STEAM(スティーム)教育とは? STEAM教育の導入で日本はどう変わる?
目次
STEAM教育とは?
STEAM教育の「STEAM」は、「Science(サイエンス)=科学」「Technology(テクノロジー)=技術」「Engineering(エンジニアリング)=工学」「Art(アート)=芸術」「Mathematics(マスマティックス)=数学」それぞれの頭文字をとったものです。読み方は「スティームきょういく」です。
STEAM教育とは、ITやAI(人工知能)が進化していくこれからの時代を創造・変革し、問題解決に必要な力を身につけるための「STEM(ステム)教育」に、Art(アート)の視点を加えることでより創造力と感性の重要性を高めた次世代教育の指針です。STEAM教育は世界規模で本格化しており、今後もその流れは強まっていくものと考えられています。
STEM教育(ステム教育)とSTEAM教育(スティーム教育)はどう違う?
STEAM教育が提唱された背景には、STEM教育がありました。STEM教育とは、おもに理数系教育の充実を図るもので、Science(サイエンス)、Technology(テクノロジー)、Engineering(エンジニアリング)、Mathematics(マスマティックス)の理数系4領域の知識を横断的に活用する教育です。STEM教育はただの理系科目教育や単体のプログラミング教育ではなく、社会と結びついた実践的なもので、体験型・創造型アクティブラーニングなどを取り入れた総合的な教育であるとされています。
「STEAM」は、アメリカ最高峰の美術大学として位置づけられるロードアイランド・スクール・オブ・デザインの学長であったジョン・マエダ氏が、自身の学長就任の際に提唱した新しい概念です。これは、STEM教育に芸術的要素であるArt,Designを加えたものです。AIが社会に浸透し、人々の生活を変える時代には、創造力・感性の重要性が高まり、Art(アート)の視点が必要不可欠になるという考えによるものです。つまりSTEAM教育とは、従来のSTEM教育にクリエイティブな側面が取り入れられたものです。
アメリカ・オバマ大統領の演説で注目されたSTEM教育
アメリカでは2011年に当時のオバマ大統領が、一般教書演説においてSTEM教育を優先課題に位置付け、世界的に注目を集めました。オバマ大統領はこの演説で、コンピュータ・サイエンスのスキルを身につけることは、個人の未来だけでなく国の未来にとっても重要であるとして、STEM教育によって得られる技術や知識を学ぶよう若者に呼びかけています。
具体的には「新しいゲームを買うだけでなく、自分で作ってみる。最新のアプリをダウンロードするだけでなく、創ってみる。スマートフォンで遊ぶだけでなく、プログラムしてみる。これらを実現するには、コンピュータ・サイエンスのスキルを学ぶ必要がある」と語っています。
STEM教育からSTEAM教育への変化
stem教育では、コンピュータ・サイエンスのスキルを学びます。しかし、技術や知識があっても新しいものは創造できません。自発的に何かを生み出せる力があってこそ、コンピュータ・サイエンスのスキルが活きてくるのです。今までにないものを発想し時代の流れをつかんで創造するには、デザイン性によってイメージを形にする力や、人として身につけた教養がベースとして必要になります。そういった観点から、従来のSTEM教育にA(アート)の要素が加わったSTEAM教育への注目が高まってきたのです。
海外でのSTEAM教育はどう進んでいる?
STEAM教育への注目度は世界的に高まっており、欧米諸国のみならずアジアの新興国でも具体的な施策が進んでいます。STEM教育提唱国であるアメリカは、重要な国家戦略として2013年には年間約30億ドルを費やしています。オーストラリアでは、2009年にはシドニーの高校生を対象としたiSTEMプログラムを開始しています。カナダでは、2016年頃より幼稚園から高校3年生までの義務教育のカリキュラムにプログラミングやロボティックスを導入しています。
シンガポールは1965年の独立以降一貫して理数系教育や技術的スキルの向上に力を入れており、2014年には中学校のすべての生徒たちにSTEMプログラムを提供するための組織であるSTEM Inc(ステムインク)を立ち上げました。中国では2018年から2020年にかけて小学校、中学校、高校で省ごとにプログラミング教育を必修化し、次世代AI人材を養成しています。このように、世界各地でSTEM教育への具体的な取り組みは数年前からすでに始まっており、それがSTEAM教育へと発展しつつあるのです。
日本のSTEAM教育は文部科学省が主導
日本では、2009年ごろから文部科学省でSTEM教育の導入が検討されてきました。先進的な理数教育や創造性、独創性を育てる指導を行う高等学校であるスーパーサイエンスハイスクールを設置したり、埼玉大学にSTEM教育研究センターを開設したりしてきましたが、他国に比べ遅れているのが現状です。そんな日本において、2020年の教育改革の一環として小学校からプログラミング教育が必修化されるのは大きな変化といえます。
小学校のプログラミング授業はどんなもの?
STEAM教育の一貫で、2020年度からの新学習指導要領において実施されるプログラミングですが、プログラミングというとプログラミング言語を学び、パソコンの黒い画面に向かって英数字をカタカタ打ち込むイメージですよね。しかし、そんなことは小学校低学年の子供にいきなりは無理ですし、小学校のプログラミング教育において言語の修得は目的とされていません。
小学校の授業で目標とされているのは、コンピュータの基本的な操作や「プログラミング的思考」の修得です。「国語」「算数」などに並んで「プログラミング」という教科が独立してできるのではなく、既存の科目の中にプログラミングの要素を取り入れるイメージです。
例えば「総合的な学習の時間」で活用する場合、身の回りにある問題や地域の課題など、まずは身近にある課題を発見します。その課題を解決するにはどうすればいいかを議論し、課題を解決するアプリケーションをデザインしていくのです。この過程において、問題を発見する力や、生活の中にあるコンピュータ・サイエンスへの興味関心、解決策をアウトプットする力などを身につけていこうというのが、小学校でのプログラミング教育でのねらいです。
日本のSTEAM教育の問題点
しかし、日本でSTEAM教育を普及させるには未解決の問題点があります。もっとも大きな問題の一つは、STEAM教育を理解し、プログラミング教育を行える人材が不足していることです。教育現場では、ITリテラシーが高く、大学で理系関係の教育を受けている、プログラミングに関する業務経験者である、といった人材は限られています。人材不足によって、学校間で指導内容にレベル格差が生じる可能性があります。
また、現在の教員は義務教育終了後の高校や専門学校以降、文系・理系に分断された教育課程を経て大学へ進学しており、文系に進んだことで理数系教科をほぼ履修しないまま社会に出ているケースもあります。これらの日本の現状は、STEAM教育を推進する上で早急に解決すべき課題でしょう。
STEAM教育の推進で日本の教育はどう変わる?
STEAM教育を推進するには、文理両方を学ぶ人材の育成が必要です。そのために、高校での文系・理系の枠組みを取り払い、STEAMやデザイン思考などの教育が受けられるように大学による教育プログラムの見直しがすすめられています。また、2024年の「大学入学共通テスト」から「情報」が出題されることが政府の方針として決まりました。情報モラルを含めた「情報活用能力」は、AI時代を生きていくには言語能力や計算能力などと同じく基本的で重要な能力と位置づけられています。
家庭でできるSTEAM教育を知りたい!
学校でSTEAM教育の一貫であるプログラミングが必修化されるにあたり、家庭でできることを探すパパママも多いですよね。民間のプログラミング教室などに通うのもいいですが、プログラミングの要素は遊びの中で取り入れることもできます。子供が遊びながら楽しくプログラミングに親しんでいける教材を探してみました。
フィッシャープライス プログラミングロボコード・A・ピラー
かわいいイモムシ型のロボット。直進、右折、左折などの表示もわかりやすく、イメージした動きになるようパーツを組み合わせることでプログラミングの感覚をつかみます。カラフルなライトアップと楽しいサウンドで、小さい子供も楽しめます。
アーテックブロック パーフェクトマスセット
タテ・ヨコ・ナナメ自由自在にイメージを形にできる新しい形のブロック。空間認識力や算数力がつきます。別売りのギアやモーターパーツを組み合わせてプログラミングすれば、組み立てた作品を動かすこともできます。
ピングーがスマホで動く! 楽しく学べるプログラミング
子供と一緒にプログラミング的思考が学べる知育絵本。指定のアプリをダウンロードしてスマホで読み込むとピングーが動き出し、ストーリーを楽しみながら自然とプログラミングの考え方を身に付けられます。
ラーニングリソーシズ Let’s Go Code! アクティビティセット
家族や友達と一緒に、全身を使ってプログラミング学習ができるゲーム。パソコンもスマホも使わず、身体を動かしながら楽しくプログラミングが学べます。思考力や発想力と同時に、運動感覚も鍛えられるので一石二鳥です。
エジソン プログラミングロボ
プログラム可能な小型の二輪ロボット。バーコードを読み取って基本的な動作プログラムを実行したり、パソコンやタブレットで専用プログラミングツールを使ってオリジナルの動作をプログラミングして動かしたりと、幅広く遊べます。
LEGOからもSTEAM教育に特化したLEGO SPIKEが誕生
創造性を掻き立てられるカラフルなブロックで長年世界中の子供たちに愛されているLEGO。同社教育部門であるレゴエデュケーション設立40年の節目の年となる2020年に、STEAM教育に特化したプログラミング教材「LEGOエデュケーション SPIKEプライム」が発売されました。
LEGO SPIKEの対象年齢は小学生から高校生まで幅広い
LEGO SPIKEは、小学校高学年から高校まで使える教材です。セットに含まれるのは全528パーツで、パーツの組み立ては簡単でも仕組みは複雑なものが組み立てられます。短時間で組み立てて、アイデアを出し合い考え試行錯誤することに時間を使えるので、授業時間が限られる教育現場において効率的・効果的に活用できます。
LEGO SPIKEのソフトウェアのベースはScratch3.0
LEGO SPIKEは世界中の多くの教育現場で使用されているScratch(スクラッチ)を使って動かします。Scratchは、子供向けに開発されたプログラミング言語で、難しいコードを書く必要はなく、子供が簡単に使いこなせるようになっています。これがベースとなっているLEGO SPIKEもドラッグアンドドロップ形式でプログラミングができるので、プログラミング経験の有無に関わらず小学生でも直感的に使えます。
ネット上のデータと連動してIoTのシステム作りを体験できる
自分が作ったLEGOのロボットが動くだけでも子供にとっては楽しく刺激的な体験です。しかしそれだけではなく、ネット上のデータと連動してロボットの動きを変えることも可能です。例えば、ネット上にある気象データと連動させ、天気や気温が変化するとロボットも動き方を変えるようにできるのです。家の家電が外出先からスマホで操作でき、自動運転の車が実用化されつつあるように、子供たちが生きていくこれからの時代はIoTがもっと身近になってきます。その原理を簡単に体験できるのも大きな魅力の一つです。
パパママは自分の思い込みを捨ててSTEAM教育を意識しよう
パパママの学生時代は、文系・理系に分かれて進学先を選び、与えられた課題をこなしていくことが評価される一方向的な教育でした。でも子供たちは、文系・理系や科目の枠を越えて横断的に学び、そもそもの課題を見つける力が必要な時代に生きていくのです。パパママが自分の経験にとらわれてしまうと、時代の流れにそぐわない選択をしてしまい、子供の可能性や選択肢を狭めてしまうことにもなりかねません。「こうあるべき」という固定概念を捨て、子供にはたくさんのことを経験させてあげましょう。子供が自ら課題を発見し解決する力を身につけていくには、パパママ自身がSTEAM教育を意識し、時代に求められるスキルが何であるか理解する必要があるのです。子供の成長を応援しながら、パパママも一緒に成長していきましょうね。