正月飾りの種類と飾る場所。飾って片付けるのはいつ? 正月飾りの基本
正月飾りとは
旧年を振り返って気持ちを新たにしたり、親しい人とゆっくりした時間を過ごしたりと、日本人にとってはやはり特別な年末年始。お正月には、歳神(としがみ)様という穀物の神様がそれぞれの家におりてきて、家族の1年を守ってくれるとされています。その歳神様をお迎えする準備としてしめ飾りや門松といった正月飾りをしつらえるのです。正月飾りには他にも、家族の幸せを願うなど、いろいろな縁起物があります。
正月飾りの種類と飾る場所
正月飾りのひとつひとつに、歳神様をお迎えする、あるいは縁起をかつぐといった意味があります。主な種類と飾り方をあらためて確認してみましょう。集合住宅にお住まいで、飾りたい場所が門前・玄関など共用部分にあたる場合は、ルールの確認と周囲への配慮もお忘れなく。
門松
降りてくる歳神様の目印となり、神様が宿る依代(よりしろ)になると言われる門松。家の門口に、正式には雄松を左・雌松を右として対になるように立てます。門松というと竹の存在感が目立ちますが、実は名前の通り主役は「松」です。松飾りを門の左右にくくって飾るだけでも代用となります。
しめ縄
しめ縄は、神社に常にあることからもわかるように、その場所が神聖な場所であることを示すものです。門の前や玄関に飾ります。
しめ飾り
しめ縄に裏白(うらじろ)・御幣(ごへい)・ゆずり葉などの縁起物をセットしたのがしめ飾りです。吸盤やフックでドアに取り付けられる作りのコンパクトなものも多く、正月飾りの中でも取り入れやすいものかもしれません。
熊手
幸運をかき集める手の形に、商売に関する縁起物が賑やかに飾り付けられた縁起熊手は、年末、酉の市の風物詩ですね。飾りを上にして、神棚や高い位置に飾りましょう。
干支
新年の干支の形をした置物、干支飾りは福を運び1年間家を守ってくれると言われます。大きさもデザインもさまざまなものがありますので、インテリアにあわせてコーディネートできますね。
破魔弓・破魔矢
魔除けや後期を射止めるといった意を込め、男の子の初正月に弓矢(破魔弓・破魔矢)を贈られる習わしは江戸時代前期くらいにはじまったといわれます。その風習から、正月の縁起物となったのが破魔矢です。破魔矢は御札や御守と同じく初詣の授与品としてもお馴染みですね。神棚や床の間といったスペースがない場合は、大人の目線よりも上の位置に飾るのが望ましいとされます。
羽子板
女の子にも初正月を祝う縁起物として、美しく成長することを願い羽子板が贈られます。破魔矢と同じく素材に無患子(むくろじ)の実が使われており、「子が患わ無い」、つまり無病息災のお守りとなります。飾り方は破魔矢と同様に考えるとよいでしょう。
子供への正月飾りの由来の伝え方
小さい子供が「これは何? 」「どうして飾るの? 」と正月飾りに興味をもってくれたら、意味や由来をわかりやすく伝えてあげたいですね。例えばこのようにお話してみるのはいかがでしょう。
- お正月は新しい1年が始まるということだよね。お正月には、歳神様という1年間おうちや家族を守ってくれる神様が、おうちにやってくるといわれているんだ。歳神様ようこそとお迎えするために、お正月飾りを飾るんだよ。
- 門松は歳神様が迷わずおうちに来られるための目印。神様が来るきれいなところですよという入口の合図がしめ縄。鏡餅も、神様へのお供え物なんだよ。
- 12種類の動物が1年ずつかわりばんこに私たちを守ってくれるのを「干支」といって、来年はねずみがそのお当番なんだ。だからねずみのお人形を飾って、おうちと家族を守ってくれますように、いいことがありますようにとお願いしようね。他にも、1年間元気でいいことがたくさんありますように、悪いことがおこりませんように、というお願いをこめて飾るものがいろいろあるよ。
下記では紙芝居仕立てで分かりやすく解説していますので、参考にご覧ください。
正月飾りに関する素朴な疑問
毎年当たり前のように目にする正月飾りですが、 あらためて考えてみると飾り方や片付け方など確信がもてない部分もあるのではないでしょうか。以下に一般的なしきたりをあげてみましたが、地域差もありますので、お住まいの地域の風習を確認してみてくださいね。
正月飾りはいつ飾ったらいいの?
正月飾りは「松の内」が始まる12月13日以降に飾る決まりですが、現代では、クリスマスのディスプレイが終わった12月26日頃から飾られることが多いでしょう。29日は「二重苦」につながるとして避ける傾向が強く、28日・30日を「末広がり」「キリがよい」として好む考えもあります。通例よくないとされる大晦日の「一夜飾り」を避けることを考慮すると、余裕をもってととのえておくにこしたことはないですね。12月30日については旧暦の大晦日であることからやはり一夜飾りと見なす見方もありますので、望ましいのは28日までに飾ることかもしれません。
正月飾りを飾る期間はいつからいつまで?
お正月を表す「松の内」という言葉は、文字通り、松飾り(=門松)を立てておく期間という意味です。ですので、前項で述べた通り正月飾りは「松の内」の間に飾っておくものです。松の内の終わりの日付は地方によって違いがありますが、大まかにいうと関東で1月7日、関西で1月15日とされることが多いようです。地域により1月3日、5日、6日、8日など異なりますので、地域の習わしに詳しい方に聞いてみるとよいでしょう。
正月飾りを片付ける時期はいつ?
正月飾りのうち歳神様をお迎えするための門松・しめ飾りは、松の内が終わり歳神様が帰る「松納め」のタイミングで外します。その年の厄除けや縁起物である熊手・干支飾り・破魔矢(初詣で授かるもの)は1年を通じて飾っておき、翌年の正月準備の際に新たなものと入れ替えます。初正月祝いの破魔弓・羽子板については、松納めで片付けてもよいのですが、節句の飾りとしても使えますし、厄除けとして子供が大きくなるまで常に飾っておく家庭もあります。
正月飾りは使いまわしても良い?
ごく限られた時期だけ使うものなのに、毎年新調するのは少々もったいないような気もする正月飾り。しかし、習わしからいうと使い回しはNGです。毎年新たな気持ちで歳神様をお迎えするものですから、清浄なものでないと失礼にあたるという考えです。とはいえ、現代では伝統行事のとらえ方もさまざまですし、エコ意識の高まりなど状況も変化するものです。お正月飾りに関しても、神事というより季節のしつらえという面を重視するのであれば、ご家庭の判断で再利用するのもあながち否定することではないのかもしれません。
喪中の時はどうしたら良い?
喪が明けるまでは、新年の挨拶にも年明けを祝う言葉は使わないように、お祝い事・華やかな事は慎みますよね。お正月飾りに関しても控えるのが一般的です。ただ、お正月飾りは神道の風習であり、仏式の喪中との兼ね合いに関しては、神社への初詣と同様に考えが分かれるところです。法事の際などにお坊様に聞いてみるのもよいでしょう。
お正月飾りの正しい処分の仕方
神様をお招きするためのものであるお正月飾りは、役目を終えてからも失礼のないように扱いたいですね。取り外したお正月飾りの処分方法を調べてみました。
お焚き上げ
古い御守や御札を焚き上げて清める行事を、左義長(さぎちょう)・どんど焼きなどの名称でご存じかもしれません。神社やお寺からの授与品は、神社で授かったものは神社に、お寺で授かったものはお寺にお返しするのが基本です。奉納場所、授与品以外の正月飾りもあわせて納めてよいかなど、職員の方に確認してみてください。その他、町内会などの単位でお焚き上げを受け付けている地域もあります。
自宅で処分する方法
お焚き上げに持って行けない場合などは、ごみ回収に出すことになると思います。材質や出せる大きさなど、お住まいの地域の分別ルールに注意しましょう。参考までに、神社本庁のWebサイトでは、塩を振り清めて紙に包んで出すなど、廃棄に出す場合でも丁重に扱うことを勧めています。
まとめ
慌ただしい日々の中で、伝統行事というのは、季節を感じ、歴史やこめられた願いに思いを馳せるよい機会なのかもしれません。今年は大掃除を早めに終わらせ、思いをこめてお正月飾りをととのえる……そんなゆったりした年末を計画してみてはいかがでしょうか。