ハンドリガードとは? いつからいつまで? 赤ちゃんがしない場合は?
ハンドリガードとは?
ハンドリガードとは齢が低い赤ちゃん特有のしぐさです。握りしめた自分の手を不思議そうにじっと見つめたり、揺らしてみたり、おぼつかない動きながらも一生懸命口元に運んで舐めてみたり。真剣な赤ちゃんの表情やぎこちない動きは、とても愛らしいものです。
自分の手を自由にあやつれる大人からすれば当たり前すぎて気づけませんが、赤ちゃんにとっては自分の手というものが存在していることも、それが動くことも、見えることも、すべてが発見の連続です。その連続が脳の活性化を促し、ハンドリガードという行動にあらわれているのです。つまり、赤ちゃんの成長の過程でハンドリガードが見られることは、赤ちゃんが順調に発育していることの証ともいえるのです。
公益財団法人 母子衛生研究会 よくわかる用語辞典【子育て編】「ハンドリガード」
ハンドリガードをする時期は?
赤ちゃんがハンドリガードをするのは、赤ちゃんの脳や身体能力の発達段階が変化したことに関係しています。生後3〜4ヶ月頃に多く見られますが、赤ちゃんの発達スピードには個人差があるため、もっと早くからはじまる子もいれば、生後4ヶ月以降にはじめてする子もいますし、ほとんどしない子もいます。また、左右どちらか片方の手だけの場合もあれば、両手を掲げて指先を合わせることもありますし、手ではなく足をじっと見つめる「フットリガード」派の赤ちゃんもいます。いろいろなパターンがあり、パパママが見ていない時にこっそりやっている場合もあります。どうしても見たいパパママは、生後2ヶ月ごろから突然はじまるかもしれないことを意識して見守ってみましょう。
ハンドリガードが終わる時期も、赤ちゃんによってさまざまです。多くの赤ちゃんはハンドリガードが始まってから3ヶ月程度で終わりますが、個人差があるため、見られなくなる前に赤ちゃんのハンドリガードを満喫しておきましょう。
ハンドリガードの意味
ハンドリガードは一見、何の意味があるのかわからないように思いますが、お腹から出てきた赤ちゃんにとっては大きな成長の一歩です。赤ちゃんが急にビクッとするモロー反射など、原始的な反射や泣くか飲むか寝るかをするだけだった新生児期からすれば、外の世界を認識し、自分の身体を認識し、自分の意志をもつというのは、赤ちゃんの身体や心の中でとんでもない大革命が起こっているのです。
ハンドリガードの意味:見る力の発達
ハンドリガードをする意味として、ものを見る力がついてきたことが考えられます。生後間もない赤ちゃんが認識できる色は黒、白、グレーだけです。全体的にぼやっとした世界で、明暗の境目を追うことで形を認識しています。焦点距離は16〜24cm程度なので、かなり至近距離になってはじめてものの形がわかるぐらいです。
生後1ヶ月頃には、じっと見つめる「注視」ができるようになります。そこから徐々に見る力が発達していき、生後2〜3ヶ月頃には視力は0.01〜0.02ほどになり、あらゆる色を認識でき、両目で物を立体的にとらえられるようになってきます。その頃になると、見たいものに視点を合わせ、動くものの方へ視線を動かす「追視」ができるようになります。ハンドリガードをするということは、自分の手を見つけて、動く手を目で追うことができるようになった証なのです。
ハンドリガードの意味:動かす力の発達
ハンドリガードをするほかの意味として、自分の身体を自分の意志で動かす力がついてきたことが考えられます。生後間もない赤ちゃんは、原始反射といわれる動きをします。原始反射とは、「脳幹」という脳の下に位置する部位がつかさどる不随意運動で、本能的に口元に触れたものを何でも吸う「吸啜(きゅうてつ)反射」や、手や足に触れたものをぎゅっと握ろうとする「把握反射(はあくはんしゃ)」などがこれにあたります。
これらの原始反射が繰り返されることで中枢神経が発達するという良作用がおこり、知的能力や筋力が発達して、無意識でおこなわれていた不随意運動から意識的におこなわれる随意運動ができるようになります。その時期はまさにハンドリガードができるようになることと関係していて、自分が見たいものを目で追ったり、自分の意志で手を動かしたり、口元に運んだりできるようになるのです。
ハンドリガードの意味:異なる感覚の統合
赤ちゃんは、自分の手を見つめ舐めることで、「舐める」という感覚を舌や唇から感じとります。それと同時に、赤ちゃんの手は「舐められる」という感覚を感じ取ります。「見ること」「動かすこと」「舐めること」「舐められること」の4つの機能を一緒に働かせ、脳の異なる場所で感じる刺激を同時に受けることで、脳内で新しいコネクションができあがります。これを繰り返していくことで脳の機能が発達し、自分の身体を自由にコントロールできるようになっていくのです。
ハンドリガードをしない赤ちゃん
自分の子どもが「一般的」な目安の月齢になってもハンドリガードをしないと、パパママとしては不安になることもありますよね。でも、ハンドリガードはすべての赤ちゃんがするものではありません。赤ちゃんの成長のスピードも順番も、赤ちゃんの数だけ違うのです。
ハンドリガードをするかしないかは赤ちゃんの個性
赤ちゃんの発達には、個人差があります。お座りができるようになったら、ハイハイはせずにつかまり立ちしていきなり歩き出す子もいますし、1歳になるころでも夜にまとまって寝ずに2〜3時間ごとに起きる子もいます。これらはすべて、赤ちゃんひとりひとりの個性なので、育児書通りの順番やスピードで進まないからといって心配しすぎる必要はありません。赤ちゃんが順調に成長していることの証拠であるハンドリガードですが、あくまでも環境を含めた赤ちゃんの個性によってその時期も頻度も変わります。
ハンドリガードをしなくて心配な場合はたくさんの意見を参考に
心配しなくていいと言われても、パパママとしては気になってしまうものです。「身体のどこかに問題があるの?」「もしかして発達障害かも…」などの気持ちを無理に抑えてひとりで抱え込むのは、負担になりますよね。どうしても心配な場合は、思い切って専門家に相談してみるのもひとつです。その場合は、できるだけ異なる角度からの意見を集めるように意識してください。
ハンドリガードに限った話ではなく、子どもの成長に関するすべてのことにいえますが、発達支援のプロと小児科医と保育士とでは、それぞれ得意分野もアプローチの仕方も違います。自治体の相談窓口を利用する場合でも、できれば一人の相談員ではなく複数の意見を聞いてみましょう。たくさんの意見を聞くと余計に迷ってしまうこともありますが、その迷いが自分の思考の整理につながることもあります。立ち止まって悩むよりは、誰かに相談することで我が子の成長段階をあたたかく見守る心の余裕を手に入れましょう。
まとめ ハンドリガードはシャッターチャンス!
ハンドリガードは、短い赤ちゃんの時期の中でもさらに1~2ヶ月にしか見られない貴重なしぐさです。ぜひ写真や動画を撮っておきましょう。あとから見返した時に、溜まっていた育児疲れが吹き飛ぶぐらい癒されますよ。もし自分の赤ちゃんがハンドリガードをしなくても、心配しないでください。赤ちゃんは成長するにつれて、他にもかわいいしぐさをたくさんしてくれます。癒しと喜びをくれる赤ちゃんのかわいい様子は、その時期ならではの大切な時間です。赤ちゃんそれぞれの成長のペースをパパママのあたたかい目で見守りながら、日々の育児を楽しんでくださいね。