日本で代理出産はできる? 赤ちゃんの戸籍は? 日本の生殖補助医療の現状を解説

代理出産(代理母出産)とは?

代理出産(代理母出産)とは?
日本では実に7~10組に1組のカップルが不妊症の治療をしているといいます。
不妊症の人が増えた理由には晩婚化というだけではなく、不妊に繋がる病気にかかる人が増えていること、そして不規則な生活習慣やストレスが体に影響を与えていることが挙げられています。
結婚して子供がいる温かい家庭を望む夫婦にとって、「自分たちの子供を得ることができない」という現実はとてもつらいものでしょう。
不妊治療を続けてもなかなか子供に恵まれない夫婦や、病気のために妊娠・出産が望めないけれどどうしても子供が欲しい夫婦が臨む1つの方法として「代理出産」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
代理出産とは、女性が何らかの理由で自ら妊娠・出産ができない場合に第三者の女性に妊娠・出産をしてもらい、生まれた子供を自分の子供として引き取り、育てることをいいます。

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代理出産|日本人の事例

日本人の代理出産で有名なのは女優の向井亜紀さん、アナウンサーの丸岡いずみさんの事例です。
日本人が代理出産を実施した事例は少なく、生まれた子供との親子関係についての議論も含め、大変話題になりました。
向井亜紀さんは子宮頸がんの治療で子宮を全摘出したため妊娠・出産が望めず、丸岡いずみさんは不妊治療と2度の流産経験から、それぞれ代理出産を海外で依頼するという方法を選び、子供を得ています。
また代理出産が法律で禁じられているフランスでは、妻が子宮と膣の一部もしくは全部が欠損して生まれる先天性の病気「ロキタンスキー症候群」のため、アメリカで代理出産を行ったという事例もあります。

代理出産|サロゲートマザー

代理出産には2つの方法があります。
妻が病気で卵巣と子宮を摘出した等で、妻の卵子も子宮も使用できず妊娠できない場合に、夫の精子を第三者の女性の子宮に注入して妊娠・出産をしてもらうという方法です。
これを行う代理母をサロゲートマザーと言います。

  • 夫の精子+第三者の卵子 → 第三者の子宮(サロゲートマザー)

この場合、卵子は妻のものではなく、実際に妊娠・出産を行うサロゲートマザーのものになります。

代理出産|ホストマザー

もう一つは、夫婦の精子と卵子は使用できても、妻が病気等で子宮を摘出していて妊娠ができない場合に、夫婦の精子と卵子を体外受精させてできた胚を第三者の女性の子宮に注入し、妊娠・出産をしてもらうという方法です。
これを行う代理母をホストマザーと言います。

  • 夫の精子+妻の卵子 → 第三者の子宮(ホストマザー)

日本産科婦人科学会の見解

日本産科婦人科学会の見解
代理出産や卵子提供などの生殖補助医療について、日本では2019年現在においても法整備がされておらず、関連団体がガイドラインを定めているだけです。
したがって、日本で卵子提供や代理出産を行っても罪に問われることはありません。しかし日本産科婦人科学会は、「代理懐胎(代理出産)は認められない」との見解を示しており、会員に代理出産に関わることを禁止しています。
その主な理由として、「生まれてくる子の福祉を最優先すべきである」こと、「代理懐胎(代理出産)は身体的危険性・精神的負担を伴う」こと、代理出産は「家族関係を複雑化する」こと、「代理懐胎(代理出産)契約は倫理的に社会全体が許容しているとは認められない」ことが挙げられています。

代理懐胎に関する見解(日本産婦人科学会)

代理出産で生まれた赤ちゃんの母親は誰になる?

代理出産で生まれた赤ちゃんの母親は誰になる?
日本産科婦人科学会が代理出産を認められないとしているのは、代理出産によって親子関係が複雑化し、生まれてきた子供の福祉に反することを危惧しているためです。
日本では1962年の最高裁判決において、「母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知を待たず、分娩の事実により当然発生する」と判決が出ています。
つまり日本では卵子の持ち主ではなく、「出産した人が母」ということになっているのです。
日本産科婦人科学会は、代理出産による「子供の母親は誰なのか」という問題は家族関係を複雑にし、子供の自己受容やアイデンティティーの確立に影響を及ぼす危険性があることを指摘しています。

特別養子縁組制度

日本の現行法において代理出産を依頼した夫婦がその子供を迎えるためには、出産を担った代理母が出生届を出して子供の戸籍上の母親になり、その後依頼者夫婦と子供が「特別養子縁組制度」を利用して新たに親子関係を結ぶ必要があります。
「特別養子縁組」とは、実の父母が子供の面倒が見れない、またはその監護が不適当である場合に、子供の福祉の増進を図るために実親との親子関係を解消し、養親と新たに親子関係を結ぶ制度です。
子供の戸籍には実親の名前は記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」など実の子供と同じように記載されます。縁組成立のためには養親が養子となる子供を6ヶ月以上監護し、その監護状況を考慮して家庭裁判所が決定することになります。

特別養子縁組はどんな制度? 費用や手続き方法は? 当事者の声も紹介
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世の中には、子供がいる夫婦・いない夫婦それぞれの家族の形があります。その中で「どうしても子供を持ちたい」「不妊治療がどうしても成功しない」といった事情で特別養子縁組を考える人もいるでしょう。制度の内容を詳しく説明します。

親子関係特例法

これまでの日本の民法は卵子提供や代理出産など夫婦以外の第三者が関わる出産を想定しておらず、こうした場合の親子関係について明確に定めてはいませんでした。
しかし国内外ともに生殖補助医療を介した出産の実例がある中で、日本での法整備を求める声は確実に増えています。
そうした声に応える形で2019年6月に自民・公明両党が「第三者から卵子の提供を受けた場合、出産した女性を実母とする」ことを柱とした親子関係特例法案を策定し、国会への提出を目指していましたが、野党の一部から難色が示されたため断念しました。
自公両党は改めて成立を目指す方向ではありますが、2020年1月現在、成立には至っていません

日本人の海外代理出産

日本人の海外代理出産
前述したとおり、現在日本国内で代理出産を規制する法律はありません。
過去には日本国内でも一部の医療機関では代理出産などの生殖補助医療の実施を公言し、親族間による代理出産が行われていましたが、2019年現在では国内で代理出産を扱う産婦人科はありません。
そのためどうしても子供が欲しくて代理出産を希望する夫婦は、代理出産が可能な外国で代理出産を依頼していますが、仲介料があまりにも高額なため一般的ではないのが現状です。
2018年には、タイで日本人男性が代理出産で17人の子供をもうけていたというニュースも話題になりました。タイではこの問題などを機に「代理出産できるのはタイ人夫婦か、一方がタイ人で3年以上婚姻関係にある夫婦に限る」など代理出産を規制する法律が成立しました。
このように代理出産をめぐるニュースを受け、代理出産を法的に規制する国は増えていくと予想されます。

代理出産の問題点

代理出産の問題点
代理出産が日本国内で公に実施されないのは、代理出産が行われている国で少なからず社会を混乱させるような事例があるためかもしれません。
代理出産が可能な国では、代理母が産んだ子を依頼した夫婦に引き渡さない、逆に障害があるなどの理由で依頼した夫婦が子供を代理人から引き取らないといったトラブルが発生しています。
また無事に代理出産を終えた代理母には多額の報酬が支払われるため、生活に困窮した人や借金を抱えた人が代理母になるケースが多々あります。
実際に日本でも、2016年に中国から日本の暴力団を通して、日本に住む貧困層の中国人女性に代理出産を依頼するという事例が発生しました。
依頼人の中には高齢や不妊などで子供を産めない人の他に、日本での定住を目的とした人もいたとのことです。
このように代理出産は、貧困層の女性が報酬のために「産む機械」のように扱われるという倫理的な問題も抱えています。

まとめ

代理出産まとめ
不妊治療をどれだけ続けても、どうしても子供を授かれない場合もあります。先の見えない治療は不安になりますし、本当につらいですよね。
そんな中で代理出産を子供を授かる1つの手だてとして希望する人がいるのも事実です。
ただし妊娠・出産を必ず無事に終えられる保障はどこにもなく、代理母となった妊婦には命の危険も発生します。そして生まれてきた子供が必ず健康であるという保障もありません。
近年話題になることも増えた代理出産などの生殖補助医療ですが、それに対する日本の法整備が遅れているのも問題を複雑化させている理由の一つと言えるでしょう。
2019年現在「代理出産の実施は認められない」という見解を示している日本産科婦人科学会ですが、将来的に親子関係を規定する法整備がされ、社会的に合意が得られる場合には代理出産の許容度が高まる可能性があるとしています。
複雑な問題ですが、子供を望む夫婦、妊娠・出産に関わる第三者、そして生まれてくる子供の誰もが守られ、それぞれが幸せに暮らしていける社会を目指すことで、新たな可能性が開けるのかもしれません。

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はいチーズ!クリップ編集部

はいチーズ!クリップ編集部員は子育て中のパパママばかり。子育て当事者として、不安なこと、知りたいことを当事者目線で記事にします。Instagram・LINEなどでも情報発信中ですので、ぜひフォローください!