを感じており、その後「愛情が回復した」と感じる率は56.6%にとどまっています。

産後の変化をもっとも大きく実感するのは、パパよりママです。体調の変化や昼夜問わず赤ちゃんのお世話、それに加え家事や上の子のお世話など、睡眠不足と疲れで毎日クタクタです。このような状態で産後クライシスが改善できなければ、二人心の溝はどんどん深くなってしまうのです。

「産後クライシス調査」(カラダノート)

産後クライシスがきっかけ? 離婚率が高いのは子供が2歳未満!

厚生労働省の平成28年度の「全国ひとり親世帯調査結果報告」では、子供が0~2歳の間に母子家庭になった家庭が多いことがわかりました。育児がもっとも大変な乳児期に離婚率が高い原因のひとつに、子育てに関する夫婦間での温度差もあるでしょう。産後クライシスはどの家庭でも起こり得ることであり、「子供のために離婚だけは避けたい」気持ちがあっても、夫婦関係が悪化した状態が続くと離婚に発展するケースも珍しくありません。

産後すぐのママは体調不良が続く日もあり、パパに育児や家事をお願いしても「会社が忙しいから」や「せっかくの休日だからゆっくりしたい」などと、育児に非協力な姿に愛情が冷めてしまうママも多いでしょ。

平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果(厚生労働省)
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産後うつと産後クライシスは違う!

「産後クライシス」とよく間違われる言葉が「産後うつ」です。2つは同じ状況を指しているように見えますが、実際には全く別のものです。産後クライシスが夫婦関係の悪化であるのに対し、産後うつは産後に起きるうつ病のことをいいます。産後うつの症状は、イライラやちょっとしたことに不安、継続的な不眠、疲労感などの症状があります。

産後うつは、イライラや不安感だけでなく、継続的な不眠や疲労感などの症状が出る病気です。産後うつになった場合は、早めに専門家の診察を受けて、悪化を防ぐようにすることが大切です。産後クライシスと産後うつはまったく違う問題ですが、同時に起こる可能性もあるので注意が必要です。

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産後クライシスの原因とは

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産後クライシスになる原因はさまざまです。産後はやることがたくさんありますが、赤ちゃん優先で行動するママは多いでしょう。家事や育児、すべてをママ1人でおこなうのは難しく、そんな状況の中でパパの理解がいないとイライラは募る一方です。協力や理解性のないパパと暮らしていると、やがて2人の間に大きく生じた溝は埋まらず、最後には離婚へ至ってしまうこともあります。産後クライシスの原因を知っておき、最悪の状況を避けるようにしましょう。

産後クライシスの原因1:里帰り出産

日本では、まだまだ育休を取るパパは7%程度と少なく、里帰り出産をするママも多いのが現状です。結果、一番大変な乳児期のお世話にパパが関わらず、帰宅後もママとパパの育児スキルに差ができるため、育児はママに偏ってしまいがちです。最初から育児が大変という認識がないと、里帰り後に育児参加をしてもらうことは期待できません。里帰り出産の際は、スタート時点での育児スキルの差が生まれないよう、パパにも最初から積極的に参加してもらうことが大切です。

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産後クライシスの原因2:パパの行動と言動

「育児は母親の仕事だからやって当然」「俺だって忙しい」などパパの言葉は、育児で消耗しているママにとって地雷を踏むようなもの。たったパパの一言で2人の関係は急速に悪化し、言われたママは一生忘れないでしょう。実際の調査でも、妻から夫への愛情は子供が生まれるとがくっと下がることが知られています。そして乳幼児期に「夫と二人で子育てした」と感じているママたちの夫への愛情は回復する一方、「一人で子育てした」と回答したママたちのずっと下がったままになります。たとえ夫婦仲が冷え込んでも「大変だったね」「ありがとう」と感謝の言葉をかけてもらえないばかりか、逆切れされて気持ちはさらに冷え込み、離婚まで考えてしまうママが出てくるのです。

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産後クライシスの原因3:寝不足やホルモン変化

ママにとって、出産後は心身ともに不安定な状態です。産後はホルモンバランスや自律神経の乱れが原因で、イライラしやすい日が増えます。ホルモンバランスは睡眠不足でも乱れやすく、不眠症や食欲が出ないなど、産後はちょっとしたことにストレスを感じます。体は疲れているのに毎日赤ちゃんのお世話、眠ったと思えば夜泣きや授乳の時間など、出産前のような睡眠時間の確保はできません! 細切れの睡眠の毎日の中、普段なら許せるようなパパの言動にも、ついイライラしてしまうのです。

産後クライシスの原因4:夫婦のコミュニケーション不足

産後は子供中心の生活がスタートするので、夫婦の時間にすれ違いが生じたりコミュニケーションが不足したりと、これまでと違ってきます。ママは、自分の時間が取れないことや慣れない育児のストレス、一人で生まれたばかりの子供の全責任を負うプレッシャーなど、パパに理解を求めてもわかってもらえないことも多いものです。また、家族のために会社で働くパパが忙しいのも理解できますが、会話する時間が減ったことで伝えたいことも伝えられないすれ違いも、産後クライシスの原因です。

また、専業主婦や産休や育休のため仕事をしていないママは、パパの仕事を気遣って不満や要望を伝えずにいるケースもあるでしょう。きちんと伝えず「察してほしい」と思っているために起きる「わかってくれない」というフラストレーションも原因のひとつです。

産後クライシスは海外では起きない?

産後クライシスは海外では起きない?

日本ではようやく認知度の上がりつつある産後クライシスですが、海外の事情はどうなのでしょうか。筆者がよく知るフランスとドイツの例を見てみましょう。日本の産後クライシスの状況を打開するヒントが得られる、文化や考え方の違いがたくさんあります。

フランスの産後ケア体制&産育休

共働き世帯の多いフランスでは、10週間の産休が明けると、すぐに職場復帰するママがほとんどです。パリなどの都市部では、公立保育園併設の託児所はなかなか空きがないことから、預け先の確保は悩みの種です。私立の託児所や家庭型託児所、「ヌヌ」と呼ばれる認可保育ママに預けることも多く、早期から他人に子供を任せることへの罪悪感はありません。

2013年よりパパ向けの育児休暇もでき、新生児の誕生後11日間の連続休暇を取得することができます。双子などの多胎児の場合は18日間までで、産後のママが一人で育児を抱え込まないようなシステムになっています。パパとママが同時に育児のスタートラインに並ぶことが可能なため、育児を共同作業として行っていく下地作りを後押しする法制度です。

フランスの産後クライシス体験談

フランスではママだけでなくパパも育休を取ることにより、育児への意識は大きく変わります。出産後の一番大変な時期をママと一緒に過ごすことにより、育児に対する理解も深まるからです。ミルクでの授乳が多いことも、パパの育児参加のハードルを下げています。また、フランスでは退院後は同室の赤ちゃん用ベッドですが、早ければ生後数週間から子供部屋で赤ちゃんを寝かせる習慣があるため、夜はパパとママだけの時間を取ることも可能です。パパとママが交代で夜起きるなど、育児の分担もしやすくなり、精神的にも楽になります。

また、カップルでの時間を過ごすため、子供をベビシッターに預けてディナーに出かけたりすることに、フランス人は後ろめたさを感じません。ママとしてだけでなく女性として仕事やプライベートがあるフランスは、産後クライシスになりにくい環境が整っているといえるでしょう。とはいえ、もちろんどこの家庭も同じ状況であるわけではありません。特にパパ向けの育休を取ることにより、収入が減るのを気にする家庭などでは、やはり育児がママ一人の負担となることが多いようです。また、ママの復職の際、帰宅後の育児や家事の負担が大きいなどの理由から、産後クライシスになり別れるカップルもいるのが現状です。

ドイツの産後ケア体制&産育休

ドイツでは「ヘバメ」と呼ばれる助産師による、出産時と産後のママと新生児のための訪問サポートサービスがあります。生後8週間まで、家にいながらにして身体と心をサポートしてもらえるサービスで、産後の体調管理や子育ての不安を解消してくれます。ドイツでは、フランスほどフルタイムの共働き世帯は多くないため、産後はママが育児に専念することが多くなります。

とはいえ、ドイツの育休はパパとママのどちらか、または両方が順番に12~14カ月とってもよいことになっています。前年度の収入を元に計算された手当が支給されるので、収入の多いほうが育休をとることが一般的です。そのために、ママがすぐに職場復帰して、パパが育児をしている姿もたくさん見かけます。また、フルタイム勤務のママの復職も週3回の時短勤務からなどと、ママと赤ちゃんの双方にありがたいシステムもあり、ママへの負担が少ない制度が充実しています。

ドイツの産後クライシス体験談

ドイツでは、生後数週間から1~2か月、赤ちゃんはママのベッドの脇のベビーベッドで眠ります。それが終わると同じ部屋でベッドを離して、もしくは自室で赤ちゃんは眠るようになります。夜に夫婦の時間が取れるため、夫婦の対話がなくなることは稀です。ミルクでの授乳や離乳食は手作りしないなど、パパとママが育児のシェアがしやすくなっています。

また、経済的に余裕がある家庭では、掃除やアイロンかけなどの家事の外注は一般的で、朝食や夕食は「カルテスエッセン(冷たい食事)」と呼ばれるハムやチーズのなど食事で準備に手間をかけないことも多く、家事負担が少ないことも、ドイツのママへの負担が軽い要因です。しかし、預け先が見つからず職場復帰が思うようにいかなかったり、元々専業主婦であった場合、一人で育児を抱え込むママが多いことも事実です。また、産後クライシスになっても、経済力があるママなら、我慢せず離婚してしまうことのほうが多いようです。

次のページでは、産後クライシスで離婚を考えたほうがいい時や体験談を紹介します

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はいチーズ!クリップ編集部

はいチーズ!クリップ編集部員は子育て中のパパママばかり。子育て当事者として、不安なこと、知りたいことを当事者目線で記事にします。Instagram・LINEなどでも情報発信中ですので、ぜひフォローください!