特別養子縁組はどんな制度? 費用や手続き方法は? 当事者の声も紹介

特別養子縁組制度とは

日本では「子供は授かりもの」と言われることがあります。結婚して家庭を持つと耳にすることが多くなるかもしれませんね。口にした人は悪気がないかもしれませんが、子供を望んでいるのになかなか授かれない人にとってはつらい言葉になりうるでしょう。
しかし子供を授かる方法は自然妊娠だけとは限りません。最高裁判所「司法統計」によると「特別養子縁組制度」によって養子を迎え入れた家族は2016年は495件にのぼりました。
この記事では、「特別養子縁組制度」の仕組みや養子となった子供の戸籍の扱いについて、分かりやすく紹介していきます。

どんな子が特別養子縁組の対象なの?

どんな子が特別養子縁組の対象なの?
子供を授かった母親が必ずしも妊娠を望んでいたとは限りません。
10代の女性や未婚の女性の予期せぬ妊娠、親が精神障害や知的障害を抱えているケース、辛いことですが性被害を受けて妊娠してしまったケースなど、母親が子供を手元で育てられない事情はさまざまです
「特別養子縁組制度」は、実の親と暮らすことができなくなった子供を健全に育てるために作られた制度です。こうした社会的養護が必要な要保護児は4万5千人いて、そのうち9割が乳児院などの施設で過ごしています。しかし健全な育成のためには、本来は少人数または家庭と同じ環境での養育が理想とされています。
縁組を検討している人は、特別養子縁組はこのような「環境に恵まれない子供たち」が幸せに育っていくために作られた制度であり、「子供が欲しい夫婦」のために作られたものではないことを理解しておく必要があるでしょう。

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「特別養子縁組」の成立要件

「特別養子縁組」の成立要件
「特別養子縁組」が成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 実親の同意
    養子となる子供の実の両親の同意が必要です。
    ただし実親がその意思を表示できない場合、または実親による虐待など子供の利益を害することがある場合には、実親の同意が不要になることがあります。
  2. 養親の年齢
    養親は配偶者がいる人(夫婦)であり、25歳以上でなければなりません。
    ただし養親となる夫婦のどちらかが25歳以上である場合、もう一方は20歳以上であれば養親になることができます。
  3. 養子の年齢
    2020年1月現在、養子になる子供の年齢は原則6歳未満である必要があります(6歳に達する前から養親候補者が引き続き養育していた場合には、例外として8歳未満まで可)。
    ※2020年4月1日より施行される民法の改正法では、養子になる子供の年齢が原則15歳未満にまで引き上げられます。
  4. 半年間の監護
    縁組を成立させるためには、養親となる人が養子となる子供を6ヶ月以上同居して養育する必要があります。
    養親となる人は養子となる子供と一定期間一緒に暮らし、家庭裁判所がその状況を見て縁組の成立を判断します。

「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の違い

「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の違い
日本には「特別養子縁組」以外にも「普通養子縁組」という養子縁組制度があります。二つの制度がどう違うのか、詳しく解説していきましょう。

普通養子縁組 特別養子縁組
要件 養親:成年に達した者
養子:尊属または養親より年長でない者
養親:原則25歳以上(夫婦の一方が25歳以上であれば、もう一方は20歳以上で可)
養子:原則6歳未満(2020年4月1日以降は原則15歳未満)
縁組の成立 養親と養子の同意により成立 養親の請求に対し、家庭裁判所の決定により成立
実親との親族関係 実親との親族関係は終了しない 実親との親族関係は終了する
監護期間 特段の設定はない 6ヶ月以上の監護期間を考慮して縁組
離縁 原則、養親及び養子の同意により離縁 養子の利益のため特に必要があるときに養子、実意や、検察官の請求により離縁
戸籍の表記 実親の名前が記載され、養子の続柄は「養子(養女)」と記載 実親の名前が記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」と記載

特別養子縁組の上限年齢が15歳未満に改正

特別養子縁組の上限年齢が15歳未満に改正
民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)が2019年6月7日に改正法成立し、2020年4月1日より施行されることになりました。これまで原則6歳未満とされていた養子となる子供の上限年齢が原則15歳未満にまで引き上げられます。
この改正により特別養子縁組制度の利用が促進され、より多くの児童養護施設に入所している子供に家庭的な養育環境を与えられることが期待されます。

特別養子縁組を相談できる団体は?

特別養子縁組を相談できる団体は?
特別養子縁組は児童相談所および民間の養子縁組あっせん業者が仲介しています。
児童相談所に相談する場合には住んでいる地域の児童相談所に依頼することになりますが、慢性的な人手不足のため、地域によっては児童相談所で特別養子縁組のあっせん対応ができない場合もあります。
民間のあっせん事業者は新規参入も多く、事業者によって支払う費用に大きな差があります。厚生労働省に登録されている事業者をチェックし、より安心で適切な事業者を選ぶようにしたいですね。

厚生労働省 養子縁組あっせん事業者一覧(2019年10月1日現在)

特別養子縁組の流れ(児童相談所)

特別養子縁組の流れ(児童相談所)
児童相談所を通して特別養子縁組を結ぶ場合の手続きは、下記のような流れになります。

  1. 児童相談所に相談し、研修・調査を経て「養子縁組里親」に登録されます。
  2. 児童相談所から子供を紹介されたら、3~4ヶ月程度の交流を経て、児童相談所が養育の委託の可否を決定します。
  3. 委託から6ヶ月程度養育を行います。
  4. 家庭裁判所で「特別養子縁組成立」の申し立てを行います。
  5. 家庭裁判所が実親からの聴き取りや養親の家庭環境などの調査を行い、特別養子縁組の審判を確定します。

特別養子縁組の流れ(民間あっせん事業者)

特別養子縁組の流れ(民間あっせん事業者)
民間あっせん事業者を通して特別養子縁組を結ぶ場合の手続きについて、東京都の認定NPO法人フローレンスを一例としてご紹介します。

  1. 事業者が開催する特別養子縁組に関する2段階の研修を夫婦で受講し、研修後に夫婦で審査申し込みをします。
  2. 提出した審査書類を元に、電話ヒアリング・個別面談・ホームヒアリングなどの審査を受けます。
  3. 医療機関や児童保育施設での育児研修に参加します。
  4. 全ての審査を通過したら育ての親として登録し、受託に向けた準備を始めます。
  5. 事業者が済んでいる地域や実親・養親の背景を総合的に判断し、マッチングを行い、子供を委託します。
  6. 家庭裁判所に審判を申し立てます。裁判所や児童相談所による聞き取り調査や家庭訪問があります。裁判期間中は事業者に月に1回の養育報告を行います。
  7. 家庭裁判所の審判が確定し、特別養子縁組成立となります。審判確定後は1年に1回、事業所に養育報告を行います。事業所によっては、育ての親同士の交流会があります。

ご紹介した手続きの流れはあくまで一例です。
事業者によって費用や事前講習・アフターフォローの内容などが異なりますので、詳しくは自身が利用を考えている事業者に確認してみてくださいね。

特別養子縁組にかかる費用は?

基本的に、特別養子縁組を結ぶために民間のあっせん事業者を利用する場合には費用がかかります。
厚生労働省によると2013年に事業者が養親希望者から受領した金額は、最低¥27,000~最高¥2,876,000と記録されています。事業者によってフォローの内容に違いがあるとはいえ、かかる費用には大きく幅があります。
営利を目的として養子縁組のあっせんを行う行為は児童福祉法で禁止されていますが、事業の実施にあたって交通費や通信費など必要な実費またはそれ以下の金額を、利用者から徴収することは差し支えないとされています。どこまでを実費に含めるかは各事業者によって異なるため、利用者が負担する費用に差が出てくるのです。

養子と養親の間でトラブルはあるの?

養子と養親の間でトラブルはあるの?
特別養子縁組によって生まれた家族関係で、トラブルの発端になることが多いのは「血の繋がり」という問題です。
多くの養親は養子に「生みの親が別にいる」という事実を包み隠さず伝えています。これを「真実告知」と呼び、最近ではなるべく小さいうちに行うことが推奨されています。特別養子縁組特別養子縁組で生まれた家族は特殊ではなく、普通の家族と同じなのだと子供に理解してもらいたいという思いからです。
しかしその結果、子供が「自分はこの人たちの本当の子供ではない」と自分のルーツについて不安を感じることがあります。また学校現場等で「養子縁組という特殊な家庭環境だからトラブルを起こした」と周囲の理解が得られないこともあるのも事実です。
改正法によりこれから更に利用の拡大が期待される特別養子縁組制度ですが、社会の理解を求めるとともに、養子縁組によって生まれた家族同士がそれぞれの経験をシェアできる機会が増えることも求められています。

実際の養子縁組経験者の声

実際に縁組を結び、家族となった人は特別養子縁組についてどのように感じているのでしょうか。
養子縁組経験者の声をまとめてみました。特別養子縁組について検討されている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
 

養親の声

  • 本当の親になりきれずに悩み、泣いたこともあったが、子供が成長するにつれて愛しさが増し、子供も心を開いてくれて自信に繋がった。
  • 子供の反抗期・思春期の時期はぶつかり合うことも多く、「本当の親じゃないくせに」と言われたがなんとか苦難を乗り越えることができた。
  • 学校の先生を含めて、世間の偏見を感じた。
  • 児童相談所は養子縁組をすると「一般家庭になったから」という理由で相談に乗ってくれなくなる。養子縁組をした後も、本気で相談に乗ってくれる体制が必要だと感じている。
  • 当事者団体でいろいろな悩みを相談でき、子供も自分だけが特別でないことを知って安心感が生まれたようである。

日本財団 養親向け小冊子「養子縁組をした762人の声」
 

養子の声

  • 生みの母にも、育ての親・家族にも感謝している。物心ついた頃から「自分たちは育ての親。でもあなたのことを愛している」と伝えられ、行動で示してきてくれるおかげで私は愛されていると自覚しているし、とても幸せ。
  • 養子縁組である事実は、ある程度成長してからではなく、なるべく小さい頃に包み隠さず知らされていた方が抵抗がなくなると思う。
  • 時には激しい口論をすることもあったが、育ての父母からたくさんの愛を感じて育った。養子になれて良かったと思っている。
  • 特別養子縁組は普及してほしい枠組みだと思う。ただ、生みの親に会いやすくしてほしいと感じている。
  • 養子になった子供同士が互いの悩みを相談したり、シェアできる場所がもっと多くあればいいのにと思う。

まとめ

特別養子縁組まとめ
現代は多様な家族の形があります。子供がいる夫婦もいない夫婦も、血のつながりがある親子もない親子も、それぞれが幸せに暮らしていけることが一番です。
どうしても子供が育てたいという人や、特別養子縁組に興味があり話だけでも聞いてみたいという人は、児童相談所や民間あっせん事業者に相談してみてはいかがでしょうか。これからの人生をより充実したものに変えてくれる出会いが待っているかもしれません。

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